↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
33/33

閑話 四 国屋礼嗣の憂鬱

 時間は黄泉平坂の調査から戻ったところに遡る。本部に戻った国屋は眼鏡を外して、椅子にもたれかかって座った。眉間を揉みほぐしながら考える。


(――江角にはああ言ったけど、今回のは結構きつかったな……)


 国屋の眼鏡は補助である。


 ただし、見る力を強化するのではなく、弱体化させるものであり、国屋を守るためのものだ。周囲にはあえて見る力を強化するものだと告げているが。


 その眼鏡を通して見ても、今回の地獄からの使者は相当強力だった。かつては名のある武者だったとすぐに推察できるほどであり、江角の首が無事だったのはまさに紙一重、皮一枚でなんとかつながったようなものだ。国屋は素直に江角の悪運が強いことに感心していた。


「いやあ面白い子が入ってきてくれたもんだ」


 口はよくなさそうだが、上下関係には厳しく、運動能力も高い。警察官としての適性もあり、生活安全課に所属していたことから市民の生活にも寄り添える。適性がなさそうであれば、春の異動で元の部署に返すつもりだったが、すっかりその気はなくなっていた。


「国屋さん、すごくだらしない顔してますよ」


 呆れたように言う上乃木に「多少はいいじゃない。ここには僕と上乃木しかいないんだし」と国屋は言い返す。上乃木は国屋の眼鏡の本来の力を知っている数少ない職員だ。


「体調はもういいんですか」


「ああ、うん。少し休んだから大丈夫。元々僕はタフなんだよ」


「それはよく存じていますが」


 普通は人間に似せた式神を二体作ればそれなりに消耗する。片方は国屋自身であるため問題ないが、もう片方は江角を模しており――他人を模したものを作るのは骨が折れるのである。


「ただで、というわけにはいかない技術でしょう。本当に大丈夫ですか」


「確実に寿命は削れてると思うよ。突然死したらごめんね」


「それをそんなに軽く私に謝られても困ります」


 ちゃんと皆さんにも伝えておいた方がいいんじゃないですか、と言った上乃木に国屋は「まあ人はいずれ死ぬし、いいんじゃないかな」と返した。


「そうですかね」


 江角はこの話を聞いたら怒るんじゃないですか、と上乃木は言う。国屋は笑って「どうかな」と返した。


 ――自分の命でなんとかなることなら安いものじゃないか。


 そんな考えが、国屋の根底にはずっとある。本心からそう思っているのだ。


 その考えを見透かしたかのように上乃木は言う。


「せめて、誰かを近くに置いてください」


「……考えておく」


「考える気がない発言はやめてくださいね」


 UPIの職員は皆、優しい。しかし、時々その優しさが国屋には重たい。


(みんな、僕に対して優しくていやになっちゃうねえ)




 傍若無人な上司なんて、適当に煙たがって反発だけしてくれればいいのに。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。