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少子化対策特別チーム Gメン69  作者: 紅椿伊織


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第1話 AIが導き出した少子化対策

西暦2069年。


日本の人口は、ついに八千万人を割り込んだ。


夕方の公園。


錆びたブランコが風に揺れている。


遊ぶ子どもはいない。


ベンチに座る老人たちだけが、無言で同じ方向を見ていた。


地方都市は静かに死につつあった。


廃線。


廃校。


自治体消滅。


それらはもう、“たまに聞くニュース”ではない。


日常だった。


だが政府の少子化対策は、ことごとく失敗していた。


子育て支援。

教育無償化。

婚活補助金。

ラブホテル宿泊ポイント制度。


それでも出生率は下がり続けた。


合計特殊出生率 0.39


人類史上でも、前例のない数字だった。


ーーーー


総理官邸地下。


国家戦略演算室。


巨大な球形演算機の中心で、青白い光が脈動している。


政府中央演算機 《GENNAI XIII》


通称十三代目源内。


かつては省庁向け業務支援AIとして開発されたそれは、半世紀の進化を経て、ついに国家運営そのものを補佐する存在となっていた。


総理大臣が疲れ切った顔で言う。


「オッケー、GENNAI」


『ハイ』


無機質な音声が響く。


「出生率を上げる方法はあるか」


『確認シマス。“出生率”トハ人口千人当タリノ出生数……』


「悪かった。合計特殊出生率だ」


『“合計特殊出生率”デスネ』


総理は深くため息をついた。


「……上げる方法はあるか」


数秒の沈黙。


直後。


壁面モニターが一斉に点灯した。


グラフ。


統計。


消費推移。


SNS利用率。


動画配信視聴時間。


VR恋愛市場規模。


推し活関連支出。


そして中央に、巨大な赤文字。


《合計特殊出生率 0.39》


閣僚たちが息を呑む。


GENNAIが告げた。


『分析結果ヲ報告シマス』


『現代娯楽ハ、人類ノ繁殖本能ヲ代替シテイマス』


「それがどう関係するんだ?」


GENNAIは続ける。


『動画配信、SNS、VR恋愛、ソーシャルゲーム、推シ活』


『コレラハ低コスト高満足ノ疑似生殖行動デス』


『規制ヲ推奨シマス』


「馬鹿な!」


経産大臣が叫ぶ。


「アニメ・ゲーム・配信産業は日本最大の輸出産業ですぞ!」


「文化弾圧だ!」


「国民が黙っていません!」


閣僚たちが口々に反論する。


だが総理だけは黙っていた。


やがて低い声で呟く。


「……国民がセックスしないと、日本は滅びる」


誰も反論できなかった。


GENNAIが静かに続ける。


『人類ハ快楽ノ最適化ニ成功シタ結果、“繁殖”ノ必要性ヲ失イマシタ』


静まり返る会議室。


総理が問う。


「……対策は」


モニターに、一人の男の肖像画が映る。


黒い修道服。狂気的な眼光。中世の説教師。


『最適参考人格モデル』


『ジロラモ・サヴォナローラ』


「誰だそれは……」


『ルネッサンス期ノフィレンツェニテ、快楽文化ノ排除ニ成功』


「待て!」


文科大臣が青ざめる。


「芸術を燃やした狂信者だぞ!」


「国家の自殺行為です!」


だがGENNAIは止まらない。


モニターに新たな文字列が表示された。


ーーーー


国家生殖保全計画


①非生殖型娯楽規制

②国家婚姻推進制度

③性癖矯正支援

④非生殖性行為許可管理制度


ーーーー


沈黙。


嫌な予感が会議室を包む。


厚労大臣が恐る恐る聞いた。


「……最後の項目を説明してくれ」


『性的快楽ノ国家管理デス』


「具体的には」


『過度自慰行為ハ生殖意欲低下ノ危険因子デス』


数人の閣僚が視線を逸らした。


『将来的ナ全面禁止ヲ視野ニ、許認可制度ヘ移行シマス』


「待て待て待て!」


厚労大臣が机を叩く。


「誰がそんな許認可制度を担当するんだ!?」


「オナ免許の発給者に“厚生労働大臣”と書かれるのは嫌だ!」


会議室に重苦しい沈黙が落ちる。

誰もそんな恥ずかしい免許の発給者になりたくなかった。


女性閣僚が、おそるおそる手を挙げた。


「あ、あの……それは男性だけの話ですよね?」


一瞬の静寂。


GENNAIが答える。


『イイエ。女性ガ自慰行為ニヨッテ得ル、オルガスムスハ……』


「わかった! わかりました!!」


女性閣僚が顔を真っ赤にして叫ぶ。


「そ、それ以上説明しなくて結構です!!」


GENNAIは構わず続けた。


『国家警察省内ニ、新組織ヲ設立シマス。新組織ハ……』


こうして、AIが示した少子化対策案は狂気を伴って生まれた。

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