ep41.『閃いてそうな顔』
プロジェクト会議中、
2時間にも渡る会議により、なかなか煮え切らずメンバー達は行き詰まりを感じている。
パソコンの画面を睨むように見つめる富士田。
静まり返った会議室の中、資料を眺めるフリをしながら、視線はチラチラとスマホの通知へ。
その表情は徐々に険しくなり、やがて完全に引きつっていく。
通知の送り主はもちろん——礼堂と冬月。
礼堂:【これ聞いてみて。社長!ボウの事件のこと、何か知ってますか?】
冬月:【社長!10年前、なんか変わったことありませんでしたか?】
礼堂:【社長!犯人はお前だ!】
冬月:【社長!10年前、人殺した的なエピソードあります?】
礼堂:【社長!なんか手に血とかついてそうですね?】
冬月:【社長大丈夫です。ここだけの話にしておきますから。】
富士田の指が震える。パソコンのキーボードを打つフリで、スマホの返信を打ち始める。
富士田:【そんなこと聞けるかぁぁ!!
マジでクビになるわ!!
お前らどんだけ暇なんだよ!!
自分の業務があるだろ!社会人だろ!!】
周囲の同僚が振り返る中、富士田は一人、顔を真っ赤にしてスマホを握りしめていた。
他のプロジェクトメンバーが、ふとした表情の変化に気づいて声をかける。
メンバーA:「富士田くん、どうしたんだ?」
メンバーB:「なんか閃いたのかな?」
メンバーC:「富士田くんが閃いてそうな顔してるぞ」
一気に注目を集めてしまった富士田。
富士田(ったく、ふざけんなよあいつら……!何も閃いてないねん!てか俺、そんな顔生まれて一回もしたことないわ!)
すると、神妙な面持ちをしていた川端までもが口を開く。
川端:「富士田くん、何かあるのかね?」
富士田(やべぇ……社長自ら質問してきたよ……。もう、いっそ礼堂と冬月のメッセージそのまま言ったろうかな!もうどーにでもなれ!)
脳内には、あの悪友たちのふざけたメッセージがぐるぐると回る。
富士田(やばいやばい……なんか言わなきゃ……!全員こっち見てるやん!逃げられない……もうこうなったら!!)
ついに口から出た言葉は——
富士田:「犯人は!お前だー!!!」
一瞬で静まり返る会議室。
川端:「ん?」
メンバーたち:「……え?」
富士田(やってもうたぁぁ……!しかも決定的なやつ言ってもうた……これ、証拠そろってから言うやつやん……!)
一瞬の沈黙ののち、必死で話をつなごうとする富士田。
富士田:「……失礼しました!今のは、日本で大人気の探偵アニメの決め台詞です!我々日本人なら誰しも一度は聞いたことあるやつでして!」
そこから富士田は、頭をフル回転させて即興のプレゼンへと切り替える。
富士田:「……海外でもアニメ文化は高い評価を受けています。音楽で言えば数年前からシティポップ、料理では日本食……。これらは日本が意図的に発信したというよりも、海外の人たちが見つけてくれたんです」
「だからこそ、今こそ『日本オリジナル』を世界に届けるタイミングなんです。和洋折衷でいいとこ取りをしながらも、本質的には“日本らしさ”をどう見せるか。それを我々が先導すべきだと思います!」
長々と語り終え、息を吐く富士田。
川端が、考えながらゆっくりと頷く。
川端:「なるほど。確かに、今回のプロジェクトは国内に収めておくにはもったいない。あえて“日本オリジナル”を前面に出すことで、むしろ海外に刺さるかもしれないな」
メンバーA:「面白い視点だね!」
メンバーB:「方向性が見えてきたな!」
メンバーC:「やっぱり閃いてたんだ、富士田くん!」
その後議論が盛り上がり、会議は良い雰囲気で終わる。
富士田(……まさか礼堂と冬月のふざけメッセージに助けられるとは。まぁ...癪だけど)
会議が終わり、デスクで荷物をまとめる富士田。
その時、ポケットのスマホが震えた。
画面には「川端社長」からの着信。
慌てて電話を取る富士田。
川端:「おー、富士田くん。さっきはお疲れ様。……このあと、時間あるかい?」
富士田:「はっ、はい! 全然あります!」
川端:「今日の話、もう少し聞かせてもらいたくてね。一杯どうかな?」
富士田:「ぜひ! よろしくお願いします!」
電話を切ったあと、ようやく事態を理解する富士田。
富士田(うわ〜……反射でOKしちゃた……。まさか“犯人はお前だ!”のくだり、深掘りされるわけじゃないよね……?)
彼の胸中は、プロジェクトの成功と個人的な危機感で、ぐちゃぐちゃになっていた。




