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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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59.四日目の始まり


 目が覚めた。
 ぐっすり眠れた。
 一応、周囲にモンスターの気配がないかどうか確認する。
 『索敵』にも反応はないし、大丈夫そうだな。

「アカ、『擬態』を解いてくれ」

「……(ふるふる)」

 アカの擬態を解いてもらい、大きく伸びをする。

「モモ、アカ、おはよう」

「わん!」
「……(ふるふる)」

 モモは当然ながら先に起きていたようだ。
 アカは……そう言えば、スライムって眠るのか?
 訊ねてみるも、アカはよく分からないと言うように体を震わせた。
 まあ、いいか。元気そうだし。

 さて、今日はいよいよイチノセさんが仲間になる日だ。
 うーむ……やっぱ緊張するな。
 なんだかんだで、初めての『人間』のパーティーメンバーだ。
 しかも女性だし、そわそわする。
 髪大丈夫だよな?寝癖とかついてないだろうか?

「あ、待ち合わせ場所や時間を確認しておかないとな」

 イチノセさんにメールを送る。
 案の定すぐに返事は返ってきた。
 場所はすぐ近くのマンション。時間は今から一時間後か……。

「まだまだ余裕があるな」

 先に朝食を済ませてしまうか。
 アイテムボックスから適当に食料を取り出し、朝食をとる。
 パンと果物、サラダ、牛乳。モモにはドッグフード。
 食べ終わった後のゴミは、アカに吸収して貰う。
 アカも喜んで食べてるし、とってもエコだ。

 朝食を食べ終えたら、洗顔、髭剃り、あと寝癖のチェック。
 まあ、一応ね。一応身だしなみは整えておく。
 鏡を見たら、いつもの冴えない顔が映っていた。こんちくしょう。

 時間はまだあるし、もう少し探索するか。
 待ち合わせの場所は、ここから歩いて数分。
 もう少しショッピングモールに中を見て回っても、時間は大丈夫だろう。
 せっかくオークたちが居なくなったんだし。

「……そう言えば」

 昨日のスケルトン達。
 もしかして、アイツらもここからオークの群れが去ったから、現れたのだろうか?
 じゃないとタイミングが良すぎるし。

「モンスター同士でも争ってるみたいだったしな」

 田んぼで遭遇したオークはシャドウ・ウルフの群れから追われていたんだし、モンスター同士の関係もかなり殺伐としているのだろう。
 ま、だからと言って狩る事には変わりないんだけど。
 じゃないと、こっちが殺されるし。

 という訳で、余った時間で、ショッピングモールの探索を再開する。
 昨日、見れなかった場所を回ろう。
 ついでに、使えそうな物があれば回収。
 それを繰り返しながら、一階、二階、駐車場と回っていく。
 駐車場には乗り捨てられた車が大量にあった。
 勿論、アイテムボックスに収納する。
 柱の砕けた部分なども回収する。これも立派な武器になるしな。

「にしても、死体が少ないな……」

 二階や駐車場には死体が無かった。
 やっぱあの山積みにされていた死体が、このショッピングモールで殺された人たち全員なのだろうか。
 しかし、わざわざ一箇所に集めてどうするつもりだったんだ?

 そう言えば、モンスターは倒せば体は消えて、経験値がもらえて、魔石が残る。
 でも人間はそのまま死体が残るよな。
 この違いってなんだろう?

「……考えてみれば、色々謎だよな、今の世界のシステムって」

 突然モンスターが溢れて、ゲームの様なシステムが使える様になって。
 そもそも、なんでモンスターは現れたんだ?魔石ってなんなんだ?
 分からんことが多すぎるよな。
 『そう言うものだ』って納得するには、おかしな部分が多すぎるし。
 物理法則とかいろいろ……。

「……ん?」

 考え事をしていると、『索敵』に反応があった。
 モンスターじゃない。人の気配だ。

 まさか……生存者か?
 いや、それは考えづらいな。
 オークの嗅覚からして、隠れきる事はまず不可能だ。
 それこそ、俺が持ってる『無臭』や『気配遮断』でもない限りは発見されてしまうだろう。

「という事は、外から来たのか……?」

 スケルトン達みたいに、オークたちが居なくなるタイミングを見計らってたのか?
 とりあえず、見に行ってみるか。
 モモを陰に潜ませ、『気配遮断』、『無音動作』、『無臭』を発動させながら、俺たちは気配の在った方へ向かった。

「……あそこか」

 俺が入ってきた所とは反対の出入り口。
 そこには二人の女性が居た。
 若いな。十代後半か、二十代くらいの女性たちだ。

「すいませーん、誰か居ませんかー?」

「ねえ、やっぱり戻りませんか?大丈夫ですよ。きっとみんなもう逃げてますって」

「……大丈夫よ。この前と違って、私たちだってちゃんとレベルを上げたんだから。今度はモンスターなんかに、お……遅れは取らないわよ。絶対に見つけ出すわ」

「震える声で言っても説得力ないですって……」

 リュックを背負い、さすまたみたいな武器を構えながら店内をうろつく二人の女性。

「おや……?」

 その内の一人には見覚えがあった。
 棚の隅からその女性の顔を見つめる。
 目の下の泣きボクロが特徴的な黒髪美人さん。

 間違いない。あの女性ヒト、俺の部屋の隣に住んでた新婚さんだ。
 生きてたのか、あの人……。
 てことは、探してるのってもしかして彼女の旦那さんか?
 少し嫌な予感がしつつ、俺は彼女たちの行動を見守る事にした。



 一方その頃―――。

「ヤバい……胃が痛い……」

 一之瀬奈津イチノセ ナツは、とあるマンションの一室で蹲っていた。
 結局、一日置いても彼女の精神が安定する事は無かった。

「うう……緊張する」

 いや、むしろ時間を置いた事で余計に不安が募り、碌に眠る事も出来なかった。
 会って笑われたらどうしよう、嫌われたらどうしよう、本当は迷惑なんじゃないか?メール送りすぎていないだろうか?モフモフし過ぎただろうか?
 そんなネガティブな事ばかり考えてる内に、気付けば夜が明けてしまったのだ。

「でも、モモちゃんに会う為……頑張れ、私ッ……!」

 頑張るぞいのポーズをとって気合を入れる一之瀬。
 でもやっぱり知らない人と話すのは緊張する。精神的によろしくない。
 なんだかんだあって、高校を中退して一年。
 外界との接触を断った引き籠り生活は、彼女の人見知りに拍車をかけていた。
 それはモンスターがあふれる世界になっても変わる事は無かった。

「気絶してる時なら簡単に会えたのに……くっ」

 ガチャで当てた回復薬ポーション
 あの男性を治療しに近づいた時は、きっと自分もテンションがおかしかったのだろう。
 冷静になってみれば、死ぬほど恥ずかしかった。

「どんな顔して会えばいいのよ……」

 多分、向こうは気付いても居ないだろうが、色々と気まずい。

「うぅー……覚悟を決めろ……覚悟を決めるんだ……!」

 でも……それでも、その苦難を乗り越えて共に行動したいイヌが居る。
 モフモフしたい、癒されたい。
 だから彼女は立ち上がる。
 人見知りだって克服してみせる。
 全ては、新たな仲間の為。
 ただ一匹のワンちゃんのために。

「待っててね、モモちゃん……。私頑張るッ……!」

 相棒のライフルを担ぎ、彼女はマンションの扉を開けた。
 その顔は戦場に赴く決意を固めた歴戦の戦士の如き表情だった。
 一応言っておくが、ただ部屋を出て人に会うだけである。
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