↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/210

181話 作意


 人海戦術の効果は理解しています。だから遣るので。

 しかし、其処に運(・)の要素も絡みます。

 3分足らずでクリスが御目当ての物──玉砂利に似た、黒い1サニタ程の塊を見付けたからです。

 まあ、飽きる前に終わったので良かったんですけどね。長引くと後々の遣る気(テンション)に影響しますから。


 その黒い塊をクリスから受け取り、魔力を流す。

 すると、頭上の空が罅割れて──ブラックホールの様な渦が発生して俺達を吸い込み、混み込んだ。

 尚、アンの釣果は無し(ボウズ)でした。



「貯水槽、小島と続いていたので水に関連しているのかと思わせておいて、でしょうか?」


「或いは、単に造っている途中で飽きたか、だな」


「……そうだとしたら、何と無く嫌ですね」



 そんな風に話す俺とナユ、皆の視界に映るのは砂漠(・・)。

 俺以外、実物を知らないので、「これが……」な状態。


 ただ、知っていると砂漠にも関係している水の代名詞が有る事が判ります。

 はい、砂漠の水源(オアシス)です。



「ティア、レベッカ、無理はするなよ?」


「はい、少し……こう、気分が重いだけです」


「……何か、急に気怠くなったけど……平気」



 そう答える二人だけど……辛そうに見える。


 砂漠であり、此処も草一本生えてはいない。

 小島では海水浴気分も有って目立ちはしなかったけど、植物の少ない環境は二人に影響している。

 命に関わる様な事は無いんですけどね。

 二人が言った様に、倦怠感や脱力感を生みます。

 俺もエルフ化すれば体感する事が出来るでしょうけど、今はナタリアが一緒なので流石に遣りません。

 あと、確認した訳では有りませんが、小島は周囲の海に海草の類いが存在していた可能性は有ります。

 ええ、海草でも良いんで。干渉する事が出来るか否かは関係有りません。兎に角、存在していればいいので。


 ──という訳で俺はレベッカを背負います。

 ティアは戦力ですし、洗礼済みですからね。

 だから、気にしなくていい。頼るべき時は頼りなさい。俺達は家族なんですから。




 さて、だだっ広い砂漠が広がっている訳ですが。

 目印らしい目印は有りませんけど、周囲を見回してからフォルテ達と目を合わせて、頷き合います。

 満場一致で【直感】が反応した方向に。

 ナタリアには態とらしい小芝居で誤魔化します。

 「あれれ~」系では有りませんよ?

 「何か、こう、彼方の方が怪しくない?」的なです。






「──ああもうっ! 本当に鬱陶しいわねっ!!」


「アンさーん、雑な倒し方は駄目ですよー」


「判ってるわよっ!!」



 ナユの遣る気の感じられない棒読みの注意にでも素直に律儀に返事をするアンが可愛い。

 ……別に暑さで頭を殺られたりしてはいませんから。


 アンだけではなく、俺達が戦っている相手は砂漠に潜む狩人“デザートポムリン”という魔蠍。

 可愛らしく、美味しそうな名前だけど、甘くはないて、見た目にも呪われた成れの果ての様な不気味さ。蠍だから毒持ちなのは言うまでも有りません。

 胴体は1ミード程だけど、毒針を持つ尾は1ミードで、巨大な鋏も1ミード。全体では3ミード前後。

 鋏と尾を寄せると、そのシルエットとしては1ミード。はい、ちょっとした詐欺ですよね~。

 毒針も鋏も恐くは有りませんけど、兎に角、数が多い。その上、侵入者(俺達)に対して超攻撃で執拗に迫る。

 だから、アンが苛々しているのも判ります。

 その苛立ちはアンだけでは有りませんから。

 でも、このデザートポムリン。実は魔物ではなく魔獣。つまり、食材(・・)なんです。それも此処だけの貴重な。

 ええ、食べられるのなら労力を惜しまないのが我が家。苛々していても、楽しみが有るから頑張れます。


 さて、そんな俺達なんですが。

 真っ直ぐに【直感】が導く方向に進んでいた俺達ですが当然の様に行く手を阻む敵が配置されています。

 砂漠と言えば? はい、スフィンクス(・・・・・・)です。

 まあ、「え? 何故? 世界観は何処に?」と思うのも仕方が無い事だと思います。マジで。


 そういう訳で細かいツッコミは流すとして。

 道なき道を進んできた俺達の前に現れたのが伏せ(・・)の姿勢であっても、高さが10ミードは有る巨像。

 俺以外の皆は思わず、観光客化していました。

 俺はほら……疑問が先に来たので。


 そんなスフィンクスの前に居たら、突如、目が光った。同時に俺を含めた四人の身体が光って──気付いた時にはクイズ番組の回答席に座らされていました。

 これには流石に俺も「……え?」って為りました。

 ただ、スフィンクスと言えば、謎掛け(・・・)ですからね。

 俺個人としては理解が出来ます。


 そして、唐突に始まったクイズ大会。

 「先に進みたいかーっ?!」と言わんばかりの司会進行はスフィンクスが効果音付きで遣っています。

 デデンッ、と聞くと。自然と体勢を作る日本人のなんと哀しい条件反射なのでしょう。


 回答者に選ばれたのはティアとオリビアとシルファ。

 俺達は回答席からは立ち上がる事も出来無いし、一切の戦闘行為も禁止されています。勿論、強制的にです。

 その為、他の皆は俺達を護っての蠍狩り。

 クイズは時間制限は無く、何回間違えても正解するまで回答する事が可能です。

 但し、間違えたらデザートポムリンが大量出現します。多分、何処かに専用の飼育場が有るんでしょうね。糞が。態と間違えて弾切れを狙うのは悪手という事です。


 因みに、俺はノーミスです。

 ティア達は苦手ジャンルで苦戦していますけど、何とか正解には辿り着いています。

 答えを教える事は勿論ですが、ヒントも出せない上に、応援も出来ません。回答者は(・・・・)ね。

 はい、途中でアンが反射的に言った時は、違反行為だと思って焦りましたし、身構えましたが、ノーペナルティーだったので、以降は俺以外の時にはフォルテ達が判ったら答えを言っています。


 これ、多分ですけど、システム上の穴ですよね?

 まさか、こんな大人数で、しかも、非戦力三人を抱えて戦えるとは思っていなかったんでしょう。

 想定外も想定外で、何か済みません。てへっ。




 そんなこんなで一人百問、更に四人で百問、合計五百問という無駄に長いクイズを終えました。

 終わったらスフィンクスの口が、顎が外れたギャグ漫画みたいな表現で下に開いて、階段が出現。

 スフィンクスの口の中へと進みます。


 尚、俺はノーミスだった為、【知識王】という称号系のスキルを押し付けられました。


 口の中から続く通路は狭い。

 横2ミード、高さ3ミードと二人並ぶと身動きがし難い造りなので必然的に一列縦隊になります。

 ……あからさまに罠が有りそうですよね?

 はい、そう言ってたら有りましたよ。

 狭い通路だから効果覿面。鬱陶しいです。


 それでも無事に進み──出た先は何故か、雪山。

 少し吹雪いていますが、視界は良好。いい眺めです。

 俺達は山の山頂付近に有る小さな亀裂から出て来た形。当然の様に全員が抜けたら通路(来た道)は消失。


 さて、此処で問題です。

 雪山で気を付ける事とは?

 はい、そうです。雪崩(・・)です。


 通路が消えた事を俺達が確認したら、雪山が揺れた。

 嫌な予感とかではなく、確信しましたよ。

 自領(ウチ)でもノーザィラスでも雪崩を経験した事が有るので嫌でも判りますからね。


 まあ、だからこそ、備え(・・)もして有ります。

 即座にスキー板やスノーボードを取り出して装着したら雪山の斜面を迷わず滑走して下って行きます。

 俺がメアリー様、アンがナタリア、エクレがレベッカ、フォルテがシルファを抱き上げて。

 普通に走るのとは訳が違う為、組み合わせも変化。


 背後から追い掛ける様に発生した雪崩は下れば下る程に加速して一気に距離を詰めて来ますから直滑降。

 カービング? 減速? そんな物は無しです。

 悲鳴を上げるナタリアの反応が新鮮な位です。


 そして、あと数秒で雪崩に飲み込まれる、という所で。その姿を目視したら、愚痴の一つも言いたくなります。

 そんな「さあ、どうぞ!」と言わんばかりに整えられたタイミングで配置されている反り返った岩(ジャンプ台)で飛ぶ。

 その身体能力を無駄遣いしてアンが大技をメイク。

 おおっ、抱えられているナタリアの悲鳴が三次元的だ!






「し、死ぬかと思いました……」



 疲労困憊状態のナタリアが苦情を漏らす。

 うん、腕白な妻で御免。でも、俺の妻になるというのはこういう事だから。

 そう言って置けば、ナタリアから広まってくれるかと。

 あと、アンは狙った訳では有りませんよ。テンションが上がったから、ノリで遣っただけです。

 だから、ちゃんと反省をさせています。ナユが。


 大ジャンプした俺達は落下する途中で雲──霧かな?

 まあ、その中に入って──着地。

 その途中で転移した感覚が有ったので、着地した場所が雪の上ではなくても驚きはしません。

 着地時の衝撃は無いに等しかったですしね。


 今、俺達が居るのは古い遺跡の中を思わせる空間。

 石材を加工して造られただろう神殿の跡にも見える。

 その天井や壁の一部が崩れ、向こう側に有ったかの様に見える砂が積もり、埋めている。

 まあ、崩れた先には岩肌が有るのだけれど。


 其処に彼方等此方等から水が流れ込んでいる。

 それによって中央広場の様に下がっている所に溜まり、大きな泉の様になっている。

 ……底が見えないから10ミードは有るかな。

 溢れてはいないから、排水はされているみたいだ。

 まあ、こういった事をダンジョン内で考えるのは普通はしないんでしょうけどね。


 ダンジョンだから明かりの問題も無し。

 その為、“失われた楽園っぽい”景観。

 観光地にしたら、人気が出る事、間違い無しです。

 でも、此処はダンジョンです。油断は禁物。



「……来るか、戦闘準備!」



 そう言いはするけど、慣れている皆の反応は早い。

 フォルテとクリスがメアリー様達を連れて下がる。

 残った面子は相手がボスだと判るから戦意高揚。

 アンなんか、拳を掌に叩き付けてますからね。


 そんな俺達の目の前にボスが出現──しなかった。



「………………アルト様?」


「水の中、それと──砂の中(其処)だ」



 左手を振った先に向かって静かに駆ける疾風。

 積もった砂を貫き──潜んでいた敵を捉えた。

 砂の中から弾き出される様にして姿を現す。


 “サンディバルナイト”。

 デザートポムリンに似ているが、砂に擬態し易い色で、甲殻の表面も細かく凸凹としている。

 体長は変わらないが──殺傷能力は上か。



「ボスの取り巻きだ、遠距離攻撃も警戒」



 そう言うと俺は単身、泉に飛び込む。

 ボス(此方)は浮いてくる気配が無かったから。

 雷撃で攻撃してもいいんだけど、万が一にも感電したら笑い話じゃ済みませんからね。


 泉は予想よりも深く、30ミード近かった。

 その底──中央に鎮座するのは……シーラカンス?

 それっぽい姿で、体長は3ミード程。但し

、口が異様に大きくて体長の半分近くもある。

 長身の成人男性でも丸のみかぁ~……


 ──なんて考えていたら、ボスが動いた──消えたっ?!

 ──と、思わず、言いそうになる程度には速い。

 はい、どんなに速く泳ごうとも水の中なので捕捉する事自体は容易です。

 水に自分の魔力を混ぜるか、自分の魔法の水を混ぜればレーダー代わりに出来ますからね。

 何処に居ようとも丸判りです。

 何より──もっと速い相手を知っていますからね。

 その事を思えば楽勝です。


 ──という訳で、泉底に着地し、誘う(・・)。

 此方に向いた所で、風と水の複合魔法の渦で水中から、空気の美味しい空中(地上)へと御招待。

 一応、皆にも姿を見せてあげないとね。


 空中に放り出したら、水面(・・)を蹴る。

 超有名格ゲーの代表技の様にボス目掛けて右の拳を突き上げて、そのまま押し込む(・・・・)。

 俺の拳を支点に二つに折れるボスの身体が上がり切った所でオーバーヘッドキックで蹴り落とす。

 ──が、自分も回転し、連続で踵落としを入れる。

 水面に激突(・・)し、水飛沫という津波を起こすボス。

 其処に回転からの肘打ちを入れ、沈む前に掴んで投げ、浮かせた所に拳撃の連打。

 撃ち抜かず(・・・・・)に撃ち込む(・・・・)。

 浸透勁の要領で、徹底した内部破壊。

 最後に壁、天井と蹴ってからの跳び蹴り。

 小さな砂丘に突っ込んだボスは──魔素と化す。




 回収する物も回収し終えたら──大きく揺れた。



「──ちょっ、何っ!?」


「まさか、まだボスが居るとかっ?!」


「違うっ! ダンジョンの崩壊(・・)だっ!」



 そう叫びながら見回せば先程までは変化が無かったのに見計らった様に「出口は此方等ですよ~」と言うみたいに光り出した遺跡の一角を見て、駆け出す。

 最後まで遊ばれているみたいで舌打ちしたくなるけど。そうした所で何も変わりませんからね。


 全員が光っている魔法陣に入ると、光は一層輝く。

 視界が光に包まれ、転移する感覚。

 その中で──俺は見た。

 崩壊してゆくダンジョンの壁。その一角から姿を現した壁画を見て──俺は目を見開いた。

 思わず、「ちょ待──」を現実(リアル)で遣りそうな程に。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。