『ボク』と『友達』との青春の思い出 6
ゲームセンターについたボクは、その喧騒にすこしだけビックリしていた。
「うわっ、ゲーセンってこんなにうるさかったっけ」
「今は音ゲーとかも多いからな、こんなもんじゃないか?」
最後に来たのは中学の1年の終わり……2年の頭だっけ。どっちもそんなに変わらないからもうどっちでもいいけど、とにかく2年近く前のことだから、覚えてなくても仕方ないのかもしれない。なんだか知ってる物じゃなくなったようで、ちょっと寂しかった。
「あー!あれかわいー!」
と星奈がUFOキャッチャーに向かって走り出した。千里が「まってー」と後をついていく。
そんな様子を見ていたボクに、匠が声をかけた。
「悠希、久々にあれ、やるか」
「いいよ。むしろ、そのためにここに来たのもあるし」
「だな」
ボク達がそう言い合っているのを、岸くんがあれどうしたの?と佳奈に聞けば、佳奈は首を振り見ていたらわかるわとだけ言って後をついてきた。
そうしてついたのは、昔ながらの格闘ゲーム。3つのボタンと球体のついたスティックで操作するあれだ。
「悠希、2年越しの勝負に決着をつけようじゃないか」
「望むところだよ。返り討ちにしてあげる」
ボクは気合いを入れるために髪を後ろで一括りにする。
そして、100円玉を入れようとして、
「あ、違う悠希。今これ50円でできるんだよ」
「え、そうなの」
と匠に訂正される。知らなかったなぁ。いつの間にそんな風に値段変わってたんだろ。
ボクは財布に100円を戻して50円玉を探したけれど、見つからない。
「ボク、両替してくる」
「いや、しょうがねぇから奢ってやるよ。どうせ知らないだろうと思ってさっき100円崩してきたしな」
そう言って匠はボクに50円を押し付けてくる。
「いや、悪いよ」
「いいから。あんまりこればっかりやってる時間もないし、気になるなら今度返してくれ」
こうなると匠も聞かないので、ボクは渋々匠から50円を受け取ってゲームの筐体に投入する。
対戦モードを選び、それぞれキャラクターを選ぶ。ボクは筋肉むきむきの、プロレスラーのような髭の生えたおじさんのキャラクターを。匠はえっちな服装のお姉さんのキャラクターだ。……女の人のあーいった服は、なんかゲームの中とはいえ見るのが恥ずかしいな。
「なんか、東山さんのキャラがわからなくなってきたよ……」
「あら、悠希は昔っからあぁいう筋肉むきむきのキャラが好きだったわよ?」
僕の後ろで岸くんが幻滅しているような気がするけどまぁいいか。後佳奈、そういう誤解を招くような言い方はしないでほしい。確かに勇気だったころは逞しい男の子に憧れていたけれど、今の悠希の姿だと違う意味に捉えられそうだ。
ファイっ!とゲームの音声の声が響く。ボクと匠はガチャガチャとレバーを動かしながら、ボタンを押す。
「よく見たら東山さん、レバー下から持ってる。結構やりこんでたんだね……」
「あぁ、ムキになる悠希かわいいわ」
気が散るから変なことを聞こえるように言うのはやめてほしい。
そうこうしている間に、だんだんとボクのキャラのHPが減っていき……。YOULOSEと画面に表示される。
「あーあ、負けちゃった」
「はっはっは。甘いぞ悠希!」
どこか癖のある発音でそんなことを言う匠。
佳奈も岸くんもどこか呆れ顔だ。
「匠、もっと手加減してあげても良かったんじゃないの。東山さんだって女の子なんだし」
「バカ、ブランクあったから勝てただけで、本当は俺よりもずっと強いぞこいつ。多分次やったら負ける」
「うん、今ので勘が戻った気がする。匠、も一回やろっ」
「やだよ、この後シュークリームだって奢るんだし、ゲームでくらいいい気分にさせろい」
ボクと匠がもう一回やるやらないで言い争っていると、星奈と千里が帰ってくる。……なぜか星奈が腕いっぱいにぬいぐるみを持って。
「いやー、大漁大漁。たのしかったー!」
「すごいね。星奈が取ったの?」
星奈が持ってるんだから、てっきり星奈が取ったんだと思ったんだけれど、そうじゃないようで。
「んにゃ、取ったのはちーだよ」
と言った星奈の後ろで、千里がドヤ顔ダブルピースをしている。……そういうのってあんまり公共の場でしないほうがいいんじゃないかな。
「というわけで、はい、はい」
星奈は腕の中のぬいぐるみを、ボクと佳奈に渡してきた。ボクには黒猫のぬいぐるみ。佳奈には犬のぬいぐるみだ。
「って、千里が取ったんじゃないの?」
「うん、取ったのはちーだけど、お金は私んだから、別にどうしたっていいでしょ?」
うん、まぁ、それはいいんだけど。そう思ってると、千里が耳打ちをしてくる。
「星奈ねー?プレゼントしたいって言って出来なくて、私に泣きついてきたんだよー?だから貰ってあげてー?」
「あ、ちーそれ内緒って言ったのに!」
「あれ、そうだっけー?ごめーん」
飄々と言う千里と、それに怒る星奈。佳奈もぬいぐるみを貰って嬉しそうだ。
「そっか、それなら大事にするね。ありがとう、星奈」
そう言って、ボクは貰ったぬいぐるみを腕でぎゅっと抱きしめた。
星奈はそれを見て嬉しそうに、けれど照れ臭いから誤魔化すように、
「あ、プリクラ撮ろう!あっちに新しい機械あったし!」
と言って一人で行ってしまった。
僕たちはそれが可笑しくて。顔を見合わせて笑い、星奈を追いかけるのだった。




