倒すと守る
翌朝。
霧の残る街道を、四人は歩いていた。
「……次の目的地は?」
リオが言う。
「ヴァレン王国の方角に向かう」
セリスが答える。
「帝国の動きを掴みたい。情報が必要よ」
「遠回りじゃないか」
「安全な道がそこしかない」
ガイウスが地図を見ながら補足する。
「帝国の追跡部隊は東に集中している。西回りが現状最善だ」
リオは黙って頷く。
納得した、というより——考えている顔だった。
しばらく歩いたところで。
リオが口を開いた。
「……なあ、セリス」
「なに?」
「帝国を、どうするつもりだ」
セリスは歩きながら答える。
「止める。これ以上、村が焼かれないように」
「止める、じゃなくて——倒す、だろ」
足が、止まる。
リオがセリスの前に立つ。
目が、真剣だった。
「守るだけじゃ終わらない。帝国を叩き潰さないと、また同じことが起きる」
「……分かってる」
「分かってるなら、なんで村人を助けに行く。なんで逃げる兵士を見逃す。そんなことしてる間に、どこかで誰かが殺されてる」
セリスは、リオをまっすぐ見る。
「あなたは、誰かを失ったのね」
リオの表情が、わずかに固まる。
「……関係ない」
「関係ある」
静かに、しかし迷いなく言う。
「あなたが怒っている理由が、私には分かる」
「……」
「でも」
一歩、前に出る。
「倒すだけじゃ、終わらないとも思ってる」
リオが眉をひそめる。
「どういう意味だ」
「昨日の兵士。あの中に、怯えていた顔があった」
「兵士は兵士だ」
「そう。でも——命令で動いている人間を全員倒しても、命令を出す仕組みが残ったら、また同じことが起きる」
沈黙。
「……きれいごとだ」
リオが言う。
「そうかもしれない」
セリスは否定しない。
「でも、きれいごとでも言い続けるつもり。それが——私が戦う理由だから」
風が、吹く。
リオは、しばらくセリスを見ていた。
やがて。
「……俺には、無理だ」
小さく言う。
「今は、まだ」
それだけ言って、歩き出す。
セリスは、その背中を見た。
(今は、まだ——か)
「……面倒な議論だ」
ガイウスが横を通り過ぎながら言う。
「でも」
一瞬だけ、足を止める。
「お前の言い方の方が、まだ筋は通っている」
それだけ言って、歩き出す。
セリスが目を丸くする。
「……珍しいこと言うのね」
「一度だけだ。忘れろ」
メイラが隣に並ぶ。
「……セリスさん」
「なに?」
「リオ、ああ見えて——ちゃんと聞いてると思います」
「……そう」
「うん」
短く、確かに言う。
『非合理な寄り道が続いています』
ノイエが言う。
「これは寄り道じゃないの」
『……定義の相違ですね』
「そう。これが——旅よ」
四人は、歩き続ける。
霧が晴れ始めていた。
遠くに、道が続いている。
まだ長い。
それでも——
歩く理由は、ある。
最後までお読みいただきありがとうございます!
次回は**【本日21時】**に更新予定です。
新メンバーが加入する回になりますので、ぜひお見逃しなく。
面白かった、続きが気になる!と思っていただけましたら、
下の**【☆☆☆☆☆】をポチッと評価、
または【ブックマーク】**をいただけると、執筆の大きな励みになります!




