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魔剣に選ばれた王女 ~その感情はエラーですか?~【完結済/一気読み推奨】  作者: 筑紫隼人
第一章「魔剣と王女」

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第20話 倒すと守る

翌朝。


霧の残る街道を、四人は歩いていた。


「……次の目的地は?」


リオが尋ねる。


「ヴァレン王国の方角へ向かうわ」


セリスが答えた。


「帝国の動きを知りたい。そのための情報が必要よ」


「遠回りじゃないか」


「安全に進める道が、そこしかないの」


ガイウスが地図を見ながら口を開く。


「帝国の追跡部隊は東に集中している。今は西回りが最善だ」


リオは黙って頷いた。


納得したというより、考え込んでいる表情だった。


しばらく歩いたあと。


リオが再び口を開く。


「……なあ、セリス」


「なに?」


「帝国を、どうするつもりだ」


セリスは歩みを止めずに答える。


「止める。これ以上、村が焼かれないように」


「止めるじゃない」


リオの足が止まる。


「倒す、だろ」


セリスも立ち止まった。


リオが真正面に立つ。


その目は真剣だった。


「守るだけじゃ終わらない。帝国を叩き潰さなきゃ、また同じことが起きる」


「……わかってる」


「わかってるなら、なんで村人を助ける。なんで逃げる兵士を見逃す。その間にも、誰かが殺されてる」


セリスは静かにリオを見つめた。


「あなた、大切な人を失ったのね」


リオの表情がわずかに固まる。


「……関係ない」


「関係ある」


迷いなく言った。


「あなたが怒っている理由は、わかる」


「……」


「でも」


一歩、前へ出る。


「倒すだけでは終わらないとも思ってる」


リオが眉をひそめる。


「どういう意味だ」


「昨日の兵士の中に、怯えていた人がいた」


「兵士は兵士だ」


「そう。でも、命令で動く人を全員倒しても、命令を出す仕組みが残れば、また同じことが起きる」


沈黙が流れる。


「……きれいごとだ」


リオが吐き捨てる。


「そうかもしれない」


セリスは否定しなかった。


「それでも言い続ける。それが、私の戦う理由だから」


風が吹き抜けた。


リオはしばらくセリスを見つめていた。


やがて、小さく息を吐く。


「……俺には無理だ」


少し間を置く。


「今は、まだ」


それだけ言って歩き出した。


セリスは、その背中を見送る。


(今は、まだ……か)


ガイウスが横を通り過ぎる。


「……面倒な議論だ」


そう言って、一瞬だけ足を止めた。


「だが、お前の考えの方が筋は通っている」


それだけ残して歩き出す。


セリスは思わず目を丸くした。


「……珍しいこと言うのね」


「一度だけだ。忘れろ」


メイラが隣に並ぶ。


「……セリスさん」


「なに?」


「リオさん、ああ見えてちゃんと聞いてると思います」


「……そう」


「うん」


短い返事だった。


でも、その声には確信があった。


『非合理な寄り道が続いています』


ノイエが告げる。


「寄り道じゃないわ」


『……定義の違いですね』


「そう」


セリスは小さく笑う。


「これが、旅だから」


四人は再び歩き出した。


霧が少しずつ晴れていく。


遠くまで続く街道。


まだ先は長い。


それでも。


歩く理由は、もう迷わなかった。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます。


「続きが気になる」と思っていただけましたら、ブックマークや評価をいただけると励みになります。


一つひとつの応援が、この物語を最後まで書き切る力になっています。


次話もお付き合いいただければ嬉しいです。

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意志を持つ禁忌の魔剣は、彼女を守る剣か、それとも彼女を喰らう器か? 復讐に燃える王女が世界の真実を斬り拓く、本格ダーク戦記。
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