『ボク』と『友達』との青春の思い出 5
来たる日曜日。
ボクは駅前で1人でみんなが来るのを待っていた。
1人なのはもちろん、出かけること自体が久々だったので、ちょっと緊張している。退院した後もずっと松葉杖で歩いていたので、あまり遊びに出たことはなかった。
完全に治ってからはすぐ受験が控えていたので、家で勉強していることの方が多かった。
だから今日が楽しみで、ちょっと寝不足気味なのは誰にもばれないようにしたい。
だって恥ずかしいじゃない。
約束の時間はたしか10時だったはずだけど、ケータイの時計を見てみれば、まだ9時45分だった。楽しみにしすぎて早く来てしまっただろうか。
仕方なしに近くのコンビニに立ち寄ってみる。特に用はないんだけれど。
雑誌コーナーを見てみれば、入院前によく読んでいる週刊誌があったので、手にとって立ち読みしてみる。
週刊少年誌をパラパラとめくって中身を見てみると、ボクが好きだった漫画は連載が終わっていたようだった。
すると、後ろから声をかけられた。
「東山さん、おはよう」
170cmぐらいだろうか、今のボクからしてみれば結構大きい身長を持った、けれどどこかのほほんとした男の子が立っていた。
「おはよう、岸くん」
岸翔くんは、匠の後ろの席の男の子で、いつの間にか匠と仲良くなっていて、その流れでボクたちとも仲良くなっていた、コミュニケーション能力が非常に高い人だ。
もともと、今日の集まりはボクが匠にレシエールのシュークリームを奢ってもらうところが発端で、決まった時には会話にすら入っていなかったはずなのに、いつの間にか一緒に行くことが決まっていた。
それをボクが知ったのは、何を隠そう昨日のことである。
ケータイのメッセージアプリ、RIENに星奈から、
『明日10時に駅前集合!』
と送られたグループメッセージに中に、ボク、佳奈、千里、匠、最後に岸くんの名前があったことにより、ようやく参加が決まっていたことを知ったのだった。
誰が決めたかは知らないけれど、昨日まで知らされていないとか、岸くんも大概可哀想だと思う。
ボクは手に取っていた週刊誌を陳列棚に戻す。
すると岸くんがそれを見て話しかけてくる。
「東山さんって、そういうマンガとかも見たりするんだ」
「今はそんなに。中学の時には見てたんだけど、昔見てたマンガはまだやってるのかなって」
「あぁ、そういうの気になるときもあるよね」
「もしかして、ボクがこういうの見てたらなんか不味かった?」
「いや、マンガとか見ない真面目な人だと思ってた」
「そんなことないよ」
そんな当たり障りのない会話をしていると、星奈からメッセージが届く。
『今、西口についたよっ!西口の売店の前!』
なぜか犬のスタンプを一緒に送ってきた。
意味がわからないなとクスリと笑い、岸くんにメッセージの画面を見せた。
「星奈もついたみたい。西口の方だって」
「うん、じゃあそっちの方行こうか」
ボクと岸くんは星奈が待っているであろう西口に向かうため、コンビニを後にした。
「ところでさ」
「ん?どうかした?」
コンビニを出てすぐに、不意に話しかけられる。
何か買うものでもあっただろうか。
「そのスカート、よく似合ってると思うな」
「え?あ、ありがとう」
ボクの腰から下に履かれている、赤いチェックのそれを見て岸くんは言った。
いきなり言われてちょっと動揺したけれど、これなら大丈夫かな、と思った。
西口に来てみれば、星奈は居なくて、千里だけがいた。
ボクは千里に駆け寄った。
「千里っ、おはよう」
「あー、悠希ちゃんおはよー、岸くんもー」
「うん、近江谷さんおはよう」
ボクは千里と握手して挨拶する。
最近の千里のお気に入り挨拶だそうで。
手をぶんぶん振って握手をした。
「ところで、他には誰も来ていないの?」
「星奈ならー、あそこにー」
千里が指差す方を見てみれば、売店で買い物をする星奈がいた。
会計を済ませたのか、荷物を持ってこっちへと近づいてくる。
「ゆっきーに岸くんやほー」
「星奈、おはよう……今からそんなに食べるの?」
「朝ごはんは大事!ですから!」
相変わらずテンションの高い星奈は、菓子パンを3つほど買ってきていた。
菓子パンって結構カロリー高いから、1つか2つでお腹いっぱいになるんだよなぁ。
そのかわり腹持ちは良くないけど。
菓子パンをひとつ食べ終えた星奈がボクに話しかける。
「ゆっきーゆっきー、今日の服似合ってるねっ」
「ありがと星奈。あ、そういえばさっき岸くんにね……」
星奈にさっきあった出来事を話そうとしていると、見知った顔が2人近づいてくる。
「ごめんっ、遅れた?」
「悪いっ、待たせた」
息ぴったりにそう言って、お互いの顔を見合わせて、被せんな!と喧嘩を始めた2人。
ボクはその間に入って、仲裁をする。
「匠も佳奈もストーップ、みんな待ってるからね」
幼馴染同士の、いつも通りのやりとりだ。
「ほえー、ゆっきー手馴れてるねぇ」
「いっつもボクが仲裁役だからね」
「匠、いつも南海さんとあんな感じなのかい」
「あぁ、あいつあれで怒りっぽいからな」
それぞれに話をしていれば、佳奈が全員に話し始める。
「とりあえず移動しよう?目的はレシエールだけど、アホの子がなぜか今パン食べてるから、そっちは後でいいよね」
当初の目的はレシエールでシュークリームーーこれはボクだけかーーを食べることだ。
なのに今のタイミングで菓子パンを頬張ってる人がいるものだから、そっちは後にしようと言うのが佳奈の提案だった。
「ボクは賛成。でもどこに行こうか」
反対の人も特にいないので、どこに行くかの話をする。
あー、と思い出したように千里が言った。
「最近駅のデパートの上の方にゲームセンターができたって聞いたんだけどー、そこに行ってみるー?」
匠とボクが顔を見合わせた。
2人でニカっと笑う。
「賛成、行ってみよう」
「賛成、行ってみようぜ」
佳奈がため息をついていたけれど、他に意見もないので、みんなでゲームセンターに行くことにした。
「ところで」
「どうしたの?」
移動しながら匠がボクに話しかけた。
ボクは話しかけられるまで星奈と、匠は岸くんと話していたので、2人もボクらの話を聞いていた。
「悠希のそれ、似合ってるな」
「それはどーも。佳奈的にも及第点かな」
前に病院で褒められたこともあるから、ある程度服のことを言われるのは慣れていた。
星奈も岸くんもうんうんと頷いていたけれど、後ろから佳奈が厳しいことを言う。
「でもそれ、スカートじゃなくてキュロットでしょ?その辺が悠希は甘いというか」
「……へ?」
岸くんだけが何故か驚いていた。
「あー、やっぱりスカートじゃなかったか。悠希だからそっちは避けると思ったんだよな」
「えー、キュロットスカート可愛いじゃーん」
「うんうんー、悠希ちゃんは可愛いよー」
なんか1人だけ褒め方が違った気がするけれど気にしない。
ボクの今日の服装は、VネックのTシャツに、白のパーカー、赤いチェックのチュニックスカートとニーハイソックス、靴は動きやすさ重視でスニーカーだ。
さっき岸くんに服のことを言われた時には言っていなかったけれど、ボクはスカートを履いているなんて一言も言っていない。
何か岸くんが狼狽えている。
「え、さっきスカートのこと言った時は何も……」
「翔、悠希はわりとこういうやつだ。真面目に見えて、意外と冗談とかもいう。騙されたお前が悪い」
「人聞きが悪いなぁ、勘違いを訂正しなかっただけだよ」
「なお悪いわ」
他愛もない会話をしながら、ボクたちはゲームセンターへと向かって歩いた。
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18話目からのサブタイトルを変更しました。
旧『ボク』が『学校』に慣れるまで
新『ボク』と『友達』との青春の思い出




