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鷲
森を駆ける。
息が切れる。
足がもつれる。
それでも止まれない。
背後から、確実に追ってくる気配。
「……はぁ……はぁ……」
限界だった。
その時——
影が、落ちた。
見上げる。
巨大な鷲。
金の瞳。
見覚えがあった。
「……あなた……」
幼い頃、王宮で見た。
父の傍にいつもいた、あの鷲。
『遅いな』
頭の中に、直接声が響く。
「……しゃべ……?」
『乗れ』
有無を言わせぬ口調だった。
だが迷っている時間はない。
セリスはその背に飛び乗った。
次の瞬間。
風が弾ける。
森が、一瞬で遠ざかる。
「……すご……」
『当然だ』
どこか呆れたような声。
その時。
『……興味深い』
別の声。
ノイエ・ジールだ。
『あなたは何ですか』
鷲が、わずかに笑った気がした。
『お前こそな』
空の上で、二つの”異質”が向き合う。
『その気配……懐かしい』
沈黙。
だが、ノイエ・ジールは淡々と返す。
『該当データは存在しません』
『……そうか』
短く、意味深に。
『なら、いずれ思い出す』
——その言葉に。
なぜかセリスの胸が、ざわついた。




