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おじーちゃん、『姫プレイ』なう!?  作者: 堀〇
第三章 初イベントにて全プレイヤーに栄冠を示せ!
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クエスト64 おじーちゃん、達成報酬『天職のすゝめ』を使ってみたら……あ

 〈職〉のレベル合計200以上達成で貰った報酬アイテム――『天職のすゝめ』。


 このアイテムを使用すると、幾つかの〈職〉の名前が羅列されたリストに載っているなかから1つ、『転職条件を無視して就くことができる』ようで。そのリストにあったものが、これまで見たことのないものばかりだったことも併せて、おそらく『天職のすゝめ』を用いて就ける〈職〉は、そのすべてが上位の――運営の言葉で言うなら『ランク3の〈職〉』ということなのだろう。


 そして、このアイテムの入手自体は現実世界の13時過ぎには出来てはいた。……が、すぐさま目に付いた〈職〉の1つに就こうとして、[『職歴』の容量が不足しています]という警告文インフォメーションを見て、いったん使用を辞め。


 この時点で、すでに〈運び屋〉がレベルの上限であった30に到達しており。これをどうするかについて保留していたわけじゃが……とりあえず、ダメもとで『資格アビリティ化』を選択。


 もっとも、【スキル】のレベルが30に到達した際に出現する選択肢と同じように、おそらく片方は上位の職――これも運営の言葉を借りるのなら、『ランク2の職』とでも呼ぶべきか? ――に、変化させるものだろう、と。そして、それは名称的に『昇格ビルドアップ』の方だろう、と予想したうえで『資格アビリティ化』を選択したわけじゃが……結果、≪ステータス≫に『資格』の項が追加され。そこに【運び屋・壱】の名が刻まれた。


 そして、この【運び屋・壱】を【慧眼】で視たところ、『装備可能な重量とインベントリの容量増化』という〈運び屋〉の『副次効果』が表示されたことから、おそらく『資格アビリティ化』した〈職〉の『副次効果』を常時得られるようになったのじゃろう、と。


 加えて、『〈職〉のレベル合計200以上達成』と同時に『〈職〉と【スキル】の両方で合計レベル200以上達成』の報酬として得た称号【武芸百般を極めし者】――なお、この称号を得るのと同時に【武芸百般を修めし者】は消えた――の効果で[この『資格アビリティ』を無効化しますか? YES ・ NO]が出現したことには驚いたが。この称号【武芸百般を極めし者】の効果というのが、



〇 称号【武芸百般を極めし者】


取得条件:〈職〉と【スキル】の合計レベル200以上を両方とも達成。

効果:『職歴』の登録可能数、及び『控えスキル』の総数プラス5。また、資格・固有技能・スキルのON・OFFが可能になる。



 ――と、このような感じで。称号が上書きされた時点でわかってはいたが、どうやら称号【武芸百般を極めし者】は【武芸百般を修めし者】の完全上位互換のようじゃった。


 そして、試しに『固有技能スペリオル化』した【暗視】を『OFF』にすれば、真っ暗闇では何も見えない状態となり。『資格アビリティ化』した【運び屋・壱】を『OFF』にすれば、その効果で増えていたインベントリの容量が減るという、これだけであれば大したことのない効果じゃったろうが、『控えスキル』を含めてすべて、『OFF』にできるものを『OFF』にした状態で戦闘したところ、




 ――二つ目の【槌術】を、得た。




 そのときはちょうど両手にヌンチャクを持って【槌術】と【二刀流】のレベル上げをしていたときで。『お試し』のつもりで、そのまま戦闘をしてみたわけじゃが……まさか【槌術Lv.29】があるのにも関わらず【槌術Lv.1】を新しく取得できるとは思わなかった。


 加えて、もろもろ検証してみた結果。称号【武芸百般を極めし者】の効果で『OFF』にすれば、たとえ『複合スキル』があろうと、その取得条件となった【スキル】を再取得可能だということがわかり。あるいは、いったん『固有技能化』としてしまったものをあらためて『上位ランクアップ化』させたり、『複合スキル』を『固有技能化』させた後でもその取得条件となった【スキル】のレベル上げができそうで、有用と言えば有用な効果じゃろう。


 ちなみに、新しく得た【槌術Lv.1】じゃが、すべてを『ON』に戻すと[同じスキルがステータス上に2つ存在します。統合しますか? YES ・ NO]という選択肢ウィンドウが現れ、『YES』とコマンドしたら――消えた。


 おそらくは経験値に還元されて【槌術Lv.29】に含まれたのじゃろうが……なんにせよ、同【スキル】を大量に取得する、といった手段が採れるようになったことで以後の【スキル】の合計レベルを狙う際には大変役立ちそうで、良かった、良かった。


 ……もっとも。残念なことに『【スキル】の合計レベル400以上達成』を目指している時点では取得可能な【スキル】に大して空きが無く。同じ低レベルの【スキル】を大量に所持して、といった手段は採れんかったわけじゃが。


 とにかく。『資格アビリティ化』が予想通り『「職歴」に空きを作るためのもの』であったため、あらためて『天職のすゝめ』を使用することに。


 その結果、今度は『「職歴」の容量不足』を告げる警告文インフォメーションが出ず。同時に『ランク3の〈職〉』が『職歴』に記録できる〈職〉3つぶんの容量を必要とすることが判明、と。それはさておき、今度は[現在のAFOの仕様上、ランク3の職に就きましても職のレベル上限は50までとなっております]という警告文インフォメーションとともに『それでも転職しますか?』といった内容の選択肢ウィンドウが出たので、AFOの諸々の仕様についてある程度察せられたが――今度こそは、という思いもあったので今回は『天職のすゝめ』の使用を断行。


 果たして、儂は『天職のすゝめ』を使って就くことのできる〈職〉のなかで最も心惹かれた『ランク3の〈職〉』――




〈勇者〉に、転職した。




 その結果。同時に、プレイヤーすべてに向けて発信されたのだろう、『誰かがランク3の〈職〉に就いたので、運営から告知があります』といった内容のインフォメーションが流れ。せっかく苦労して就いた〈勇者〉に対する喜びや感慨といった感情のまえに「あ、これ、志保ちゃんに怒られるパターンじゃ」という『やってしまった感』に包まれたのがなんともはや……。


 ともあれ。今回の『全世界ワールド・一斉告知アナウンス』に対していち早く儂の仕業だろうと思ってメッセージを寄越してきたダイチくんほか『ヒーローズ』の面々には『〈職〉のレベル合計200以上達成』の報酬と、『天職のすゝめ』で就けるようになるリストを送り。嘉穂ちゃんにまで「もしかして、ミナセちゃん?」というメッセージを頂戴したが、これには念入りに口止めをしたうえで同じく返答。


 ……そして、ある程度時間が経ってじゃが、わざわざ外部の通信端末から確認をすっ飛ばして「なにをしてくれてるんですか!?」という枕詞をつけてメッセージを送ってきた我らが自慢の情報通少女には、そのあと少し試して判明した〈勇者〉の仕様に関しての報告書とともに、儂としてもまさか全プレイヤーに対してインフォメーションが流れるとは思わんかった旨をしっかりと明記。しばらくはダンジョン外で〈勇者〉に就いたりはしない、と告げてどうにか事なきを得たが……いやはや、まったく。運営もやってくれるのぅ。


 もっとも、運営が全プレイヤーに告知しただけあり、彼らから送られたメッセージを読めば儂がすでに知っていた『〈職〉の最大レベルは50』以外にも現在のAFOの仕様では素体レベルと【スキル】のレベルも最大値が50まで、という情報まで明記されており。つまりは逆説的に、〈勇者〉以外の〈職〉と、おそらくは『上位ランクアップ化』させた【スキル】――こちらも運営に倣えば『ランク2の【スキル】』か――のレベルが50までは上げられることが判明。総合レベルも100まで上げられることがわかったわけじゃが、それはさておき。


 念願かなって、というほどの苦労も年月も掛かってはおらんが……とにかく、可能なら転職してみたかった、儂の選んだ『ランク3の〈職〉』――〈勇者〉について。


 とりあえず、【慧眼】で読み取れた『副次効果』は大きく3つあり。まず1つ目が、『カルマ』の値が高い相手に対して攻撃力が上昇。2つ目に『カルマ』の値が高い相手からの敵意ヘイトを集めやすくなる。そして、3つ目が光属性の攻撃や魔法の威力と効果を上げる、というもので。


 つまりは『カルマ』の高い相手――頭上の三角錐シンボルが赤いモンスターやPK連中との戦闘が有利になり、勝手に注意を引きやすくなったうえに『光属性の攻撃力と効果上昇』、と。現状、光属性の特徴のついた武装を持っていないゆえ、3つ目の『副次効果』は腐っているが、こと、今回のイベントやアーテーのダンジョンでのレベル上げには有用だろう効果なのは間違いなく。


 また、同じく【慧眼】で視れた『転職条件:ランク2の職のレベル上限に達したとき、「モラル」の値が100万以上、「カルマ」の値が0の場合、転職可能』という条件それが、どれだけ難しいのかは『モラル』の数値を視れん儂にはわからんが……とにかく、〈勇者〉という〈職〉と『副次効果』がとても素晴らしいものであり。せっかく転職できたのだから、と早急に『職歴』に〈勇者〉を加えようと、さっそくレベル上げをすることに。


 ……先の警告文インフォメーションを見るに、〈勇者〉は少なくともレベル50まで上げられるのが確定で。しばらく表舞台で就いたままにはしておけんが、それはさておき。とりあえず、『レベル15開始ダンジョン』の1階にて、『副職』に〈神官〉を設定し、『スキル設定』を【強化:筋力】、【看破】、【回復魔法】、【慧眼】、【槌術】、【忍び足・弐】にして――この時点で〈職〉のレベル30到達で設定可能数が7つあり、【スキル】の合計400以上も達成していたので【暗視】ほか幾つかの【スキル】は『固有技能スペリオル化』していたのでセットしていない――レベル15のスケルトン相手にすこし暴れ回ることにしたが……〈勇者〉のレベルが、思いのほか上げ難いことが判明。


 それも『経験値の取得条件が限定的で時間がかかる』タイプの難しさではなく。単純にレベルを1つ上げるまでに必要とする経験値が多いというタイプのもので。ほかの〈斥候〉や〈神官〉などであればレベル15のモンスターを1体倒すだけでレベル0から1に上げられるじゃろうが、〈勇者〉の場合は5体撃破してようやくレベル1となり。


 もしかしたら上位の〈職〉は、すべて『レベルアップに必要な経験値が多い』のかも知れん、と。確認の意味もあって志保ちゃんに〈勇者〉の仕様についての報告がてら訊ねたところ、後日、たしかに〈職〉を『昇格ビルドアップ』させたプレイヤーの書き込みにはそうした『必要経験値の増加』に関するものが多くあった、という返信を頂戴することに。


 さらには、『昇格』によって転職した場合、『職歴』の容量を2つ消費することも教えてもらい。運営の告知から、この手の『職歴』の容量をどれだけ必要とするかを〈職〉のランク付けとして利用し、以後は最初から就けるような『職歴』の容量を1つしか埋めない〈職〉を『ランク1の職』と呼び。『天職のすゝめ』を使用して就ける『職歴』の容量を3つ占有してしまう〈勇者〉などを『ランク3の職』。『昇格』させることによって『職歴』の容量を2つ埋めることになる〈職〉を『ランク2の職』と呼称することに≪掲示板≫などでもなったそうじゃが……さておき。


 現状、『副職』に設定しておくだけでも十分な〈勇者〉をこれ以上レベル上げする必要性を感じられず。それ以前に、一刻も早く〈勇者〉や〈戦士〉以外の〈職〉をレベル30まで上げて『資格アビリティ化』しなければ『職歴』が埋まってしまっておるからの。ほかの新しい『ランク1の職』に就くことはおろか『ランク2の職』に『昇格ビルドアップ』させることも出来ない儂は、ある程度、志保ちゃんへの報告も済んだ段階で、またボスモンスターの居る最上階――ちぃお姉ちゃんからのメッセージに曰く、30階が『アーテー北の迷宮』のボス部屋という話じゃった――の一歩手前である、29階を中心にレベル上げを行うことにして。


 果たして、現実世界の15時までを各種レベル上げに費やし。1時間のログアウト休憩を挟んだうえで再びログインするも……残念ながら、美晴ちゃんと志保ちゃんの二人は称号【闇の妖精に好かれし者】取得に今すこし時間がかかるとして16時ちょうどの合流はかなわず。


 代わりに――というわけではないが、今日明日のイベント2日間だけ習い事を休めたらしいローズと二人、彼女からの提案――というより、クラン『薔薇園の(ローズガーデン・)守護騎士キーパー』の要望として、常夜の廃都アーテー中央にあるという、『イベントボス』と戦えるフィールドに転移可能な転移結晶まで行き。できれば今回のイベントの最終目標だろうボスモンスターの情報収集を手伝って欲しい、と言われ。


 ほとほと今回のイベントは真紅の巻き髪令嬢と組むことになるな、と思わないでもないが……そう言えば、『チュートリアル』にも『イベントボスを討伐せよ!』というのがあったな、と。いやはや、途中からダンジョンの攻略とレベル上げのことしか頭に無かったが、一度ぐらい『イベントボス』とやらの顔を拝んでおくか、と思って要望これを受諾。


 ゆえに――……はて? ログインと同時に『フレンドリスト』を確認して見たが、狐耳令嬢はまだログインしていない?


 ……ふむ。とりあえずローズには『ログインしたら連絡をくれ』とメッセージしておくとして。ログアウト休憩を挟むまえにもろもろの準備を終わらせておったからな、いつもの暇つぶし――【調薬】をする用の『薬草』が今は無い。


 ゆえに……う~む。あらためて自身のこれまでを鑑みるに、なかなかどうして【調薬】をがんばり過ぎているような気もするのぅ。


 それと言うのも、〈薬師〉のレベル上げはもちろん、『職歴』にある最低レベルの底上げとして〈魔法使い〉のレベルも上げようとしたからで。やはり物理攻撃のような特に消費の必要の無い攻撃とは違い、魔法は、『ドワーフ』の種族特性として初期の魔力値が低いこともあってか思いのほかMPとアイテムの消費が多く。どうしても割に合わないように思われ、顔をしかめたくなったりもしたが……そこはそれ、一戦ごとにしっかりと休養し、MP回復に努めるようにすれば良いだけで。本来、そこまで消費がかさむことも無かったのじゃろうが……【調薬】と〈薬師〉のレベル上げのためにポーション造りを精力的に行い。MPが減ったら躊躇なく『MP回復ポーション』を消費し、〈治療師〉のレベル上げのためにも、と連戦することが多かったせいなんじゃがの。


 加えて、『薬草』自体の値段は1袋50Gと安価なので1体撃破ごとに100Gの『魔石』を落とすダンジョンだと十分金銭的には問題ない――と、アイギパンで再会した嘉穂ちゃんなどに言えば、「『薬草』をそんなに買うとか、なにそれありえない!」だそうで。


 聞けば、草むらなどの植物由来のオブジェクトを破壊し続けることで経験値を得られる〈樵〉に就き、取得できる【採取】という【スキル】があれば、それをセットして『草刈り』に勤しむだけでレベル上げついでに『薬草』などポンポン手に入るそうで。「『薬草』は売るもの、使うもの」なんだとか。


 もっとも。嘉穂ちゃんのようにアイギパンを拠点に『草刈り』に励む間があれば、今は少しでも長くダンジョンに籠っていた方が効率的であり。【調薬】するのにも作業時間や消費するMPなどの関係でどうしても時間をとられてしまう以上、やはり1袋50Gを大量買いの方が儂の場合は安上がりに思えるのじゃが、それはさておき。


 今また暇つぶしがてら【調薬】をするためアイギパンまで『薬草』を買いに行く――まえに、今回はログイン状態の嘉穂ちゃんに『薬草』が余っていたら買い取る旨をメッセージで訊いてみることに。


 果たして、今なお白黒のメイド服を纏って歩き回っているだろう黒髪褐色肌の猫耳幼女は「残念、嘉穂は山へ芝刈りに行ってしまいましたとさ」という枕詞から始まった『今はNPC冒険者と組んで〈樵〉になって材木の伐採とその運搬依頼をしている』という内容に「ごめんなさい」という言葉で締められたメッセージをくれたので、「別に気にしないでも良い。依頼、がんばって」という旨の返信をしておく。


 で、こうなると。目的地である『イベントボス』のもとへと転移可能な場所までの案内役だったローズを待つ間、いつものごとくアイギパンの『薬屋』で『薬草』を買い、ダンジョン内で【調薬】を――というのも悪くはないが、今回はちょっと趣向を変え。アキサカくんのところに相談がてら、海辺の街キルケーにある、知る人ぞ知る名店――『運☆命☆堂』へと向かうことに。


 それに先だって、現在の魔法戦スタイルがどうにもMP消費過多で回復アイテムの消費が多いうえに物理戦闘との兼ね合いが微妙だという旨と、何か改善案ないし装備のあてはないかを訊き。末尾に「今から向かって大丈夫か?」と確認すれば、さきの相談にだろう「こんなこともあろうかと!」という台詞から入った、文章だけでなら明朗快活な彼の言葉を要約するに、儂の希望する武装にあてがある、と。そして、「いつでもどうぞ」という言葉に従ってさっそく移動しつつ、ローズには『運☆命☆堂』にて諸々の準備をしている、といった内容のメッセージを送って。


「……しかし、前回、店内ここにあるもの全部を『視て』周ったときには、儂の欲する『MP回復ポーションの消費過多の現状打破と物理戦闘との両立』に役立ちそうな装備など無かったように思えたのじゃがのぅ」


 などと人知れず呟き、首を傾げながら。まずは冒険者ギルドへと行き、預けておいた素材アイテムを幾つか引き出し。それから、相も変わらず『CLOSED』の看板かざりがかけられている『運☆命☆堂』に到着するや、今回はどうせ開いているのは知っているので「おーい、アキサカくんは居るかー?」と声をかけつつ、さっさと店内に入ることに。


 果たして、店主による一連の『お約束』――ハイテンションの出迎えからのジャンピング土下座拝み――を軽くスルーして。さっそく、本題である『とっておき』とやらを訊ねれば、


「こ、こここ、これ! こ、この『混沌大鎌カオス・デスサイズ』とか、み、ミナセたんのご希望に添えるのではないかと……!!」


 2メートルを超す長身に左右で色の違うアフロ頭に星の形のサングラスという、常人からすれば奇妙奇天烈に見えるじゃろう外見の彼が引っ張り出してきたのは、とある作品にて死神少女ヒロインが使っていた『魔法の杖』で。製作者の拘りと製品概要スペックについてを聞きつつ【慧眼】をセットして『視た』ところ、要は『この武器でモンスターを倒すとMPが僅かに回復する』効果を付与された『斧』と『杖』に分類される武装のようで。つまりは、『魔法で減ったMPを、大鎌これでトドメをさすことで回復しよう』ということらしい。


 加えて、別段訊いたわけではないが、勝手にこれを造るに至った経緯を語ったアキサカくんの言によれば、この『混沌大鎌カオス・デスサイズ』の素材には『アーテー北の迷宮』の40レベル以上が出現する階層に、極稀に現れる稀少ユニーク・個体モンスターの『スケルトン・ソーサラー』から手に入る『闇の魔石』が使われているようで。


 曰く、この『混沌大鎌』の特徴と同じように、『闇の魔石』を素材として作成された武装には『一定条件でMPを回復』の特徴こうかを付与できるのだそうで。今はまだ≪マーケット≫にも出回っていないレア中のレアな素材である『闇の魔石』を、以前に儂が流した大量の『魚人フィッシャーマンの死骸』を使って作った『水場に対応した防具』を売って手に入れた金貨で知り合いから仕入れられた、と感謝されたが……ほほぅ。あの魔法を使う骸骨スケルトンからのドロップアイテムに、こんな利用法があったのか。


「い、いや~、最近は洞窟奥の迷宮に挑むためなのか、こ、この手の装備を注文されることが、お、多くなっていて! あ、ああ、あの、たくさんの『魚人の死骸』は、ほ、本当に、ありが――」


「ときに、アキサカくん」


 なにやら感涙に咽び泣き、拝みながら感謝の言葉を零している店主の言葉をそっと呼びかけて遮り。『トレード機能』でもって件の『市場マーケットにもまったく流れてこない希少品』らしい『闇の魔石』を3つほど提示し、にっこり。「もしかして、これを更に『強化』などで混ぜれば、MPの回復量が上がったりはせんか?」と停止フリーズ中のアキサカくんに訊ねれば、彼は顎を落とさんばかりに大口を開け。そのまま滑稽な顔を素早く、何度も上下させるのであった。



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