元奴隷の無双
「ーー通行止だ」
自分から墓まで持っていく恥を作り出したノブナガは格好がついてドヤァとしている。
その後ろで待機しているエリーナたちがジト目だったのは言うまでもない。
対する“勇者”マサル率いるアンディエル帝国第10番隊は予想外の登場に全員が緊急警戒体勢。
ノブナガの台詞など聞いている暇などない。
全員がいつでも戦闘が開始出来るようになったのを確認したマサルは50メートルほど離れた所にいるノブナガに話しかける。
「おい、お前。何者だ?そして、目的はなんだ?」
「礼儀がなってないな、“勇者”。名前を聞く時はまず自分から名乗るもんだろ?ま、今回はお前たちの事を知っているし、俺も名乗る名なんてないんだけどな」
「寝言は寝てから言え。お前の前にいるのは5千の軍隊だ。お前に決める権利がないことぐらい、出来の悪い平民でもわかるだろ?」
マサルの目がギラリッと光る。
“勇者”なんて言葉が霞むような獰猛な目だ。
確かに、現実的に考えて3人とドラゴン1匹じゃ5千の軍勢に勝つ事は不可能だ。
戦力というものが違い過ぎる。
マサルが自分の方が有利だと錯覚してしまうのも頷けるだろう。
だが、マサルの目の前の少年はチーター。
それがわからない者は瞬きの内に意識を深層に沈ませる。
「……話すよりも戦って白黒つけようぜ。手っ取り早くていい」
「まだ寝言を。いいだろう。皆の者!かかれー!!」
すぐさま合図を出すマサル。
前衛部隊は各々の武器を抜き、馬は駆け、人は走り始める。
中衛部隊らしき所では弓を構え、“治癒師”はその後ろで待機。
後衛であろう部隊では皆が詠唱を開始した。
どう考えても、3人と1匹を仕留めるには過度な行動である。
(来たねー)
(あぁ、ちょっとワクワクして来た)
(わたしもー)
5千の大群を目の前に、なんか興奮していらっしゃる2人。
セインズ村で魔物に村を囲まれた時はおそらく5千以上はいたが、ベリンの事もあって大群を前にするワクワク感を味わう事が出来なかった。
(ザン。斬るなよ?)
(ノブちゃんこそ。殴り殺さないでよ?)
ノブナガがニヤリと笑う。
剣の姿のザンもニヤリと笑った気がした。
瞬間、ノブナガはザンガルドを抜き放ち、大群に突っ込んでいく。
周りに大勢いて走り辛そうな前衛部隊と違い、ノブナガはスイスイと前を進む。
「弓っ、放てーーーー!!!!」
ノブナガが前衛部隊と接触する前、中衛から矢が放たれた。
綺麗な放物線を描き、前衛の頭の上を超えてノブナガに襲いかかる。
千は優に超える数の矢が空を染める。
この数の矢となると防ぐにしても立ち止まる必要がある。
足止めした所を前衛部隊が一気に畳み掛ける。
確かに軍隊対軍隊の戦いの中では有力な戦法だ。
だが、ノブナガは1人で前衛、中衛、後衛のすべてを持つ者であれば対処はそれほど難しくない。
ノブナガは降り注いでくる矢を前に駆け続ける。
捨て身を選んだかと思えば、ノブナガは矢の雨を小さい体捌きで躱していく。
“魔弓士”のスキル“風読”だ。
同じ弓を使う天紋を持っていれば、矢がどれだけあろうと造作もない。
矢の雨を潜り抜けたノブナガはついに前衛部隊と接触する。
視野を広くし、向かってくる騎士を振り払い、躱して殴り蹴りを繰り返す。
2千はいる前衛騎士をバッタバッタと薙ぎ払うが、やはり多勢に無勢であったのか、軍隊の勢いが止まる事はない。
徐々にノブナガの視野が狭くなって来た瞬間、前衛部隊が2つに裂けた。
直後、ノブナガに襲いかかる8色に分かれた2千を超える魔法の数々。
(やばっ!)
さすがに2千を超える魔法を一気に喰らうのはノブナガでも致命傷になりかねない。
頭に響き渡る警告音に素直に受け取ったノブナガは[+身体強化]×2、それに“金剛”も発動させて聖剣を盾にする。
2千近い魔法がノブナガに着弾する。
激しい爆発と共に吹き飛ばされるノブナガ。
ノブナガが着地した場所辺りまで戻される。
ゴロゴロと地面を転がり、手を突いた勢いで立ち上がる。
ノブナガが軍隊の方を見れば、また2千近い魔法が飛んでくる。
「重力は輪廻するっ。すべては重軸に集うべし!ーー“重束”!!」
ノブナガの目の前に黒い球が出現。
ノブナガに迫っていた魔法の悉くが、その球体に吸い込まれ消滅する。
爆発すら起こらなかった自体に全部隊の動きが止まる。
(油断したねー)
(あぁ、失敗した。やっぱ、5千対1って厳しいんだな)
(どうする?諦める?)
(何を言ってる。厳しいってわかっただけで、無理ってなったわけじゃない。今こそ、新スキルを使う時!)
蜘蛛の魔族ーータヤを倒した事で、ノブナガのレベルは50になった。
50になった事で複数の新しく習得したスキルを今使う時だ。
「“分身”」
ノブナガのスキルが発動する。
直後、ノブナガが2人、3人、4人と増えていき、ついには50体にまで増えた。
“暗殺者”の有名なスキル“分身”。
魔力の人形を作り出すスキルで、分身自体は何にも干渉する事が出来ない。
だが、相手を翻弄するにはもってこいのスキルだ。
もちろん、相手の前衛部隊にも“暗殺者”は居るだろうから“分身”である事はバレるはずだ。
だが、人形を作り出すには魔力が必要であるがゆえに、普通の“暗殺者”ではせいぜい5体出せるか出せないかぐらいだ。
それをノブナガはバグったステータスを駆使し、本来ではあり得ない量の“分身”をしたのだ。
そのあり得ないほどの量のノブナガの“分身”が一斉に軍隊に襲いかかる。
20体が前衛部隊の中に突っ込み、他は前衛の肉壁を突破していく。
さらに10体が中衛、そして残った20体が後衛部隊の中に突っ込んでいった。
だが、どの部隊も混乱どころか警戒すらしていない。
いくらノブナガが50人に増えたとしても、結局本物は1人しかいない。
1人しかダメージを与えられない状態で、誰も混乱なんてするわけがない。
そう高を括っているのだ。
ーーノブナガのチート力も知らずに。
ノブナガの“分身”が剣を持った騎士を斬ろうとする。
そんな偽ノブナガに対し、斬られようとしている騎士はウェルカムとばかりに無防備を晒す。
50分の1の本物。
逆に言えば、50分の49が偽物なのである。
それを理解していた剣の騎士は甘んじて斬撃を受けた。
「ゴホォ!!!!!!!!」
吐血しながら吹き飛んだ。
普通に吹き飛んだ。
事情を知らない者がいれば、指をさしながら「あいつバカだろ?」と一切笑っていない罵声が飛んでいる所だろう。
周りにいた騎士たちも「すわっ、こいつが本物か!?」と吹き飛んだ騎士に犠牲者1号の不運さに同情していた。
同情しながらも、そのノブナガを取り囲む。
しかし、そこで耳に入ってくる。
悲鳴が。
誰の?
知った声の。
なぜ?
やられたから。
「ッ!?どういい事だ!!」
取り囲んでいた槍使いの騎士が声を上げる。
遠くから、あるいは近くからその悲鳴の声が聞こえてくる。
「ぐぁぁあああああ!!」
そして、すぐ背後から悲鳴が聞こえ振り返る。
そこには偽ノブナガたちに昏倒させられている騎士たちの姿が。
これは端的に説明すれば“属性付与”を使った攻撃である。
ノブナガの偽物である“分身”は何にも干渉する事が出来ない為に誰にもダメージを与える事が出来ない。
しかし、偽ノブナガが持っている剣に本物のノブナガがかけた“属性付与”であればどうだろう。
纏われた属性は干渉し、ダメージを与える事が出来る。
今回は風をすべての偽ノブナガの剣に付与させ、訳がわからないという混乱を与えたのだ。
「どうなってるっ!どうして本当のが2人もーー」
その言葉を言い切る前に、自分たちが取り囲んでいた偽ノブナガによって背後から昏倒させられた。
位置が変わりーー
「くそっ!うじゃうじゃと面倒な!!」
馬に跨っていたはずの“勇者”マサルは偽ノブナガに馬を殺られ、1人の偽ノブナガと対峙していた。
周りではノブナガの“分身”によって増えた偽ノブナガが全部隊に現れて次々と隊員を無力化している。
前衛はともかく、中衛部隊と後衛部隊は最悪の状態だった。
近接戦闘が出来ない上に経験もない。
どう対処すればいいのかわからず一心不乱に矢や魔法を放っているせいで味方にも被害が出ている。
マサルが助けに行けば解決するが、マサル自身も偽ノブナガ1体すら仕留められていない状態だ。
切り札を切る決意をしかけた瞬間、この事態になってから後衛のずっと後ろで詠唱し続けていた“召喚師”マモンの魔法が完成した。
「ーー不死の誓いと共に激しく散り行け!召喚っ、“フェニックス”!!」
今のマモンが使える召喚魔法の中で最も強力な霊鳥フェニックス。
その炎ような身体を広げながら現れた不死鳥は、纏う炎を膨らませ、戦場を覆うようにその炎を放った。
文字通り、戦場が火の海となる。
フェニックスは生と死の霊鳥。
敵味方を認識し、味方には回復を、そして敵には死ぬまで燃え続ける火を放つ事が出来る。
火に呑み込まれた昏倒している者以外の騎士たちのHPは回復し、ノブナガの“分身”は瞬く間に火に焦がされ消えていく。
いくらノブナガといえど、この火に殺られれば死は間逃れない。
ま、それは火に呑み込まれればの話である。
「うぁ、さすが“召喚師”。ド定番な奴を召喚してきたなぁ」
(ノブちゃんノブちゃん。みんながこっち見てるよ?)
今、ノブナガは軍隊たちの頭上に居たりする。
高みの見物をしているように空で仁王立ちし、下で起こった火の海を眺めて感心したように呟いた。
“魔弓士”のスキル“空踏”。
書いて字の如く、大気、または空気を足場にするスキルだ。
“分身”した直後、ノブナガは“空踏”で上空へ上り、“分身”全員の剣に“属性付与”をして高みの見物をしていたのだ。
つまり、軍隊の中にいたのはすべて偽ノブナガで本物を探していたのはまったくの無駄であったりする。
ノブナガの呟きが聞こえたのか、ノブナガを発見した騎士たちが次々と現れ、全員の視線を集める。
直後、空中にいるノブナガをフェニックスが襲い掛かる。
火の身体であるフェニックスに触れれば、それだけで致命傷レベルの火傷を負うだろう。
もちろん、そんな攻撃を無視するわけがないノブナガ。
「我が剣に宿れ水風っ。その刃は清め荒れ吹く水蓮疾風の剣ーー“ウォーター・ハリケーン・ソード”!!」
ザンガルドに水と風が付与され、迫り来るフェニックスに向かって振り下ろす。
剣に纏われた水が火を鎮火し、風がフェニックスの身体自体を叩き落とす。
地面が凹むほどの勢いはなかったが、下にいた騎士たちを巻き込んで落下し、消滅していったフェニックス。
この時点で5千いた軍隊は半分が戦闘不能になり、魔法天紋である後衛部隊はほとんどが負傷している事態。
この被害報告を受けたマサルは戦慄を覚える。
ほんの数分。
その数分だけで、2千5百の騎士が戦闘不能になったのだ。
未知の魔法を使うノブナガに戦慄を覚えないわけがない。
ノブナガは地面に着地し、周りを見渡す。
前衛部隊が1千5百ぐらい、中衛部隊と後衛部隊は5百ずつぐらいが残った。
「ひ、怯むな!あの男を取り囲め!!全員で攻めて叩きのめせ!!」
落ちてきた士気を取り戻そうと、マサルが全部隊に届くように叫ぶ。
その言葉に突き動かされるように部隊が展開され、ノブナガを包囲する。
(すごいねー。ここまで来て諦めないんだー)
(このままだと本当に全員と相手する羽目になりそうだな……そろそろ相手の希望を砕いてやろう)
(そうだねー)
包囲してくる騎士たちを眺めながら、2人で緊張感のない話をしているノブナガとザン。
面倒になってきたノブナガはザンガルドを掲げる。
直後、聖剣が光の粒子となって分解し、再構築する。
すると、短剣よりも更に短い、もう短い刀身だけに近い剣がノブナガの周囲に100本浮かんでいる。
ザンの“剣化”の派生スキル[+浮遊剣]だ。
急に変化した剣に驚愕している騎士たちを無視し、浮遊剣を操作するノブナガ。
上空へと浮き上がったザンガルドたちは中衛部隊と後衛部隊のいる方へ剣先を向ける。
剣先を向けられた騎士たちの背中がゾッと冷めた。
瞬間、ザンガルドたちが発射された。
勢いよく発射した浮遊剣は1本たりとも外す事なく、その数を減らしていく。
殺さないように注意していたザンによって、すべてが致命傷を避けた肩や足に突き刺さる。
もうすぐで包囲が完了しようとしていた所で、浮遊剣によってやられていく騎士たちを見て、足を止める前衛部隊たち。
だが、それだけでは終わらない。
次の瞬間、ノブナガはすべての戦意をへし折る。
虚空に向かって突き出される左手。
誰もがノブナガの行動に首を傾げる中、フィンガースナップの音が鳴り響く。
発生源はもちろん、ノブナガだ。
直後、虚空に大量の水が出現する。
その水がまるで洪水が起こったような勢いで流れていく。
洪水のように戦場を流れる水がその場にいるすべての騎士を呑み込み、溺れさせる。
水に呑み込まれた勢いだけで昏倒させ、それでも意識を保っている騎士には息ができない苦しみによって意識をブラックアウトさせていった。
水の上級魔法“アクアウェイブ・ダイブ”。
未だに上級魔法以上の詠唱を覚えていないノブナガは“水魔法”の方で本を見ながら詠唱したモノをストックして、[+遅延発動]したのだ。
普通の魔法天紋の者は魔法を1つしかストックでない上にストックしている間は他の魔法を使う事が出来ない。
しかし、“水魔法”と“闇魔法”、それに“全属性魔法”を持っているノブナガには“水魔法”と“闇魔法”にだけストックさせる事で、通常では成し得ない事が出来るのだ。
浮遊剣だったザンガルドは光の粒子となって分解され、ノブナガの手元で再構築、元の聖剣に戻る。
無拍で発動された“アクアウェイブ・ダイブ”は前衛部隊、それに浮遊剣で撃ち漏らした騎士たちも呑み込む。
水が鎮まった後に残ったのは地面に転がる騎士たち。
ノブナガのVITに耐えられる者はほとんどいなかったようだ。
そう、ほとんど、だ。
地面に転がって気絶している騎士の中、それぞれの武器を杖に起き上がってくる者が2人いた。
“勇者”のマサルと“召喚師”のマモンだ。
「さすが上級紋。上級魔法程度じゃ、倒れないか」
「お前っ……何もんだ!こっ、こんなっ、こんな事っ、あり得ない!あって堪るか!!」
「最初に言ったはずだ、名乗る名なんてないって」
立ち上がったマサルが叫ぶ。
それをサラリと振り払うノブナガ。
相手にする気はサラサラないようだ。
「ーー守護の剛腕を振り払え!召喚っ、“ストーンゴーレム”!!」
マサルが叫んでいる間、着々と詠唱を唱えていたマモンは詠唱を完成させ召喚する。
ノブナガの“分身”で全部隊が混乱している時にフェニックスを召喚した時にも感じたが、マモンはマサルのように感情的にならず冷静に判断できる者のようだ。
地面から迫り上がるように召喚されたストーンゴーレム。
全身が岩石をできたその巨体の圧力は猫に睨まれたネズミのように硬直しそうな迫力だ。
「これまた定番だな」
(ゴーレムかぁ。確かに硬くて厄介ではあるけど、弱点さえわかってたら簡単に倒せるしから楽だよぁ)
(弱点って……もしかして、額の文字か?)
(あれ?知ってた?)
(いや、それも定番だったから)
召喚されたストーンゴーレムの額に目を向ければ、確かにそこに文字が書かれていた。
相変わらず思うが、どうして弱点が露出しているのだろうか?
その定番に則って、ノブナガも額の文字を飾ろうかと思っていた。
しかし、
(戦意を削ぐ為にも、圧倒的な力を見せつけてやろう)
「重力は加重する。すべてはここに押し潰されるーー“重潰”」
瞬間、ストーンゴーレムがぺっちゃんこになった。
岩石でできたゴーレムの身体が目に見えない力によって押し潰されたかのように平べったくなる。
なんの抵抗もなく潰されたゴーレムを目の前にし、マサルとマモンは目を点にして固まる。
重力魔法“重潰”。
局所的に超重力を発生させ、一切合切を押し潰す魔法。
単純さ故に回避が難しい魔法だ。
「重力は加速する。我が身は指向へ進むべしーー“重加速”」
さらに重力魔法を発動するノブナガ。
指向的に重力を発生させ、移動速度を爆発的に上げる魔法だ。
それを使う事で、ノブナガは数百メートル離れたマモンまで一瞬にして接近する。
一瞬にして目の前にやってきたノブナガに驚き、硬直するマモン。
そんなマモンにノブナガは手加減の拳を放つ。
腹パンを喰らったマモンの身体がくの字に曲がらせ、意識をブラックアウトする。
ノブナガが腹に押し付けている拳を引けば、マモンは支えをなくして倒れる。
ノブナガの視線が最後の1人ーーマサルへと向けられる。
「っ、こうなったら切り札を切ってやる!“限界突破”!!」
マサルが“勇者”のみが習得できるスキル“限界突破”を発動する。
マサルの魔力がブワッと溢れ出し、その身に纏われる。
「“限界突破”はすべてのステータスを5倍するスキル。だがっ、レベル100を超えた俺にはそれを超えるスキルを持つ!俺にそれを切らせた事っ、後悔しやがれ!![+修羅]っ!!」
“限界突破”の派生スキル[+修羅]。
それは“限界突破”時間が短くなる代わりに全ステータスが10倍になる、“勇者”のみが使えるスキル。
限界を突破しているマサルのステータスがさらに上昇する。
「死ねぇぇぇえええええええええ!!!!」
マサルはさっきと比べものにならないほどの敏捷を見せ、ノブナガに襲いかかる。
剣を振り上げた型で、振り下ろしを放つ。
見えるはずもない音速の斬撃。
しかし、それはノブナガには遅過ぎる。
ガキンッと鉄同士がぶつかったような音が鳴り響く。
ノブナガが自分の斬撃を受け止めたのを目にし、マサルは目を剥いて驚く。
マサルがそうしている間に剣を弾き上げ、さらに身を捻ってからの回し蹴りが放たれた。
ステータスが10倍になっているおかげか、手加減されたノブナガの蹴りを耐えたマサル。
食らいつくように突きを放つ。
ザンガルドで弾かれる。
お返しばかりにノブナガの拳が放たれる。
顔面に真正面から受けたマサルはさすがに耐えられずに吹き飛ばされる。
地面を何回もバウンドし、ゴロゴロと転がって止まる。
顔面の痛みに呻き声を上げながらも、剣を杖に立ち上がるマサル。
よく見れば、鼻が変に曲がっていて鼻血を出している。
さらに前歯も何本か折れているようだ。
「なっ、何なんだよ!お前は!!」
痛みが酷いのか、目端に涙を浮かべながら叫ぶ。
「はぁ……だから、名乗る名はーー……そうだな。ここまで来たは名乗ってやるよ」
感情的に叫ぶマサルに飽き飽きしながら振り払おうとしたノブナガ。
しかし、ここに来て名乗って考えを変える。
名前を名乗っておいた方が、自分たちの存在が広く広がると思ったからだ。
ノブナガはニヤッと笑い、剣を構え名乗った。
「俺たちの名はーー“奪還者”。現王の娘エリーナ・アンディエルの下に集い、かつての国を取り戻す者の名だ」
ザンガルドの刀身から強力な光が放たれる。
ノブナガが通力を流し、溜めているのだ。
どんどん聖剣の刀身に通力が溜まっていく。
光がさらに、またさらに強くなっていく放光に目を奪われるマサル。
掲げるように振り上げられた剣。
(う……美しい…………)
それが“勇者”マサルが見た、最後の光景だった。
いつも「奴隷からはじまる下克上冒険」を読んで頂き、ありがとうございす。
作者です。
ここ何回かは1日1回の頻度で投稿させて頂いていましが、もう4月になって忙しくなって参りました。
なので、投稿日を日曜日に固定したいと思います。
来週の日曜から18:00頃に1週間書き溜めたものを投稿しようと思います。
急な決定ですが、これからも「奴隷からはじまる下克上冒険」をよろしくお願いします。 作者より




