ep.42『Back in Black』
富士田と川端は、チェーン居酒屋に入り、お互いビールを頼んだ。
2人は乾杯し、ビールを一口飲んだ後、富士田が話し始める。
富士田:「社長もこういう所で飲んだりするんですね〜。」
川端:「まぁね。普段は会食やらなんやらで色んな店に行くけど、結局こういう店が一番落ち着くかもしれないな。」
そのまま2人は酒を飲みながら、プロジェクトの話を淡々と続けていた。
やがて富士田が席を立ち、川端に声をかける。
富士田:「社長すみません。ちょっと電話一本だけしてきます。」
そう言いながら、富士田は席を離れ外へ出る。
富士田はスマートフォンを操作し、礼堂に電話をかける。
礼堂:「おう、お疲れ。どうした?」
富士田:「礼堂、お疲れ。今、川端社長と飲んでる。ジャンク・バスターズのこと、探ってみる?」
礼堂:「聞けるか?ただ、あんまり踏み込んだ話は難しいかもな。特にボウ個人の話とかは。」
富士田:「うん。まぁ趣味の話から広げてみるよ。ちなみに、今なにしてんの?」
礼堂:「今?夜魔で冬月と飲んでるよ。なんかまた上司に怒られたらしくて、ストレス溜まってるらしい。」
富士田:「冬月も懲りないなぁ(笑)……まぁ、ちょっと話広げつつ探ってみるよ。」
礼堂:「おう!慎重にな!」
富士田:「まぁ任せておけって。」
電話を切るタイミングで、後方から声がかかる。
川端:「なんか立て込んでそうだったから、会計しておいたよ。はいこれ、リュック。」
富士田は慌てながらスマートフォンをポケットにしまう。
富士田:「あ、あわわ!わわ!申し訳ございません、社長!」
川端:「こんな時間に電話とは、仕事熱心なんだな。」
富士田:「いやそんな!滅相もございません!しょうもない電話ですんで!」
富士田(心の声):「タイミング悪いなぁ〜。さっきの会話、聞かれたりしてないよな……。」
川端:「そうか。じゃあ、もう一軒だけ行こうか。店は富士田くんに任せるよ。」
富士田:「は、はい!」
富士田(心の声):「やばいな〜!どーしよ!俺、普段配信ばっかしてるから飲み屋なんか知らないぞ……あっ!」
富士田が何かを思い出し、そのまま提案する。
富士田:「この間、部長に連れてってもらった飲み屋さんがあるので、そこにしましょうか!」
川端:「行きつけの店なのかな。じゃあ、そこに行こうか。」
2人は店を出て、2軒目の店へと向かった。
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一方、その頃、夜魔では……
カウンターで完全に酒に飲まれている冬月が、呂律の回らない中、愚痴を垂れている。
冬月:「ふぅ〜!なんだよな〜!なんでもかんでも、じぇんぶ俺のしぇいかよ!むかつくじぇ〜!」
礼堂・夜魔・末吉の3人は、呆れた眼差しで冬月を見ていた。そんな冬月に対し、礼堂が冷静にツッコミを入れる。
礼堂:「冬月くんさ〜、それもう8回目だよ。あと、わかんないけど、たぶん君のせいだよ。全部ね。」
そんな中、入口の扉が開き、そこには富士田の姿があった。
冬月:「ひゅじたじゃねぇ〜か〜!お前のしぇいだからな〜、じぇんぶ〜!」
そして、富士田の後ろには川端の姿が──。
冬月も含め、礼堂たちはすぐに表情が変わる。
礼堂(心の声):「富士田ーー!!お前何してくれとんじゃコラ!なんで川端連れてきてんだよ!!」
冬月(心の声):「なんで富士田と川端がこの店に?上司に怒られたとか、どうでもよくなったぞ……いや、なってないか。」
富士田が精一杯の謝罪を“顔面”で表現しながら、申し訳なさそうに店内へと歩みを進める。
末吉:「いらっしゃいませ〜(ニコニコ)
お二人様ですね!あちらのテーブル席へどうぞ!」
カウンターに同席させないよう、末吉が機転を利かせ、富士田たちをテーブル席へと誘導した。
礼堂(心の声):「ナイス末吉さん!さすが仕事のできる男!」
一同が焦りを見せる中、冷静な男がひとり——。
夜魔(小声):「……ついに今夜動くか。1000万。」