数千年前の出来事
「ホントに目覚めて良かったよー、ラミス、タニー」
「わたしにはそんなに眠ってた自覚ないんだけどなぁ」
「どちらかと言うと、ザンの方が深い眠りについていたと記憶しているのですが」
一頻り抱き締め合った、ザンとラミスとタニーは落ち着いてソファに座りながら離し始めた。
ザンの隣にはスフィもいる。
広場の集会には出ず屋敷で待機してもらっていたスフィだったが、ザンたちが騒いでいるのを聞きつけたのか降りてきたのだ。
また抱き締め合いが始まるのかと思ったが、そこはスフィのデフォルト力。
ラミスとタニーを見るなり、一人で頷いて部屋に戻ろうとした。
踵を返したところで、ザンが首根っこを掴まなければ本当に帰っていたところだろう。
「それで、ザン。ここはどこなの?」
談話していた精霊たちだが、目覚めてから疑問に思っていた事を口にするラミス。
「ここは、わたしたちが降り立った大陸にできた帝国で、この家はその軍将さんの屋敷だよ」
「そうなのですか。一人で眠りについたのは最後の記憶として覚えているのですが、いつの間に移動したのですか?」
「……封印が解かれた事、覚えてないのか?」
精霊たちの談話を邪魔しないように静かにしていたノブナガだが、タニーの言葉につい声を出してしまった。
その声に、タニーはノブナガに視線を向ける。
なぜかはわからないが、その目には敵意とまではいかない嫌悪が宿っていた。
「覚えていないとはどういう事ですか?というか、封印が解かれたですって?」
ザンたちと話している時と違い、棘のような声でノブナガにいうタニー。
嫌っているのを隠しもせず示してくるタニーに、ノブナガは内心動揺する。
『ざ、ザン……俺、タニーに何かしたっけ……』
ザンに念話で相談する程に動揺していらっしゃるらしい。
『あー、別にノブちゃんは悪くないよ?タニーは……なんて言うか、男の人が生理的に無理らしいんだよねー』
『生理的に無理、って。そこは男性恐怖症とかじゃないのか?普通』
『恐怖症ではないかなぁ。言うなれば、男性嫌悪症だよ』
『そっちの方がタチ悪いな』
『だね』
なんてやり取りを念話でしつつ、ノブナガは口元が引き攣らないように注意しながらこれまでの事を話した。
3年前、この人間界に“魔王”が送り込まれた事。
4つのダンジョンの封印が解かれた事。
“魔王”サランの悪足掻きで日食が起こり、“魔神”が時空の歪みからやって来た事。
さらに言えば、その“魔神”が、“精霊神”ハバキが転生した姿だという事も。
「あのハバキ様が……」
「転生……俄には信じ難い事ですね」
「信じられない事かもしれないが、本当だ」
未だにノブナガの言葉が信じられないのか、ラミスとタニーがザンへと視線を向ける。
その視線を受け、ザンは真剣な表情で頷く。
「うん、本当だよ」
「そう、なんだ……」
ザンが頷く姿に、ラミスはそう呟く事しか出来なかった。
タニーの方はショックが大きかったのか、俯いて表情を隠していた。
その反応を見ると、ハバキがどんなに慕われていたのかを思い知らされるノブナガ。
しばらく、暗い空気が流れるが、意を決したようにタニーが口を開く。
「では、今度こそ、あの時成そうとした事を実行する時です」
「あの時成そうとした事?」
「ザンから聞いていないのですか?」
まだちょっとだけ鋭い視線でノブナガに問いかけるタニー。
ノブナガが首を傾げると、タニーは視線をスライドさせてザンとスフィに向ける。
「貴女たち、あの時の作戦について話していないのですか?」
そう問うたタニーの言葉に、ザンは逃げるように顔を晒した。
スフィはデフォルト顔で見つめ返しているが、ノブナガはザンのわかりやすい反応に眉を顰める。
そこで、そう言えばと思い出す事がある。
この帝都に来る前、儀術式についてスフィから説明された時の事だ。
スフィが『儀術式の為に人間界に来た』と言い、首を傾げたノブナガがザンに通訳を願ったのだが、その時ザンは伝える事を拒否した。
言葉で拒否したわけではないが、言いにくそうにしていたのは間違いない。
「貴方は、当時の作戦についてはどこまで知っているのですか?」
「……実際どうしたかまでは知らないが、大まかな作戦の流れは知ってる。ザンたち精霊が力を貸して魔王を倒し、再発しないように儀術式で封印した。そうだろ?」
ザンとスフィから聞いた話を随分と簡略化しているが、間違ってはいない。
ザンと当時の“剣聖”が魔王を倒し、4人の精霊が儀術式の魔力を強化する役割を担って封印された。
大まかにではあるが、あっている。
ザンたちから聞いた話をまとめたら、だ。
「それはわたしたちが成すはずだったものではありません。それは結果的なものです」
「結果的なもの?つまり、作戦は違ったのか?」
「はい。最後は同じです。ですが、最初の部分が違います。わたしたちの作戦では、『魔王を倒す』なんてなかったんです」
タニーの言葉に、ノブナガは目を点にした。
言っている事がわからなかったからだ。
いや、言っている事はわかっている。
でも、理解が追いついてこないのだ。
「当時の魔王はそれなりに強大な力を持っていました。わたしたちが加勢しようにも、人間族の力が弱過ぎたんです。現実的に捉えたハバキ様と“人神”は、特殊な魔法を操る事ができる天紋に目を向けました」
「ーー……“聖女”か?」
呟くように口にしたノブナガ。
それにコクリと頷くタニー。
タニーの言葉で、嫌な予感を感じ取ったノブナガ。
なんとも言えない危機が迫ってくるような、そんな予感。
そんなノブナガを余所に、タニーの話は続く。
「“聖女”だけが扱える魔法を使い、世界を『魔族が人間界に渡ってくる』よりも前にまで巻き戻そうと決めたのです」
これが、ノブナガが知っていた作戦とは違うところ。
『魔王を倒す』ではなく、『魔族が来る前にまで世界を巻き戻す』というのが正しい作戦だったらしい。
魔王が倒されたというのが絶対条件としてあったせいで、まったく疑念を抱かなかった。
「出来るのか?“再成魔法”に、世界を巻き戻すほどの力があるのか?」
「ありません。そもそも世界を対象にする事が出来ず、魔法自体にもそれほどの力がない事がわかったそうです」
「じゃあ、どうやって世界を巻き戻すつもりだったんだ?」
「スフィだよ」
当然の疑問に答えたのは、タニーではない。
ノブナガの隣に座る、ザンだった。
驚いたようにザンを見ると、ザンの顔は覚悟が決まったように真剣なものになっていた。
どうやら、話す決心ができたみたいだ。
「通力で魔法を強化して、更にスフィの“精霊眼”を使ってで世界を対象にする。それで、ようやく世界を巻き戻す事が出来るの」
「でも、しなかったんだろ?なんで」
「当時、人間族に唯一1人だけ、“聖女”の天紋を持つ子が居たんだけど……まだ9歳の女の子だったんだ」
“聖女”は上級紋という事で出現率は低いのだが、女性にしか発現しないので拍車がかかっているのだ。
現に、エリーナの前に存在していた“聖女”は、歴史を漁らなくては見つける事ができない。
当時、1人でも居たのが奇跡なぐらいだ。
「当時はレベルなんてものが存在している事すら、人間族は知らなかったの。だから、まだ9歳の女の子のレベルは1だった」
「再成魔法を習得するレベルはわからないけど、レベルを上げれば自ずと習得できる。って、わたしたちは思ってたんだけど……」
「9歳の子供は、戦いを拒んだのです」
ザンの説明にラミスとタニーも加わる。
確かに、考え方としては尤もだと思う。
だが、9歳の子供に戦いを強いるなんて道理に反している。
当時の道徳観がどうだったかは知らないが、9歳の子供1人に世界の命運を任せるなんてどうかしている。
そんな錘、子供に耐えられるものではない。
「周りの大人たちは、揃って彼女に戦うように言っていました。既に大陸中のほとんどの国が魔族たちに滅ぼされてましたから」
「あの時は、いつ死ぬのかもわからない様な有様だったから」
大人たちは、死の恐怖から“聖女”の女の子に全てを押し付けたらしい。
自分たちの命も、未来も。
ただ“聖女”という役割を持たされたが故に、1人の女の子に押し付け放棄したのだ、暗い現実を。
「それを見てたその子のお姉ちゃんが、ある日立ち上がったの。その子が、わたしがその時契約した“剣聖”の女の子」
「人間族唯一の“剣聖”だった少女か」
「うん、年は3つ上の12歳。ちょうどノブちゃんぐらいだったかな」
どうやら、姉妹揃って上級紋だったらしい。
ハルサーマンとアリンカの親子“剣聖”も驚きだが、姉妹で低確率の上級紋を持つのもビックリ仰天である。
「ある日、その子に相談されたの。『妹が戦わない様にするにはどうしたらいいですか?』って」
突然、ザンの元に来るなり、そう言ったらしい。
本当に突然だったらしく、ザンはテンパりながら言ったらしい。
「『誰かが“魔王”を倒しちゃえばいいんじゃないかな?』って。そしたら、その子言ったんだ」
ーーなら、私が倒す。妹が戦わないで済む様に。
「その子、驚くほど純情だった。真っ直ぐで揺らがない瞳で、わたしの方をずっと見てたの。その心に、わたしは動かされたんだ」
その直後、ザンと“剣聖”は契約した。
剣もまともに握った事もない女の子が何日も何日も素振りをし、通力を操る鍛錬に身を投じた。
何百回とケガをした。
何百回と敗北した。
何百回と、泣いた。
気づけば1年が経ち、“剣聖”の周りには“魔王”を破らんと立ち上がった者たちが集まっていた。
レベルを上げ、技を磨き上げた“剣聖”は仲間と共に“魔王”の元へ。
「そこからは、前にノブちゃんに話した通りだよ。“魔王”を倒した“剣聖”は、通力を酷使して消滅。わたしも深い眠りについちゃった」
「……なるほどな」
ザンの話が終わり、黙って聞いていたノブナガはそうとだけ呟く。
数千年前の経緯を聞いたノブナガは、考えたくもない事を思ってしまったのだ。
ーー“剣聖”も“聖女”も、救われたのか?
と。
考えたって答えがないのに、考えしまうのだ。
「その後、わたしたちで儀術式の準備を整えたのです。ザンを運ぶのは手間でしたが、通力の供給は問題なかったので予定通り封印したのです」
「わかったよ。あの時成そうとした事っていうのは、“聖女”の“再成魔法”を使って、世界を巻き戻すって事だな」
「はい。その通りです」
つまり、
「今の“聖女”……エリーナさんに、それをさせるつもりなのか?」
タニーに向けられた目が、細まった。
それと同時に湧き上がる、憤怒の威圧。
真正面から当てられたタニーはもちろんの事、その隣に座っているラミスすらも、ノブナガが放つ途轍もない怒気に身体が固まった。
脳からの命令を一切受け付けず、呼吸すらも困難になる。
身体が、本能が警告しているのだ。
今動いたら殺られる、と。
「実際に行われていないから断言はできない。けど、元の世界に戻そうとすれば、3年は巻き戻さなくてはならない。それほどの“再成魔法”を発動させるのにMPだけでは足りない。更なる膨大な代償が一体なんなのか、わかるか?」
ノブナガの問いかけに、口を開く事すらできない。
無意識に、唾を飲み込むラミス。
「通力だよ。生命の源である、通力だ」
黙ったままのタニーたちに代わり、ノブナガが自問自答する。
通力は生命の源であり、あらゆる力を強化する事が出来る。
それは“再成魔法”とて例外ではない。
どれほどの規模かはわからないが、通力を使えば間違いなく発動するだろう。
だけど、
「生命の源である通力を酷使すればどうなるか、ザンと“剣聖”という前例があって知らないわけないよな?」
ノブナガの睥睨がラミスとタニーを貫く。
ノブナガが言っている事は理解している。
世界規模の干渉まで強化するとなれば、その通力の消費は想像したくもないほど膨大な量になる。
もちろん、通力を使い果たした先にあるのは、存在の消滅。
正しく、タニーたちが言っている事は、数千年前の“剣聖”の二の舞ーーエリーナを犠牲にするという事だ。
ノブナガがキレるのも無理はない。
感情のコントロールを放棄し、湧き上がる怒気をすべてぶつけているノブナガ。
その押し潰される威圧に耐えながら、タニーは重くなった口を一生懸命に開く。
「で、ではっ、“魔神”を、ハバキ様を倒すのですか?いえ、それ以前に倒せるのですか?」
「そ、それは……」
一生懸命に声にしたタニーの言葉が、ノブナガの憤怒を揺るがした。
その隙に、タニーはノブナガが逸らしていた事を言葉にする。
「“魔王”たちや魔族軍だけなら、貴方にも倒せるでしょう。ですが、“無限通力”と“無限魔力”を持った“魔神”には勝てない。違いますか?」
痛いところを突かれ、ノブナガは返す言葉が出てこないでいる。
“人神”の言葉を信じれば、倒せるらしい。
だが、ノブナガはそれを素直に受け取る事が出来ないでいる。
“人神”時代の記憶を思い出したとしても、その力に確実性があるとは思えないからだ。
「なら、今のうちに世界を巻き戻して、ダンジョンの封印が解かれた事を無かった事にするしかありません。1人の犠牲で、世界中の人が救われるんです。なら、迷う理由がありますか?」
タニーが言う言葉は、間違いなく正論だ。
現実的で、確実的で、すべてが救われる方法。
「犠牲が出る事に、わたしは納得できない所はあるけど……わたしも、その方が良いと思う」
「ッ、ラミス……」
すべてが賛成というわけでない様子だが、それでも現実を直視して賛成するラミス。
ノブナガとザンは口を固く閉ざし、考える様に眉を顰める。
「ザン。なぜ賛成しないのですか?“聖女”に“再成魔法”を使ってもらう。これ以上の方法がありますか?」
「…………」
「なら、なぜ賛成しないのです?まさか、ハバキ様を倒すと言うのですか?」
「っ…………ハバキ様は、倒せないよ……」
「では、“聖女”に“再成魔法”を使ってもらうという事でいいですか?」
「え、エリちゃんを、殺せないよ……」
「何を我儘を言っているのですか。選べる選択肢は2つです。ハバキ様を殺してすべてを救うか、“聖女”を犠牲にしてすべてを救うか。この2つしかありません」
ボソボソと答えていたザンは完全に押し黙る。
今、ザンの中で葛藤が起きているだ。
尊敬していた人を殺すのか、仲間を殺すのか。
だが、ザンの中で2つの選択肢を迫られた瞬間、決める事はできていた。
その2つの選択肢で、ザンは『仲間』を取った。
尊敬を殺し、仲間と共に戦うと決めた。
しかし、尊敬を殺す事にも抵抗があった。
本当に殺すのか?
戦えるのか?
救う方法はないのか?
そんな救いを求める心の声が、ザンの頭の中でぐるぐると回っているのだ。
選ばなければならない。
選ばなければ、どちら共失うという最悪の結果が待っているが故に。
ザンは、心の声を奥底に押し込めた。
決断する為に、聞こえないフリをする為に。
無意識に息が荒くなる。
心臓のバクバクが全身に響く中、ザンは口を開く。
ーーその前に、
「すべてを救う、ってなんだよ」
ノブナガが口を開いた。
その言葉は短過ぎて意味が理解し切れない。
ただ、ノブナガの目を見ればわかる。
さっきの怒りの目でも、逸らしていた目でもないーーーー鋭く力強い目を見れば。
「あんたが言ったすべてっていうのに、俺たちが本当に救いたいものは入っていないんだよ。だから、俺は納得なんてしない」
ハバキを殺す事は、ザンを含めた精霊たちが認めないだろう。
上辺では認めても、心の底では認めるわけがない。
エリーナに関しては、“奪還者”メンバー全員が認めない。
どっち共、救いたい者で切り捨てられるような者ではない。
「俺たちは目的は違うけど、それぞれの目的の為に戦ってきたんだ。それぞれが思い描いた未来の為に戦ってきたんだ」
エリーナはアンディエル帝国を取り戻す為。
ザンは魔族をぶっ倒す為。
カレンは竜界に帰る為だし、アリンカは両親を救う為だ。
スフィはよくわからないが……
その目的の為に戦ってきたのだ。
目的の為に、一切の妥協無く戦ってきたんだ。
「妥協した瞬間、それは俺たち“奪還者”の戦いじゃ無くなる。目的の為、仲間の為にすべてをやって来たんだ。あんたが言う妥協した『すべて』じゃなく、文字通りの『すべて』を」
ノブナガたちがして来た事は、そういうものなのだ。
妥協した瞬間、目的は達成されない。
1つでも諦めたら、何も叶える事ができない。
国を取り戻す事も、魔族を倒す事も、故郷に帰る事も、両親を救う事も。
妥協できるものなんて何1つない。
「言え、ザン。ザンはどうしたい?それが綺麗事だろうが、我儘だろうがそれがザンの目的だ。その為に、俺たちは妥協なんてしない」
「ノブちゃん……」
ノブナガの強い瞳が、ザンに向けられる。
ザンは、ノブナガの言葉に錘が取れたように心が軽くなる。
そして、思い出す。
ノブナガが『する』と言えば、そのすべてを成し遂げてきた事を。
このチートマスターに、不可能がない事を。
無意識に、ザンから笑みが溢れた。
それと同時に、思い描いた未来を口にする覚悟は決まった。
言葉にする。
「ノブちゃん、わたしはエリちゃんもハバキ様も救いたい」
さっき言おうとしたものとは違う、綺麗事に満ちた言葉。
「“魔神”と戦って、ハバキ様を“魔神”の天紋から解放したい」
タニーが提示した2つの選択肢のどちらでもない、3つ目の選択肢。
それは“魔神”を倒すよりも難しい、救うという選択肢だ。
普通に考えて無理だ。
人が神に敵うわけがない。
“人神”ですら、“魔神”を倒す事ができないと言う。
それでも、ザンの契約者は普通なんかじゃないので言っちゃう。
「ああ、任せろ」
すべてを肯定する言葉を。
こうして、“魔神”への心構えは決まった。
倒すのではなく、ハバキを“魔神”の天紋から解放すると。
余りにあっさりとした頷きに、ラミスとタニーは頰を引き攣らせていた。
その時、上の階から扉が閉まる音がする。
小さい音だが、ノブナガの耳には確かに聞こえた。
この時、ノブナガは胸一杯に嫌な予感が広がったのを感じ取った。
************************
その夜、みんなが就寝して静かなハルサーマンの屋敷の中で、ノックの音が小さく響いた。
「スフィさん、起きていますか?エリーナです」
ノックをしたのはエリーナだ。
本来であればエリーナとスフィに宛てがわれた部屋なのだが、ずっとアブリー現帝王の側にいたエリーナは初めて訪れた部屋だ。
そして、エリーナの声に反応して扉を開いたのは、スフィだ。
眠たそうとも受け取れるいつもの顔で、エリーナを見る。
それに対し、エリーナは真剣な顔で小さな声で言う。
「スフィさん、お話が……あります」




