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モンスターがあふれる世界になったので、好きに生きたいと思います 作者:よっしゃあっ!
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22.決着と視線の先


 気づかれたか?
 一瞬そう思ったが、どうやら違ったようだ。
 見張りのゴブリンは、外の方を見て喚いている。

 ……何だろう? 
 見れば、外には数匹のゴブリンが居た。

 ……マズイ、仲間がいたのか?
 俺とモモは警戒を強める。

「ギィィィィ!!ギィ!ギギィィ!」

 だが、見張りのゴブリンは、外の奴らに向けて威嚇を繰り返し、更には物を投げつけたではないか。
 ……仲間じゃない?
 もしかして、ゴブリンにも群れとかグループが存在するのか?

 考えてみれば、そりゃそうか。
 人間や動物だってグループを作ったり、ケンカしたりするんだ。
 それがゴブリンに当てはまらない理由はないわな。
 ゴブリンも一枚岩じゃないって事か。

「ギィィィ!ギャッギャッギャ!!」

 見張りのゴブリンが何度も吠えるが、それでも外のゴブリン達は中々引こうとしない。
 痺れを切らしたのか、リンゴを齧っていたホブ・ゴブリンが立ち上がった。
 のっしのっしと入口まで移動し、大きな声で吠えた。

「ギギャアアアアアアアア!!」

 一瞬、あのハイ・オークの様な衝撃を警戒したが、それは杞憂に終わった。
 ホブ・ゴブリンは、本当に『ただ叫んだ』だけみたいだ。

 あのハイ・オークの様な『叫びのスキル』は持っていないのか。
 ……好都合だな。

 ホブ・ゴブリンが叫ぶと、外のゴブリン達は渋々その場を去っていった。
 見張りのゴブリンは、ホブ・ゴブリンに何度も頭を下げている。
 完全に格差が出来てるなー……って、違う、そうじゃない!
 何をのんびり眺めているんだ俺は。
 これは、チャンスだ!
 ゴブリン三匹と、ホブ・ゴブリンがばらけた!

「モモッ!」

「……わん!」

 俺とモモは合図をして、動き出す。

「収納!」

 先ず俺は自分が隠れていた前後の『陳列棚』を、アイテムボックスに収納する。
 こういった物であっても、アイテムボックスに収納出来るのは、検証済みだ。
 棚に置いてあった物が空中でばらけ、床に散らばり音を立てる。
 やっぱり、棚『だけ』を収納しようと思えば、こうなるのか。

「ギッ!?」
「ギギ!?」

 突然の物音に、声を上げるゴブリンたち。 視線が一斉にこちらを向く。
 そして俺という人間を見て、ゴブリン達はさらに驚愕した。
 連中からしたら、突然棚が消えて、俺が現れたんだからな。
 ホブ・ゴブリンさえも驚いて間抜けな表情を浮かべている。
 よし、そのまま驚いて固まってろ!

 俺は収納した『陳列棚』をすぐさま取出す。
 ホブ・ゴブリンとゴブリンたちを遮る『壁』としてだ。
 限定された場所なら、こうやって自分に有利なフィールドを作り出せるのもアイテムボックスの利点だ。
 数秒だが、これでゴブリン達は完全に分断された。
 これで一気に勝負を決める!

「モモ!そっちは任せた!」

「わん!」

 俺とモモは二手に分かれる。
 俺は青果コーナーに固まっていたゴブリン達の方へ。
 モモは見張り役のゴブリンの方へそれぞれ駆け出す。

 流れる様に包丁を取り出し、目の前のゴブリンへ突き刺す。
 三桁まで上がった俺のスピードに、ゴブリンは反応すら出来なかった。

「ギッ……!?」

 倒れる。
 生死を確認してる暇はない。
 残り二匹……。
 『洗濯機』と『冷蔵庫』を取り出し、ゴブリンの頭上へ。
 避ける間もなく二体のゴブリンは家電の下敷きになった。
 普通のゴブリン程度なら、これで動けなくなるのは最初の戦いで実証済みだ。
 これでコイツらの動きは封じた。
 あとは―――。

「―――ギギャアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 刹那―――陳列棚を突き破って、ホブ・ゴブリンがその姿を現した。
 先程までの間抜けな面ではない。
 自分の縄張りを荒らされ怒り狂うモンスターの表情だ。

「悪いが―――真正面から当たる気はねえよ!」

 俺はアイテムボックスから取り出した『それ』を、ホブ・ゴブリンに向けて投げつける。
 当然、ホブ・ゴブリンはそれを手で払い、避けようとした。

 だが、その瞬間、『それ』はパンッ!と音を立てて割れた。

 独特の匂いと共に中の液体が、ホブ・ゴブリンの顔面目掛けて飛び散る。
 ホブ・ゴブリンは一瞬顔をしかめ、直ぐにそれを拭おうとした。
 だが―――

「―――ァ?~~~~~ッッ!!?アアアアアアアアアアアア‼??」

 その瞬間、ホブ・ゴブリンは声にならないような悲鳴を上げた。
 苦悶に呻きながら、顔を覆う。

 そいつは『水風船』って言うんだよ。
 中身はタバスコだ。

 さっき昼飯食べた後に、モモとの打ち合わせの最中に作ったもんだ。
 水と違って、何本もタバスコを入れるのには苦労したが、『器用』が上がってたおかげか、想像通りに作る事が出来た。
 自信作だ。気に入ってくれたか?

「~~ッッ!!ギァァァ!ギアアアアアアアッッ!!」

 ホブ・ゴブリンは痛みからか、何度もタバスコを拭おうとするが、却って逆効果だ。
 タバスコが目に入るとホントに辛いからな。

「悪いが手は緩めないぞ……!」

 顔を押さえながら呻くホブゴブリンだが、不用意には近づかない。
 代わりにその頭上目掛けて、今度は『自販機』を取り出す。
 街を歩いている最中に拝借した物だ。
 某ラノベで、これを投げつけていたバーテンダー風の男を見て以来、ずっと思っていた。
 喉を潤すだけが自販機の性能じゃない。
 そう、自販機とは、人に投げつける凶器なのだ、と。
 その角の部分が脳天に当たる様にセットし―――放つ。

 ゴスン!と鈍い音が鳴った。

 自販機を頭から叩きつけられ、ホブ・ゴブリンは床に倒れ込む。

「アアアアアアアアアアアア!!!アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!」

 ホブ・ゴブリンが悲鳴を上げる。
 頭の半分が潰れていた。……グロイ。 だが、まだ死んではいない。

「……もう一回だ」

 込み上げる吐き気を押さえながら、自販機を収納。
 再び放とうとした瞬間、ホブ・ゴブリンは起き上がろうとした。

「アガッ……ギィィ―――ッ!!?」

 だが、その四肢を『影』が拘束する。

「ナイス、モモ」

 見れば、既にモモは見張り役のゴブリンを倒していた。
 モモはこちらへ近づき、『影』はどんどんと拘束力を増す。
 これでもう避ける事も出来ないな。
 ホブ・ゴブリンは必死の抵抗を試みるが、既に頭が半分潰れた状態だ。
 まともに力も入らないのだろう。

 俺は再びホブ・ゴブリンの頭上に向けて『自販機』を取り出した。
 ぐちゃ、ぐちゃっと。
 その作業を二回ほど繰り返すと、ホブ・ゴブリンは完全に息絶えた。
 足元に青い魔石が転がった。

 あとは消化試合だ。
 俺とモモは動きを封じていた残りのゴブリン達に止めを刺した。

≪経験値を獲得しました≫
≪経験値が一定に達しました≫
≪クドウ カズトのLVが6から7に上がりました≫

 レベルアップを告げる天の声。

 よしっ、よしっ、よしっ……!
 やった、やったぞ!

「やった……勝ったぞ、モモ!俺たちの勝ちだ!」

「わん!」

 ゴブリン七匹に、上位種のホブ・ゴブリン一匹。
 今までの戦績を考えれば、十分すぎる戦果だ。

 勝利の余韻に浸るのも良いが、それはとりあえずポイントを割り振ってからだな。
 それにここにある食料も収納しておきたいし。

「モモ。とりあえず奥の方へ移動するか」

「わん!」

 こうして、生協での戦いは大成功で幕を閉じた。
 だが、浮かれていた俺は気付かなかった。
 今の戦い。
 それを『視ていた者』が居た事に―――。





 その人物は、生協より百メートルほど離れたマンションの屋上に居た。

「凄い……あの数を相手に勝つなんて……」

 スコープから覗くその瞳は、生協での戦いをずっと見つめていた。
 残念ながら、所々は死角になって見えなかったが、それでもあの柴犬が『影』を使ってゴブリンを瞬殺するところと、あの男性がゴブリンの上位種を自販機で圧殺するところははっきりと見た。

「間違いなくレベル持ち……それにレアなスキルも持ってる」

 だが、何より特筆すべきは、あの戦いが始まる前だ。
 あの男性は、自分の『視線』に気付いた。
 いや、正確には違和感を感じた程度だったかもしれないが、それでもこの距離で、それを感じ取れるだけでも驚愕に値する。
 あの時の視線を思い出し、身震いする。
 だがその震えは、恐怖からくるものではない。
 歓喜の震えだ。

「私以外にも、ああいう人が居たんだ……」

 ―――積極的にモンスターを狩ってる人。

 ぽつりと、そう呟き、『彼女』はその場を後にした。
 その肩に、身の丈ほどもある長大なライフルを担ぎながら。
 
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