File.54 幽霊メイドはお邪魔虫
File.54 幽霊メイドはお邪魔虫
今日、僕は告白する。
学年一、いやこの街一の美少女と名高い天城友里さんに告白して、彼女を僕の彼女にするんだ!
『いやー。坊ちゃま。人称代名詞の《彼女》とガールフレンドの《彼女》をかけた今の洒落、真にお見事です!』
いや、違うから! とそう思いながら、僕は自分の頭上――――正確には僕の頭の上を飛び回っている幽霊へと視線を向ける。
文字通りの意味で青白い肌、実際に透き通っている透き通るような瞳、端正なこの世の物ではない顔立ちを備えた、2通りの意味で現実離れしたモデル張りのスタイルを持つ、メイド服を着た幽霊。
この幽霊の名前は、死里有栖と言う、僕の数代前の主に仕えていた(と自称する)メイドの幽霊である。
彼女が見えるようになったのかはいつか分からないが、気付いた時には傍にいた。
『坊ちゃま! さぁ、私に抱き着いて来ても良いんですよ! ヘイ、カモン! カモン、カモン!』
と、窓の外から呼びかけてきた彼女に抱き着こうとして飛び掛かり、窓から落ちたのも良い思い出である。
僕の家族からしたら、そりゃあ焦っただろうけど。
こいつは、僕の事を『坊ちゃま』などと仰々しく呼んでいるが、その実態はメイドの本分から180度離れたグータラな奴である。
『坊ちゃま、テレビ付けて! 朝ドラの再放送を見逃しちゃう!』
『坊ちゃま、そこの窓閉めて貰えません? なんか、寒くて……』
『坊ちゃま、マンガめくって貰えません?』
などなど、とまぁ、こっちの事をまるで下僕かなんかだと勘違いしてそうな雰囲気で話しかけてくるのである。
いや、幽霊だから触れないというのも理由の1つだろうが、それにしたってもう少しこちらをいたわって欲しい。
「え、えっとシオン君?」
(ハッ! しまった、ちょっと昔を思い出してうるうる来ちゃった)
ほら、友里さんが心配そうにしているじゃないか。
いけない、今はダメイド幽霊の事よりも、友里さんの事を考えなければ。
(い、言うんだ! あなたの事が好きだって!)
ゴクリと唾を飲んで決心を固める僕。
こっちの気持ちが伝わったのか、ちょっとばかり緊張した様子の友里さん。
その横で『坊ちゃまってシオンって名前だったんだー。へぇー』と今更なことを呟いているダメイド幽霊。
「ゆ、友里さん!」
「は、はい!」
と、僕はそのまま彼女に自分の思いを、そう熱い思いを伝える!
「僕はあなたの事が『ピー』です! 僕と『ピー』してくれませんか!」
「はい! 私も『ピー』の事が『ピー』です! よろしく『ピー』!」
こうして僕達はお互いに気持ちを伝えて、結ばれるのであった。
『……邪魔したつもりだったのに、どうしてあれで上手くいくんだろう?』
有栖はポワンと頭を捻るのであった。
柊澪さんの『幽霊メイド』のアイデアを受けて、作成しました。