ノブナガさんは奮闘します
「そんな魔法名がっ、あってたまるかーーーーーー!!!!!!」
吠えた瞬間、ノブナガは“風読”を発動させる。
さらに“結界構築”を使い、自分を覆うぐらいの結界を展開する。
上級魔法2つを耐え切った結界だが、さすがに連続してくる球たちには耐えられなかった。
20個ぐらい弾いたところで結界がヒビ割れた。
「我が剣に宿れ雷っ。その刃は煌めく稲妻の剣!ーー“サンダー・ソード”!!」
だが、結界のおかげで詠唱できなかった分の時間は稼いだ。
“風読”で先を読み、迫り来る球たちを斬り払ったり躱したりするノブナガ。
数はあっても精々50個。
千本近い矢を突進しながら躱していったノブナガとっては苦でもない。
ただ、問題はーー
「“再逆”!!」
ノブナガがすべての球を消滅させた瞬間、エリーナが再成魔法を発動させる。
それだけで50個の球は元通りになり、またノブナガへと襲いかかる。
(ですよねー……エリーナさんが詠唱した時からくるなぁ、とは思ってたんだよ……)
内心でボソリと呟きながら、ノブナガは雷の宿った剣を振るって消滅させていく。
しかし、次の瞬間にはエリーナの「“再逆”!!」がすべてを元通りにしてしまう。
(なるほど。再成魔法を連続して使う時間と俺の殲滅速度のタイミングを合わせるのに50個だったのか)
この究極魔法“数の暴力”はどんなに相手が魔法の球を壊そうとも再成魔法で元通りにして、数で相手を潰す魔法?だ。
これに欠かせないのが再成魔法だ。
相手が魔法の球を殲滅し切る前に詠唱を終わらせなければないし、再成魔法が無ければ数で押す事も出来ない。
そこでエリーナたちは予めノブナガの殲滅速度を予想し、50という数を生み出したのだ。
やる側も厳しいが、やられる側はもっと堪ったものじゃないだろう。
なにせ、潰しても潰しても元通りになり、潰しても潰しても元通りなのだ。
遠い目をしたくなるのも頷けちゃう。
(だけど、この連鎖はずっとは続けられないんだろうな)
再成魔法がどういうものか知っているノブナガだからわかる事だ。
再成魔法は強力さゆえにMPの消費量が多い。
それを習得したエリーナでも連続で5回使えるかぐらいだ。
つまり、エリーナのMPが尽きた時が“数の暴力”の終わり。
ノブナガはそれをわかっていた。
(けど……それを待ってるだけだと負けた気がして釈然としないな……)
なんとなく、剣を振るいながらそんな事を思ってしまったノブナガ。
別にMP切れを待って勝つのも戦略のうちだ。
恥じるような事はない。
しかし、しかしなのだ……
前世のーー信長の記憶で思い出してしまったのだ。
ジムリーダーに挑戦した時、最後の一体で「じ○く」され、バッジを手にした時の虚しさを。
水の亀が無意味に亡くなった時の虚しさを!
「重力は輪廻するっ。すべては重軸に集うべし!ーー“重束”!!」
気がついた時には詠唱してしまっていたノブナガさん。
周りにある魔法の球が強制吸収され、消滅していった。
いくら再成魔法といえど、消滅までしてしまっては対象に出来ない。
ノブナガが強制停止したところをアリンカが一息で間合いを詰めてくる。
ノブナガはスキル“先読”を発動させる。
“先読”とは相手の筋肉の強張りから次の行動を見切るスキルだ。
技量で勝てない以上、スキルを使うしかないノブナガ。
しかし、“剣聖”であるアリンカも当然“先読”を習得している。
アリンカも“先読”を発動させ、スキル補助が互角になったところで剣の技で戦う事になる。
互いが互いの先を読み合う斬り合い。
もちろん、技量で負けている以上、押されるのはノブナガである。
ハルサーマンと戦った時の事を思い出してしまう。
あの時のような、何かを背負った戦いではないが、それでも技で押されるのは久しぶりである。
よって、ノブナガは戦い方を変える事にする。
「ハァァア!!」
短い声と共に放たれるアリンカの上段下ろし。
それをノブナガは左右に分かれて回避する。
「ッ!?そっちか!!」
ノブナガが急に2人になった事に目を剥くアリンカ。
スキル“分身”である。
しかし、それも一瞬の事で右に逃げたノブナガに向かって2閃目を放つ。
だが、今度は上下に分かれて躱された。
「ーーっ!?」
もう一度追撃しようとしたアリンカだったが、背後から感じた圧力にそれをキャンセルし、横に転がり込んだ。
直後、アリンカが先程までいた場所に大きな斧が振り下ろされ、地面にクレーターを生み出した。
斧が振り下ろされた事に驚愕するアリンカ。
しかし、それだけに構っている余裕などアリンカにはない。
アリンカが転がった先に、待ち受けていたかのように槍を構えているノブナガがいた。
意識を切り替え、半ば強引に身を捻り地面に足をつくアリンカ。
「風・纏う・疾風ーー“ゲイル・ラビット”!!」
身を縮めた状態から一気に伸びあがるように跳ぶ。
ノブナガの槍の突きを間一髪で回避し、ザンたちのところで着地する。
「ちょっ、それは反則でしょ!!」
顔を上げ、ノブナガを見たアリンカが叫んだ。
いや、ノブナガたちを見た、である。
「どうも、俺が“剣士”兼“魔法剣士”のノブナガです」
「“暗殺者”兼“投術師”のノブナガです」
「“拳闘士”兼“魔闘士”のノブナガです」
「“槍術士”のノブナガです」
「“斧術士”のノブナガです」
「“錬成師”兼“魔導師”のノブナガです」
「“治癒師”のノブナガです」
「“魔弓士”のノブナガです」
「“守護師”のノブナガです」
「“水術師”兼“闇術師”兼“魔術師”兼“賢者”兼“召喚師”のノブナガです」
「そして、俺が本体にして“勇者”のノブナガだ」
本体も含め、計11人のノブナガがそれぞれの天紋担当にあった武器を手にし、佇んでいた。
1人兼ねが多いような気もするが……
そんな事はまったく気にしないノブナガさんである。
「ノブちゃんっ、それは反則だよ!!」
「そうッスそうッス!!」
ザンとカレンが吠える。
ノブナガたちは白昼堂々である。
「「「「「「「「「「「何が反則なんだよ?自分のスキルを使ってるんだから、なんの問題もーー」」」」」」」」」」」
「本体1人で喋りなさいよ!!」
言っている事は同じだが、微妙にズレているのが気になって言葉がまったく入ってこない。
そこをツッコみ担当のアリンカがツッコむ。
そんなアリンカに11人のノブナガが「やれやれだぜ」とでも言うかのような海外映画のオーバーリアクションをする。
それを見たアリンカの額に青筋が浮かぶ。
そんなアリンカを軽く余所にするノブナガたち。
「何が反則なんだよ?自分のスキルで増えてるんだから、別に反則じゃないだろ?」
「ぐっ……確かに……」
11人を代表し本体である“勇者”のノブナガが言う。
やっている事は反則レベルのチートではあるが、“勇者”のノブナガが言っている事は正論なのでこれ以上、何も言えなくなるザンたち。
スキル“分身”の派生スキル[+多重分身]。
実体があり、思考がある魔力の分身を作り出すスキル。
分身体のステータスは本体の10分の1まで低下するが、“分身”とは違う物体への干渉が可能なのである。
ただ、このスキルは“暗殺者”の中でも不人気で有名なスキルである。
何せ物体に干渉できるのは良いものの、その分1体だけでMPの消費はバカにならない。
精々2体作れるか作れないぐらい。
それにステータスが10分の1になるのだ。
翻弄出来る速度が出せない以上、使うだけ無駄。
まだ実体はないが翻弄出来る速度と数が出せる“分身”を使う方が有効的なのだ。
だが、それをなんとかしてしまうのがチーターたるノブナガさんだ。
通常の“暗殺者”のMPを優に超えるノブナガは11体という[+多重分身]を作り出し、なおかつ通常の人間のステータスを優に超えているノブナガは10分の1になろうが普通。
そこにノブナガは1人1人に役割を与える事で、RPGで言うところのレイドパーティーを1人で作ったのだ。
「“数の暴力”、だっけ?」
“剣士”兼“魔法剣士”のノブナガ(以降は“魔法剣士”ノブナガと呼称)は挑発するようにニヤリと笑う。
「数で攻めるだけじゃ生温い」
“水術師”兼“闇術師”兼“魔術師”兼“賢者”兼“召喚師”のノブナガ(以降は“賢者”ノブナガと呼称。絶対呼称!!)もまた挑発するように言う。
「見せてやるよ。本当の“数の暴力”ってやつを」
“錬成師”兼“魔導師”のノブナガ(以降は“非戦闘”ノブナガと呼称)の言葉が合図となり、近接戦闘メインの“魔法剣士”ノブナガ、“暗殺者”兼“投術師”のノブナガ(以降は“暗殺者”ノブナガと)“拳闘士”兼“魔闘士”のノブナガ(以降は“魔闘士”ノブナガ)、“槍術士”のノブナガ(以降は“槍術士”)、“斧術士”のノブナガ(以降は)、そして“勇者”のノブナガ(……)が飛び出した。
6人のノブナガが突っ込んでくる光景に顔を引き攣らせる女子4人。
とりあえず、近接戦闘のノブナガたちがやって来ている以上、アリンカが前に出て食い止めるしかない。
まず1番リーチの長い“槍術士”ノブナガが前に出たアリンカを貫こうと突きを放つ。
アリンカはそれを斬り払い、さらに前に出ようとする。
しかし、それを邪魔するかのように入り込んでくる“魔法剣士”ノブナガと“魔闘士”ノブナガ。
剣を受け止めている隙を突くように拳や脚が放たれ、中々攻めに回る事が出来ない。
徐々に視野が狭くなると、その死角を突いてくるかのように“斧術士”ノブナガが斧を振り下ろして襲いかかる。
剣でガードしたアリンカは受けた衝撃を利用して間合いを開く。
“剛力”を使っていたのか、振り下ろしを受けたアリンカの腕が少し痺れる。
思考が全員一緒なせいで連携はバッチリ。
与えられた役目をしっかりと理解し、それに合った戦術をとっている。
「5千の軍隊?そんなの霞むわよ……」
6人のノブナガの前で、ボソリと呟くアリンカ。
そんなアリンカの横を途轍もない速度で抜けるノブナガがいた。
“暗殺者”ノブナガである。
アリンカを無視し、エリーナとザンとカレンに向かって3本の短剣を投擲。
風を切る音を鳴らしながら、狙った者たちへと向かう。
それほど速くはなかった投擲をザンとカレンは身を捻って回避、エリーナは反射的に振り上げてしまった魔法杖で防いだ。
しかし、それはだけでは終わらない。
“暗殺者”ノブナガは投擲が防がれようとも、短剣を手にしてエリーナたちに迫っている。
「カレンっ、よろしく!!」
「了解ッス!“竜化”!!」
それに対し、ザンがカレンに指示を出す。
直後、カレンが光を放ち、紅い鱗を纏った竜へと変化する。
炎竜へと変化したカレンはすぐさま翼をはためかせ、上空へと飛び上がる。
頭上をとって放たれるのは“咆哮”の派生スキル[+火炎放射]。
上空という事もあり、カレンのブレスは11人のノブナガを軽々と呑み込む。
しかし、その炎は壁にぶつかったかのようにノブナガたちの前で裂けた。
盾を持つ“守護師”ノブナガの“結界構築”の仕業だ。
「清水・噴射・粉砕ーー“アクア・スプラッシュ”!10門!!」
ブレスを防がれたカレンに、結界内にいる“賢者”ノブナガの魔法が襲いかかる。
線を引くかのように放たれた10の水。
それをどうにか身を捻って躱すカレン。
だが、10という数が多いせいで徐々に躱し切れなくなり、最後の10線目を正面から受ける。
「グアァァアアアアア!!!!」
“竜化”状態であるカレンにとっては常人の上級魔法など大したダメージにはならない。
しかし、それでも蓄積されてきたダメージはある。
HPがごっそりと持っていかれ、5割まで減ってしまった。
想像以上のダメージにカレンは一瞬、安定していた飛行が揺れる。
本当に一瞬だったそれを、ノブナガは見逃さなかった。
“勇者”ノブナガは大きく跳躍し、踏み締めた地面にクレーターを作りながら上昇する。
瞬間、カレンの頭元にやって来た“勇者”ノブナガ。
一瞬にして目の前にやって来たノブナガを見て、驚愕しながら「あれ?デジャビュ?」と思ったカレンさん。
そんなカレンに一気に剣を振り下ろす“勇者”ノブナガ。
「ブチ抜け!!」
実は宣言通り本体だった“勇者”ノブナガのバグったステータスを諸に受けたカレン。
頭の重力が急激に加重したかのように頭が落ち、地面を凹ませながら落下した。
そこでカレンのHPが2割へと到達する。
それを感知し、上空に浮かぶ“セルブ・サテライト”が反応する。
先端がクルッとカレンの方を向き、そこから光が投射される。
光がカレンを包み込むと、HPが回復しボロボロになる前の状態へと戻る。
これでカレンの戦闘不能となった。
「んー!悔しいッスー!!」
“竜化”を解き、女の子へと戻ったカレンは地団駄を踏みながら唸る。
そんなカレンを誰も見ている余裕はなかった。
アリンカは4人のノブナガの攻撃を凌ぐのに精一杯。
ザンはザンで、“暗殺者”ノブナガを相手に気を抜けない回避を続けている。
「ーー“シャイニング・スラッシュ”!!」
回避しながらもどうにか詠唱を完了させたザン。
3本の光剣を操り、“暗殺者”ノブナガに襲いかかる。
しかし、“暗殺者”ノブナガは身を捻ったり短剣で弾いたりと器用に光剣を去なす。
そうして徐々にザンに接近した“暗殺者”ノブナガは両手に短剣を2本持って、ザンに流れるように連撃を放つ。
「光・阻む・防壁ーー“ライト・シールド”!!」
[+省略詠唱]で発動させた光の盾が“暗殺者”ノブナガの連撃を防ぐ。
余裕が出来たザンはバックステップで間合いを開け、追撃されないように“シャイニング・スラッシュ”を差し向ける。
「ザンさんっ、これを!」
「っ!サンキュー、エリちゃん!!」
エリーナは自分の下まで後退して来たザンに“ストレージ”から取り出した剣を差し出した。
ザンはどうして持ってるの?という素朴な疑問を浮かべながら、今はそんな場合じゃないと首を振って剣を受け取り、抜剣する。
そんなザンに“シャイニング・スラッシュ”と“ライト・シールド”を突破して来た“暗殺者”ノブナガが斬りかかる。
それを目端に捉えたザンは慣れたように通力を操作し、全身に纏う。
瞬間、“暗殺者”ノブナガの速度を優に超えたザンが胴抜きのように斬り返した。
斬り返された事に驚きを隠せない“暗殺者”ノブナガ。
「え!?ザンっ、剣使えたの!?」
「そこ!?驚くところ、そこなの!ノブちゃん!?」
自分を超える速度とかHPが減った事とかは眼中になく、ただただザンが剣を振るった事に驚愕する“暗殺者”ノブナガ。
[+多重分身]しているすべてのノブナガはすべて共有されている為、全員のノブナガが「え!?マジで!?」と戦闘をやめてザンの方を向いていた。
「聖剣なんだから使えるに決まってるでしょ!!」
「「「「「「「「「「「いや、だって、ザンが剣使ってるところなんて見た事ないし。ずっと魔法ばっか使ってたから使えないものだと」」」」」」」」」」」
「だから、1人が喋れ!てか、アンタたちはこっちに集中しなさいよ!!」
余程の驚きだったのか、11人のノブナガ全員がボソボソと口を開いて呟いている。
そこをツッコみ担当がツッコみ、そして目の前のノブナガたちに叱咤しながら剣を振るう。
「今まで魔法を使ってたのは身体が鈍ってただけ。確かにスキル欄に“剣術”はないけど、使えるのは使えるんだから!」
「くっ、ザンも大概バグキャラだよな……」
「ノブちゃんに言われたくないよ!!」
ステータス4万越えの人間が最もバグキャであると、その場にいた全員が思った。
そんな思考を振り払い、ザンは気合いを入れて“暗殺者”ノブナガに斬りかかる。
目で追えないほどではないので、2本の短剣を器用に操って防ぐ“暗殺者”ノブナガ。
ノブナガの分身とは言えど、通力までは備わっていない“暗殺者”ノブナガは完全に防ぎ手に回ってしまう。
そんな“暗殺者”ノブナガを見て、ザンはギアを上げて斬撃速度を叩き込む。
“暗殺者”がジリジリと押されていき、もう少しで剣が届くーーーーかのように思われた。
「ーー不死の誓いと共に激しく散り行け!召喚っ、“フェニックス”!!」
瞬間、上空に“何度でも蘇る”でお馴染みの皇鳥が召喚された。
「あ」という言葉を漏らし、口を開けながら見上げるザン。
「では、参りましょう!」とでも言っているかのように翼を広げる不死鳥さん。
何を参るのか。
もちろん、炎の海です!!
空間遮断の内部が炎に包み込まれる。
先ほどダメージを受けた“暗殺者”ノブナガは炎に包まれHPを回復させる。
一方、アリンカは“金剛”を発動させ、腕を顔辺りでクロスさせて防御体勢。
防御手段を持たないエリーナはザンが念の為に残しておいた“ライト・シールド”を差し向け、完全にとはいかないものの炎を防いだ。
しかし、それをしたザンは何の対策もせず、フェニックスの炎に覆われてしまった。
纏われた瞬間、“セルブ・サテライト”が反応してザンに光が差し込まれた。
炎が引いた後には、ザンが女の子座りになって頰を膨らませていた。
「熱熱熱熱いっ!何なの、この火!!」
“金剛”で全力で耐えたアリンカは身体に纏わり付いている火を消そうと腕を振るう。
フェニックスの炎は死の炎だ。
気合いで耐えようと、その身に火がついたが最後肉体も残さず燃え尽きる。
確定宣告の呪いである。
「ーー“浄回”!!」
しかし、それ異常状態のようなもの。
それを理解していたエリーナは状態回復魔法を発動させる。
すると、アリンカのHPをジリジリと削っていた火が萎み消えていく。
「っ!ありがとう、エリーナ!!」
「どういたしまして!それより前見てっ、前!!」
火が治り、お礼を言うアリンカだったがエリーナに言われ、慌ててノブナガたちの方を向く。
振り向いたアリンカに“斧術士”ノブナガが襲いかかる。
それに対し、アリンカは“金剛”と“剛力”を発動させ、振り下ろされてくる斧を弾き返した。
斧を弾き返し、無防備になったアリンカに“魔法剣士”ノブナガと“魔闘士”ノブナガが間合いを詰める。
「風・払う・突風ーー“エア・バニッシュ”!!」
しかし、アリンカが発動した風魔法“エア・バニッシュ”の全方向へ放たれた衝撃波によって吹き飛ばされる。
2人のノブナガを吹き飛ばしたアリンカは槍の間合いを一息で詰め、“槍術士”ノブナガに剣を振るう。
槍で防ぎ、柄を薙ぎ払って牽制する“槍術士”ノブナガ。
だが、薙ぎ払いは逆にアリンカの薙ぎ払いに払われ、その身に3つの傷を刻まれる。
そんな“槍術士”ノブナガの傍から先ほど弾き返された“斧術士”ノブナガが仕掛けてくる。
「ーー“ハリケーン・ソード”!!」
そんな“斧術士”ノブナガに対して、アリンカは“属性付与”の風を纏わせる。
剣と斧がぶつかり合った瞬間、纏っていた風が剣を離れ、“斧術士”ノブナガの顔面を穿った。
怯んだ隙をつき、アリンカは剣を振り上げ“斧術士”ノブナガの首目掛けて振り下ろす。
直前。
「ッ!?」
アリンカは体勢を崩してまで左に転がり込むように跳ぶ。
直後、先程までアリンカの頭があった場所に炎を纏った矢がヒュッと通り過ぎた。
“魔弓士”ノブナガである。
通り過ぎたはずの矢は物理法則を無視したUターンを見せ、またアリンカを射抜こうと迫ってくる。
今度は冷静に対処できた事やすでに矢に速度がない為、斬り捨てるように矢を弾いたアリンカ。
だが、それだけで終わるわけもなくーー
振り向いたアリンカは目にした。
色とりどりな雨を。
しかも、自分のいる所だけに降ろうとしている雨を。
もちろん、正体は属性が付与された矢だ。
“魔弓士”ノブナガが“属性付与”で矢に属性を付与させ、“弓術”の[+連放]で高速で矢を放ちながら、すべての矢を[+放矢操作]でアリンカの下へ操っているのだ。
もちろん、[+標的固定]でロックオン済み。
さすがに無理だと判断したアリンカはすぐさま回避しようとする。
しかし、なぜか足が地面から離れない。
慌てて足元を見てみれば、そこには地面の中に埋もれている自分の足があった。
ハッとしたように、視線をノブナガたちの後衛に視線を向けるアリンカ。
視線の先には屈んで地面に手をついている分身体のノブナガの姿が。
アリンカの視線に気づくと、なぜかサムズアップするノブナガは“非戦闘”ノブナガさんだ。
つまり、“錬成”の[+遠隔錬成]である。
避ける事も叶わなくなったアリンカはその色とりどりの雨に呑まれ、戦闘不能。
“セルブ・サテライト”が「はいは〜い」と光を投射する。
残りはエリーナだけとなったのだが……
「エリーナさん、まだやります?」
「っ、やります!」
いつの間にかエリーナの背後を取っていた“勇者”ノブナガが、エリーナに問いかける。
エリーナは一瞬の間をおいて答えた。
ノブナガにとってはあまり嬉しくない答えだったが。
正直、女の子を殴ったり斬ったりする事は気が引けているノブナガ。
最初は4対1という事もあって、それなりの手加減と武器を使って戦っていたが、今は“聖女”であるエリーナだけだ。
絵図だけで見れば、ノブナガが完全に鬼畜野郎である。
それに再成魔法にちょくちょく回復魔法も使っていたので、MPもほとんどないはずだ。
でも、エリーナがやると言った以上はやるしかない。
この勝負はエリーナたちから挑んできた決闘であるのだから、ノブナガに止める権利などない。
ただ、気が引けるが……
「ヤァァァアアアア!」
エリーナが魔法杖を構え、突きを放ってくる。
鋭さはないが、少し様になっているようだ。
しかし、お世辞にも“勇者”ノブナガに通用するような攻撃ではない。
“勇者”ノブナガはエリーナの手首を痛めないよう弾き上げる。
近接戦闘の天紋でないエリーナはそれだけで魔法杖を手放してしまう。
そんなエリーナの首元に剣を突きつける“勇者”ノブナガ。
「これで終わりです」
「…………参りました」
剣を突きつけられたエリーナは俯きながらそう言う。
その言葉を受け、今回の長い決闘は幕を閉じた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「なぁ、“勇者”俺」
「ん?どうした、“治癒師”俺」
ノブナガが[+多重分身]たちと仲良く戦場の後片付けをしている時、“治癒師”ノブナガが話しかけてくる。
“勇者”ノブナガは首を傾げて尋ねると、“治癒師”ノブナガは神妙な顔になりながら言った。
「俺、さっきの決闘で何もしてないんだけど……」
「……………………あ。ごめん」
*注:分身の出し過ぎには気をつけましょう。出されたのに何も出来ない分身体が可哀想です!!




