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名門落ちの俺、二流実戦校で成り上がる  作者: ボンゴレ11代目


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第28話 幕引き

大会中止から続いた事件編は、今回でひとまず区切りとなります。

クロウたちは現場を見て関わったものの、あくまで“学生”としての立場に引き戻される形になりました。


ここからは再び学園を舞台にしつつ、少しずつ世界の動きも混ぜていく流れになります。

日常と非日常が交差していく章の始まりです。

夜の港から戻ったあと、ほとんど眠れなかった。


目を閉じれば浮かぶのは、あの倉庫の光景だった。

箱の中の学生。

抜かれていく魔力。


現実感が薄いのに、やけに鮮明に残っている。


「……最悪な夢見そう」


ユウト・セルヴァ が天井を見ながら言う。


「夢じゃないから余計にやばい」


「やめろ」


横で カイト が静かに起き上がった。


「そろそろ動くよ」


窓の外はまだ暗い。


だが王都の一部だけ、妙に騒がしい気配があった。


---


旧港湾区に着いた時には、すでに包囲は完了していた。


王国騎士団。


完全武装。


無言で配置につき、倉庫を取り囲んでいる。


「……本気だな」


俺は小さく呟いた。


昨日の一件が、どれだけ重いものだったか分かる。


「クロウたちは後方」


バルド・グレイン が短く告げる。


「突入は任せろ」


「了解」


正直、前に出たかった。


だがここで勝手に動けば邪魔になるだけだ。


---


静寂が流れる。


誰も動かない。


ただ、時間だけがゆっくり進む。


やがて――


「行け」


短い号令。


次の瞬間、空気が裂けた。


---


「突入!」


扉が破られる。


重い音。


中から怒号。


剣がぶつかる音。


魔法が弾ける光。


戦闘は一瞬で広がり、そして――


一瞬で終わった。


---


「制圧完了!」


「逃走者なし!」


「負傷者軽微!」


報告が飛ぶ。


ユウトが息を吐いた。


「……早すぎだろ」


「相手が悪い」


俺は短く言った。


騎士団が相手なら、こうなる。


---


倉庫の中へ入る。


昨日と同じ場所。


だが、空気が違う。


静かすぎる。


箱は開けられ、倒れている人間が並べられていた。


数はいる。


だが、昨日見たより少ない気がした。


「……こんなもんだったか?」


思わず呟く。


カイトが肩をすくめる。


「全部ここにあったとは限らないでしょ」


「まあな」


深く考えなかった。


---


問題の装置は、ほぼ壊されていた。


外殻は残っている。


だが中身は抜き取られている。


「回収されたな」


バルドが言う。


「突入前に一部持ち出された可能性がある」


「でもこれだけ残ってれば十分だろ」


ユウトが言う。


「証拠にはなる」


「なる」


バルドは短く答えた。


---


拘束された男たちは、すぐに引き出された。


「俺たちは何も知らねえ!」


「ただの運び屋だ!」


「命令されただけだ!」


よくある言い訳。


だが、今回は妙に揃っていた。


誰も逆らわない。


誰も取り乱さない。


ただ、同じことを繰り返している。


「末端だな」


カイトが呟く。


「組織的だ」


---


それでも、話は早かった。


取り調べは簡単に進んだ。


抵抗が少なすぎるくらいだった。


「王都地下の闇組織か」


バルドが低く言う。


「魔力の違法売買を行っている」


ユウトが顔をしかめる。


「人から抜いて売るってことかよ」


「そういうことだ」


---


話が繋がる。


人を攫う。

魔力を抜く。

売る。


シンプルで、最悪な構図だった。


「……クソだな」


俺は吐き捨てた。


だが、どこか納得もしていた。


理由が分かると、逆に落ち着く。


---


倉庫の奥で、兵士が報告する。


「装置の中核部は未発見!」


「逃走前に持ち出された可能性あり!」


バルドが頷く。


「問題ない。ここまで押さえれば十分だ」


その言葉に、少しだけ引っかかった。


だが、深く考えなかった。


---


「これで終わりか」


ユウトが聞く。


「終わりだ」


バルドは即答した。


「組織は壊滅。残党は追う」


「事件は収束だ」


あまりにもはっきりしていた。


迷いがない。


---


俺たちは顔を見合わせた。


終わったらしい。


あっさりと。


昨日あれだけのものを見たのに。


「……こんなもんか」


思わず漏れた言葉に、誰も否定しなかった。


---


その時、倉庫の外から朝日が差し込んできた。


夜が終わる。


それと同時に、この事件も終わったように見えた。


倉庫の外に出ると、朝の光が一気に差し込んできた。


夜の港で感じていた重さは、嘘みたいに薄れている。


騎士たちは淡々と作業を続けていた。


拘束した連中を連行し、証拠品を回収し、現場を封鎖する。


無駄がない。


手慣れている。


「……ほんとに終わったんだな」


ユウト・セルヴァ がぽつりと言う。


「思ったよりあっさり」


「こんなもんだろ」


俺は短く答えた。



バルド・グレイン が戻ってくる。


「聞き取りは終わった」


「どうだった」


「王都地下の闇組織による魔力の違法売買だ」


迷いのない答えだった。


「今回の件もその一環」


それで話はまとまった。


ユウトがため息をつく。


「結局、金かよ」


「大体そういうもんだろ」



回収された物の中に、壊れた装置の一部が運ばれていく。


魔導石の破片。


焼け焦げた金属。


「これで証拠は揃うのか?」


俺が聞くと、近くの兵士が答えた。


「十分だ」


短い返事だった。



「学生はこれ以上関与するな」


バルドが言う。


「本件は王国が引き継ぐ」


「君たちは学園へ戻れ」


それだけで終わりだった。



ユウトが伸びをする。


「なんか、現実に戻された感じだな」


「元から現実だ」


「いや、そうだけどさ」


カイトが静かに言う。


「でも一応、区切りはついた」


「そうだな」


俺も頷いた。



帰りの馬車の中。


窓の外では、王都がいつも通り動き始めている。


店が開き、人が歩き、声が飛び交う。


昨日までと同じ光景だった。



「なあ」


ユウトが言う。


「大会、中止のままだよな」


「当たり前だろ」


「だよなー……」


少しだけ残念そうだった。



カイトが小さくあくびをする。


「とりあえず寝たい」


「それな」


ユウトも同意する。


「今日は絶対昼まで寝る」


「授業あるぞ」


「え?」


一瞬、沈黙。


「……マジ?」


「マジだ」


「鬼かよ」



そんなやり取りをしているうちに、学園が見えてきた。


見慣れた門。


見慣れた建物。


ここに戻ってくると、さっきまでの出来事が少し遠く感じる。



馬車を降りる。


朝の空気。


生徒たちの声。


いつもの日常。


「……戻ってきたな」


ユウトが言う。


「だな」


俺も短く答えた。



あの事件は、終わった。


そういうことになった。


闇組織。

魔力売買。

摘発。


全部説明がつく。


それで十分だった。



校舎へ向かいながら、ふとだけ思う。


「……仕事、早すぎだろ」


ぼそっと漏れる。


カイトが肩をすくめる。


「王国だしね」


ユウトが笑う。


「頼もしすぎて逆に怖いわ」


俺は軽く息を吐いた。


「まあ、片付いたならいいだろ」


それ以上、考えることはなかった。


第28話まで読んでいただきありがとうございます。


今回は“幕引き”というタイトル通り、事件自体は解決した形になっています。

ただ、あくまで表向きの話なので、今後の展開の中で少しずつ見え方が変わっていくかもしれません。


次回からは学園生活に戻りつつ、クロウたちの成長や関係性も進めていく予定です。

少し空気が変わるので、その辺りも楽しんでもらえたら嬉しいです。

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