呪い
「……離れて」
セリスは剣を地面に落とそうとした。
だが——
落ちない。
手が、開かない。
まるで皮膚と同化したかのように、柄が掌に張り付いている。
「……嘘……」
力を込める。
だが、びくともしない。
『当然です』
声は、どこまでも落ち着いていた。
『あなたはすでに接続されています』
「……接続……?」
『はい。契約とも表現可能です』
背筋が冷える。
「……解除して」
『不可能です』
即答だった。
「なっ……!」
『この状態は不可逆です。あなたが死亡するまで継続します』
世界が、歪む。
「……そんな……」
『ご安心ください』
まったく安心できない声だった。
『私はあなたの生存を最優先とします』
「……当たり前でしょ……」
『いいえ』
一拍置いて、続く。
『あなたは“器”ですので』
その言葉は、あまりにも冷酷だった。
「……器……?」
『はい。維持対象です』
——人ではない。
この存在にとって、自分は。
「……ふざけないで……」
震える声。
だが、その時。
遠くから、角笛の音が響いた。
増援。
帝国軍だ。
セリスの顔から血の気が引く。
『問題ありません』
ノイエ・ジールが言う。
『先ほどの手順で全て排除可能です』
「……だめ……!」
セリスは叫んだ。
「もう……殺さないで……!」
沈黙。
その間が、やけに長く感じられた。
『非効率です』
「それでも!!」
強く握る。
震える手で。
「……私が……やる……」
——その選択を。
初めて、自分で掴んだ。




