第22話 中央の怪物 レオ
本戦三日目。
今回はトライ・ブレイクの快進撃と、中央大闘技場で行われる“本物の強豪戦”が中心の回です。
クロウたちが勝ち進む一方で、世界の広さと壁の高さも感じてもらえたら嬉しいです。
本戦三日目。
俺たち トライ・ブレイク は、まだ負けていなかった。
西武闘区第三リング。
東武闘区第二リング。
南演習区特設会場。
目立たない場所を転々としながら、それでも確かに勝ち進んでいた。
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二日目、ヴォルグ帝国 の中堅校。
重装の前衛二枚に押し込まれ、ユウトの補助が切れかける中、カイトが崩しで流れを変えた。
三日目午前、セレス魔導共和国 の術式特化校。
遠距離制圧に苦しめられたが、俺が無理やり間合いを潰して勝った。
楽な試合は、一つもなかった。
「……地味にしんどい」
ユウト・セルヴァ がベンチで倒れ込む。
「派手にしんどいだろ」
「俺の魔力が毎日すり減ってる……」
横で カイト が水を飲みながら言う。
「でも勝ってる」
「それはそう」
「じゃあ文句言うな」
「お前ちょっと最近冷たくない!?」
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午後。
珍しく試合間隔が空いた。
掲示板を見ると、次戦まで時間がある。
その代わり、中央大闘技場で注目カードが組まれていた。
『王立武術大学附属学院代表
ブラッドフォード家
vs
ルミナ教皇国 筆頭代表
聖堂騎士学園』
ユウトの目が輝く。
「行こうぜ!」
「次戦に響くぞ」
「勉強だよ勉強!」
カイトが頷いた。
「中央の椅子、柔らかそう」
「お前ら理由が雑すぎる」
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## 中央大闘技場
埋まっていた。
何万人いるのか分からない観客席。
歓声、熱気、ざわめき。
サブ会場とは空気が違う。
ここだけ別世界だった。
「うわ……」
ユウトがまた語彙を失っている。
「お前、今日ずっと同じ反応だな」
「仕方ないだろ!」
俺たちは上段席へ座った。
リングでは、すでに両チームが整列していた。
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## ルミナ教皇国の誇り
聖堂騎士学園 。
白銀の制服に、金の刺繍。
姿勢は真っ直ぐで、礼も美しい。
先頭の槍使いが静かに祈りを捧げる。
「ちゃんとしてるな」
ユウトが感心する。
「騎士って感じ」
周囲から、ひそひそ声が聞こえた。
「昔はルミナも本当に強かったんだがな……」
「帝国戦で負けてからだよ」
「Sランク武器も奪われたって話だろ?」
「税も上がったし、人材流出も酷いらしい」
「最近は教会内部も荒れてるって聞く」
俺は黙って聞いていた。
その時、通路側に視線を向けると、エリシア・ノヴァ が立っていた。
腕を組み、無言でリングを見ている。
表情は読めない。
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## 王立附属学院
歓声が一段大きくなる。
ブラッドフォード家 。
中央に レオ・ブラッドフォード 。
左右には分家の護衛二人。
細身の青年と、無表情の女。
三人とも表情がほとんど動かない。
「なんかもう試合前から勝ってる雰囲気あるな……」
ユウトが引いていた。
レオは相手を見てもいない。
審判だけを見ている。
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## 開始
鐘が鳴る。
同時に、聖堂騎士学園の後衛二人が巨大な光陣を展開した。
神聖結界。
リング半分を覆う防御術式。
観客席がざわつく。
「すげえ……」
ユウトが息を呑む。
前衛の槍使いが加速。
一直線にレオへ突っ込む。
鋭い。
速い。
強い。
学園リーグなら、間違いなく主役級だ。
だが――
レオは半歩だけ動いた。
槍先が空を切る。
そのまま柄を掴み、横へ流す。
槍使いの体勢が崩れる。
次の瞬間、腹へ一撃。
鈍い音。
槍使いが吹き飛んだ。
「は?」
ユウトが固まる。
一撃だった。
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## 崩壊
後衛二人が慌てて追加術式を展開する。
光弾の雨。
だがレオの左右にいた護衛二人が同時に補助魔法を発動した。
速度上昇。
耐性上昇。
軌道予測。
レオの姿がぶれる。
気づけば、もう後衛の目の前だった。
剣の腹で一人を打ち倒し、返しの蹴りでもう一人を沈める。
まだ剣を抜いていない。
会場が静まり返る。
「……終わり?」
カイトが呟く。
「まだ一分経ってねえぞ」
俺も信じられなかった。
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## 演出
最後に立ち上がった槍使いが、叫びながら突っ込む。
誇りを捨てていない目だった。
レオは初めて剣を抜いた。
白い刃。
観客が総立ちになる。
「あれが……」
ユウトが震える。
Aランク武器。
レオは片手で軽く振った。
それだけだった。
巨大な斬撃が、リング中央から外周へ向かって扇状に走る。
床石が裂け、空気が震え、観客席まで風圧が届いた。
槍使いは衝撃で吹き飛び、場外へ転がる。
数秒、誰も声を出せなかった。
やがて遅れて、爆発のような歓声が起こる。
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## 無関心
レオは剣を納めた。
汗一つかいていない。
審判が勝利を宣言する前に、もう背を向けて歩き出す。
護衛二人も無言で続いた。
「……次は?」
去り際、レオがそう言った気がした。
それだけだった。
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## 遠さ
観客席は熱狂している。
俺たちのいたサブ会場とは、同じ大会と思えない。
ユウトが乾いた笑いを漏らす。
「勝てる気しねえ……」
カイトが立ち上がる。
「眠気飛んだ」
珍しいことを言う。
俺は拳を握っていた。
悔しい。
これがトップ、、、
だがあれほど遠いなら、追う価値がある。
今回も読んでいただきありがとうございます!
第22話は、トライ・ブレイクが着実に勝ち進む裏で、中央大闘技場に立つ本物の怪物――レオ・ブラッドフォードの実力が描かれる回でした。
サブ会場で積み上げるクロウたちと、最初から中央で圧倒するレオ。
同じ大会の中にありながら、その差はまだ大きいです。
ですが、その差を見て折れるのではなく、“追う価値がある”と感じたクロウにとって、この試合は大きな意味を持つ回でもありました。
また、ルミナ教皇国の現状や、エリシアの複雑な立場も少しずつ見え始めています。
ここから無名チームがどこまで食い込めるのか、引き続き楽しんでいただけたら嬉しいです!
ブックマークや評価、感想もいつも励みになっています。
次回もよろしくお願いします!




