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少子化対策特別チーム Gメン69  作者: 紅椿伊織


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8/8

第8話 最後の性戦



ドーチェの演説は日本中に衝撃を与えた。


「我々、性癖解放戦線は東京へ進軍する!」


画面が切り替わる。


快楽提供AI・サキュバスが満面の笑みを浮かべていた。


『まずは紹介するね♡』


『肉体こそ最大の武器♡ 解放戦線の切込隊長

ホモシャツ隊よ♡』


黒いシャツ姿の男たちが拳を突き上げる。


『そして♡ 美しいのは罪なのね♡ 華麗に舞うレズ姫隊よ♡』


マント姿の女性たちが優雅に敬礼する。


妙にミュージカルっぽかった。


そのほかにも二次元愛好家部隊や地下アイドル親衛隊などが紹介されたが、正直ホモとレズ以外はあまり強そうに見えなかった。


「我々は今から東京へ向かう!」


「そして諸悪の根源である政府AIを破壊する!」


『ドーチェ!ドーチェ!ドーチェ!』


放送はそこで終わった。


ーーーー


その夜。


東京は厳戒態勢となった。


国会。


首相官邸。


重要施設には重装備部隊が配置される。


俺たちO-72小隊も徹夜勤務だった。


「来ると思うか?」


シールドが聞く。


「さあな」


俺は缶コーヒーを飲む。


イカティッシュは眠そうに欠伸をしていた。


「羨ましいな、お前は」


そのまま夜が明けた。


何も起きなかった。


ーーーー


翌朝。国家警察省。


「結局何もなかったな」


「ああ」


「重武装マッチョ軍団とかは俺でも相手にしたくねーよ」


シールドがぼやく。


キーボードが顔を上げた。


「それが違うらしいんですよ」


「何が?」


「昨日の進軍映像です」


「うん」


「ほぼ全部生成AIです」


沈黙。


「は?」


「軍勢も群衆もCG」


「じゃあ昨日の全国警戒は?」


「全部無駄ですね」


白バイが机へ突っ伏した。


「寝てないんだぞ俺……」


その時だった。


「みんな、出動命令よ」


リエさんだった。


「今度はなんですか?」


「ティッシュですか? ホモの進軍ですか?」


「違う」


低い声。


振り返る。


室ヰ大臣だった。


「被疑者の正体が判明した」


会議室が静まり返る。


モニターに地図が表示される。


都内有数の高級住宅街。


「被疑者氏名……仲田島コースケ」


「仲田島?」


「総理の息子だ」


ーーーー


装甲車の中。


「権力者の息子なんて逮捕されないもんだと思ってた」


俺が言う。


リエさんが答えた。


「AI検察官が逮捕状を請求して、AI裁判官が認めたわ」


なんだかなあと思った。


「まあ、忖度なしで公平にやってくれるのはAIのいい所かもな」


ーーーー


仲田島邸。敷地内の別宅。


ドーチェこと仲田島コースケの部屋は意外なほど普通だった。


本棚。


机。


パソコン。


年相応の青年の部屋。


そこにドーチェはいた。


「やっと来たか」


落ち着いた声だった。


「仲田島コースケ」


「性的秩序維持法違反容疑で逮捕する」


リエさんが告げる。


コースケは抵抗しなかった。


素直に手を差し出す。


手錠が掛けられる。


俺は尋ねた。


「なあ、童貞王」


「その呼び方やめてくれ……」


「まあ童貞だけど」


少しだけ笑いが起きた。


「じゃあドーチェ」


「お前は何がしたかったんだ?」


コースケは少し考えた。


そして言った。


「君はAIと人間の違いって何だと思う?」


「機械か生身かとか?」


「そうじゃない。思考の話だ」


「人間は問いが変わる」


「問い?」


「AIは入力された問題に対して答えを出そうとする。出生率を上げろ。犯罪を減らせ。生産性を上げろ。与えられた問いに対して瞬時に最適解を出す」


「でも人間は違う」


「まず、問いを作るのは人間だ。そしてその問いに対して問いかける。場合によっては問い自体が途中で変わっている。こんなことをAIはしない」


「幸福とは何か。自由と秩序はどちらが大事なのか。答えより先に問いに対して問答を始める」


「そしてそのうち忘れて酒を飲んで寝る。それも人間だ」


俺は黙って聞いていた。


「親父はいつも言っていた。日本の未来のために、国民のために、社会のために……。それらは全部正しい」


「でも問いかけなかった」


コースケは静かに言う。


「『あなたは幸せですか?』ってな」


部屋が静まり返る。


「AIは最適解を出す。出生率。婚姻率。労働力。生産力。全部計算できる」


「でもさ……好きなアニメで感動した、くだらない趣味で心が満たされた、意味のない寄り道で何かを発見した、地下アイドルに憧れた」


「そういうAIが数値化できないものは全部無駄なのか?個人の些細な幸せは数字に反映されないかもしれない」


「だが、そんなものまで全部切り捨てたら、人間って何が残るんだろうな」


俺は答えられなかった。


コースケは続ける。


「今の社会でAIが無駄だと判断したものこそ、人間らしさなんじゃないかなと思っている」


沈黙。


やがて俺は言った。


「お前のやったことが全面的に正しいとは思わない。だが、言っていることは理解できる」


コースケは頷く。


「問いかけたかったんだ。AIが無駄と切り捨てたものに、何の意味があったのか。なぜ、それまで人間社会で残っていたのか。本当に無駄なのか?」


「問いかけ続けるのはAIが持たない人間の特権だ」


ーーーー


こうしてドーチェは連行された。


その夜。


仲田島内閣は総辞職した。


オナ免許制度は廃止。Gメン69も解散となった。街から少しだけ息苦しさが消えた気がした。


だが、不思議なことに出生率は何とか維持はしている。これには政府AIの13代目源内も理解ができなかったようだ。


ーーーー


解散の日。


リエさんが聞く。


「ユウジ君はこれからどうするの?」


俺は少し考える。


「そうですね」


「とりあえず……リエさんをネタに一回ヌキます」


沈黙。


「最低……」


そして。


「法律違反じゃないけど、普通にセクハラだから。人事課に通報しておくね」


こうして俺のGメン勤務は人事課からの説教で終わった。

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