更なる旅立ち
とっても短いです。 作者より
ネルラを追い返してから2日が経った朝。
ノブナガたちは旅の支度を終え、セインズ村の出口へとやって来る。
そこでノブナガたちを見送る為に集まってきたベリンやチヨ、それにクレハとマーレと向かい合っている。
「お世話になりました。ありがとうございました」
「世話になったのは私たちの方だ。家族を取り戻してくれて感謝する」
ノブナガが頭を下げると、ベリンが頭を下げ返す。
ノブナガが出会い始めた頃なら、ベリンが頭を下げるなど絶対にあり得なかった事だ。
そんなベリンを見て、クレハとマーレは驚いたように目を開き、チヨは口に手を当てながらニヤニヤとしている。
「あと、これを受け取ってください」
ノブナガはポケットからバッチのような物を4つ取り出し、それをベリンに渡した。
「なんだこれは?」
「もし結界の外に出る時があれば、必ず付けてください。これが結界内に入る為のアイテムになりますから。マーレさんは必ず持っていてください」
「ほぉ、こんな物を作っていたのか。何から何まで感謝する」
ちなみに、ベリンの言う何から何までとはこれだけではない。
村の復旧、それに村で氷漬けされた騎士たちの処分と“守護師”だったアルバーの処理もそうだった。
アルバーの処理は“守護師”の天紋を奪い、そのまま村の外に目立つように放置して来ただけだったりする。
もちろん、ステータスプレートは偽造を作って置いておいた。
「これからどこに行くんだ?」
「東の方へ行こうかと思います。そこから帝都の様子でも探ろうかと」
「そうか。道のりは危険かもしれないが、お主たちなら問題ないだろう」
「はい。問題ないです。もし何かあったら、昨日渡したボタンを押してください。飛んで来ますんで」
昨日渡したボタンとはリモコンのようなものだ。
そのボタンを押せば、ノブナガが持っている魔石が光って知らせてくれるという仕掛けである。
「それじゃ、俺たち行きます」
「あ、ちょっと待て」
踵を返そうとした瞬間、ベリンが静止を呼びかける。
「あー、その……なんだ」
ベリンの言葉を待つが、歯切れの悪い言葉しか出てこない。
こんなベリンは見た事がないので、どうすればいいかわからないという風に戸惑うノブナガたち。
シーンとした静寂が流れる。
すると、ベリンの背中を叩く者がいた。
それはベリンの妻であるチヨだった。
叩かれた本人は驚いたように振り返り、チヨを見る。
チヨはベリンに微笑みかける。
最初はわからなかったベリンだが、徐々にチヨの想いに気がつく。
背中を押してくれたのだ。
歯切れが悪いベリンの背中を押してくれたのだ。
自分の意見を言えるように。
「そうだな。私らしくないな」
振り返り、ノブナガを見る。
不思議そうに見ているノブナガに向かってベリンは言う。
「私の天紋“賢者”も連れて行ってはくれないか?」
「ッ!?……いいんですか?」
ベリンの申し出に驚くノブナガ。
「あぁ、構わない。私には必要ないものだ」
「でも……」
「いいと言っている。もう決めた事だ」
「…………わかりました」
覚悟はもうできているようで、ノブナガを見る目は本気だと言ったいる。
その覚悟を一身に受けたノブナガはスキル“簒奪”を発動させる。
ベリンから“賢者”の天紋が抜け、ノブナガに譲渡される。
すでに「チート?なにそれ美味しいの?」レベルになっているノブナガのステータスがさらに上昇する。
「確かに受け取りました。ベリンさんの想い、大事にします」
「うむ。そうしてくれ」
自分の意見を言えたベリンは満足気に頷く。
「では、俺たちは行ってきます」
「行ってきます」
「行ってきまーす」
等々、ノブナガたちは旅立った。
セインズ村の出口を潜り、未だに手を振っているベリンたちに向かって手を振り続ける。
「はあー、楽しかったね!」
「そうですね。またクレハさんたちと遊びたいです」
「また来れます。村の方に座標転移ようの術式を設置して来ましたから、その気になればすぐに帰れますよ」
必ず守ると約束したのだ。
危険を知られが来た瞬間にでも帰れるようにしておくのは当たり前である。
と言っても、座標転移なんて強大な魔法を使う魔力量は膨大なせいでいつでも好きに帰れるというわけではないが。
「それじゃ、一気に東に行ってみよー!!」
「国境スレスレを通って行くから時間は掛かるけど」
「それはそれで楽しいですよ?」
「それもそうですね」
相変わらずノブナガとエリーナは互いに敬語なご様子。
2人の女性に挟まれたノブナガの対応の違いがとてもシュールだった。
こうして、ノブナガたちはセインズ村は旅立った。
すでに国をどうこうの規模を超えているが、それでもノブナガたちは戦う。
その先に待っているのが、ノブナガにとって最悪である事にも気付かずに。
**********************
ある夜。
月に一度行われる軍の遠征に、若き“剣聖”であるアリンカ率いる軍隊がタルワーリア町に訪れていた。
若き“剣聖”アリンカは遠征の為の打ち合わせを終え、上を見上げる。
見上げた先には、このタルワーリア町を見渡せるような崖の上にある教会が建っていた。
「明日の夜、行くからな」
誰にも聞こえない声でそう呟き、また町の中を歩き始めた。




