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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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29.ホームセンター


 『索敵』を使いながら、侵入できそうな場所を探す。
 予想通り物資の搬入口の所には、見張りの学生が居た。
 一人だけか……。不意を突けば侵入できそうだけど、用心するに越したことはないな。
 別の侵入しやすそうな場所を探すと、丁度いい感じの窓を見つけた。
 鍵はかかっていたが、問題ない。

「モモ」

「わん」

 『影』の中からモモが出てくる。
 モモは窓の隙間へ影を潜り込ませ、内側から鍵を開ける。
 僅かでも『隙間』があるならば、『影』はその隙間に入り込むことが出来る。
 ホントに便利なスキルだ。

「サンキュー、モモ」

 お礼に一杯撫でてやりたいが、我慢だ。
 頭に手を添える程度に撫で、モモを陰に忍ばせ、すぐに中へ入る。
 『索敵』でこの窓の内側に人はいない事は確認済みだ。
 侵入成功。

 中は暗いが、『暗視』があるのでちゃんと見える。
 ここは……従業員の休憩室かな?
 テーブルやパイプ椅子が置かれ、壁際には物を入れるロッカーがある。

「さっきまで、誰かいたみたいだな……」

 テーブル上にはペットボトルや食べかけのカロリーメイトが置いてあった。
 また誰かが来るかもしれないし、早めに移動しよう。

 廊下に出ると、段ボールや陳列される前の商品が所狭しと並べられていた。
 薄暗いし、身をひそめる場所には困らなさそうだな。

 備え付けの蛍光灯は点いていなかった。
 やっぱ電気は使えないのか……。
 こういうホームセンターなら発電機や、ソーラーパネルとかありそうだけど、それも駄目だったのか?
 でも、どうしてだろう?俺のアパートもそうだったけど、電気だけが使えない理由でもあるのか?
 薄暗い廊下を照らすのは、小さな光。
 据え置き型の懐中電灯が、等間隔で置かれていた。

「やっぱ結構な数の人が居るな……」

 今の『索敵』の範囲内だけで十人以上の反応があった。

「……ん?」

 誰かがこっちに向かって来る。
 二人か。
 俺は素早く『潜伏』と『気配遮断』を使い、商品の陰に隠れる。
 やってきたのは学生だ。
 西野とか呼ばれていたリーダーっぽい奴と、眼鏡をかけた大人しそうな学生。
 彼らは俺に気付く事も無く、休憩室へと入っていった。

 二人の姿が見えなくなるのを確認して、移動する。
 開きっぱなしになっている出入り口から、売り場の方へ。
 売り場の面積は広く、中は薄暗い。
 商品の配置と、誰がどこにいるか確認していこう。
 やっぱ、『索敵』、『気配遮断』、『無音移動』、『暗視』のコンボはこういうシチュエーションでこそ効果を発揮するな。
 モモも『影』に潜ませてるから、視認されることはないしね。

 ゆっくりと移動しながら、人数と売り物の配置を少しずつ確認していく。
 その結果、このホームセンターには二十二人の人間が居る事が分かった。
 学生が十人と避難民が十二人。
 避難してきた人たちは全員、売り場の一箇所に集められている。
 そして、彼らを取り囲む様に、三人の学生が武器を構えて監視している。
 避難してきた人たちは皆、疲れ切った表情で床に座り込んでいるが、その手にはペットボトルや食料が握られていた。学生たちから与えられたらしい。

 ん?避難民の一人が立ち上がって、学生の方へ向かってゆく。
 アレって、確か入口で土下座してたおっさんか。

「な、なあ、もう一本くれないか?もう水が空なんだ……」

「駄目だ。最初に一人一本だっていっただろうが」

「し、しかし朝から何も食べてないんだ……!頼む、もう一本だけ水を恵んでくれ!こういう時なんだ。おじさんを助けると思って。なっ?」

 おいおい、どんだけ厚かましいんだよ……。
 他の学生たちも、「何言ってんだ、コイツ」みたいな顔でオッサンを睨み付けている。

「チッ、西野さんに聞いてくる。その場を動くんじゃねーぞ」

 ぺっと唾を吐いて、一人の少年が持ち場を離れる。
 てっきりキレるかと思ったが、何とか思い留まったみたいだ。
 うわぁー、大変そうだなー……。
 他の二人はその場を動くことはなさそうだ。

 さて、とりあえず売り場の配置や人数は確認した。
 物資の収納は後から出来るし、先の情報を集めるか。
 『聞き耳』スキルで、おっさんたちの会話を盗み聞きしているが、大した情報は持ってなさそうだ。「自衛隊が来るまでの辛抱だ」とか「これは夢よ、夢に違いないわ」とか、そんな事ばかり呟いてる。

 やはり、調べるなら学生たちの方か。
 休憩室の方へ移動し、壁際に身を潜ませる。
 段ボールや商品が一杯あるし、身を隠すにはもってこいだ。
 壁に耳を当て、『聞き耳』スキルを発動。
 『索敵』を使い、中に居るのは三人だと分かっている。
 さて、どんな会話をしているのかね。

「―――さん、本当に彼らを受け入れてよかったんっすか?」

「そ、そうです。僕達だけでもギリギリなのに、他の人まで受け入れちゃったら……」

 この声は、さっきの不良っぽい奴と、眼鏡をかけた大人しそうな子か。
 よし、不良君と眼鏡君と呼ぼう。
 彼らは避難民を受け入れたことに否定的なようだ。
 まあ、そりゃそうだよな。 正直、ただの足手まといにしかならないし。

「……そうだな。でも、現状、人手が足りないのも事実だ。柴田、彼らはレベルやスキルの事は信じてくれたか?」

「一応、実演して見せましたが、それでも半信半疑でしたね。ぶっちゃけ……俺らだって、こうしてレベル上るまでは信じられなかったですし。それに……」

「それに?」

「その……モンスターを殺すこと自体に、抵抗がある奴も居るんっすよ。アイツら何もしないくせに要求だけは一丁前で……クソッ!」

 やっぱさっきの事が相当頭に来てたみたいだな。
 不良君は、壁を叩く。

「そうだよ。あ、あの食料だって、僕らが命がけで他のスーパーから持ってきた物なのにっ……!」

 それに同調する様に、眼鏡君も呟く。

「……二人の気持ちも分かるが、今は耐えてくれ。彼らがレベルを上がれば、食料調達も、他の地域の探索だって今よりずっと楽になる」

「でもアイツらが素直に言う事を聞くっすかね?」

「問題ないよ。俺の『スキル』は知ってるだろ?それに……最悪、彼らは『捨て駒』だ。僕らで対処できないモンスターが現れた場合、逃げる時間を稼ぐ餌につかう。そう言っただろ?」

「まあ……そうっすけど」

 うわー、涼しい顔して、結構えぐい事考えてたんだな、西野君。
 まあ、それ位打算的じゃないと駄目だろうしな。
 それに随分な自信だが、一体どんなジョブや、スキルを持ってるんだろう?
 気になるな。

「それよりもだ。彼らを受け入れたことで、早急に食料の在庫を増やさないといけない。外に出てる二人が戻ってきたら、ローテーションを組み直そう」

「了解っす」
「はい……」

「ともかく、食料の確保を最優先にしよう。幸い、まだ近くのスーパーに行けば、保存のきく食材も―――」

「た、大変だ!」

 勢いよくドアを開けて、一人の学生が入ってくる。
 まあ、「索敵」で気付いてたけどね。

「どうした?何かあったのか?」

 急に入ってきた事にも驚かず、西野君は質問する。

「ハァ、ハァ……さ、さっき外に出てた奴らが帰ってきたんだけどよ……ハァ、ハァ……!し、信じられねー。あり得ねえよ、こんなのっ……!」

「落ち着け、一体どうしたんだ?」

 なんだろうか?
 まさかハイ・オークみたいな強いモンスターが現れたとか?
 だが、彼が口にしたのは俺の予想外の答えだった。

「ど、ドラッグストアの中が空っぽになってたって……。それだけじゃない。この辺り一帯のスーパーやコンビニまで、食料や品物が根こそぎ無くなってたってっ……!」

「……な、なんだって!?」

 その報告を聞き、驚愕の声を上げる三人。
 ……あれ?それ、もしかしなくても犯人、俺じゃね?
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