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「ただいま戻りました……って誰もいないか」

 まずはここまで連れて帰ってこられたことを褒めて欲しい。

 案の定女性を与えられた。

 渡されてからは一切目を見ないようにして引っ張った。

 たまに前に進んでくれず困ったが、車がないのだから仕方ない。

 結局最後は背中を押しながら進んでいた。

 次は台車を持っていこうかなと考えていた。

 玄関には捕食者と被捕食者が並んで立っていた。

 被捕食者たる彼女は小さく不気味に笑っているし、捕食者たる僕は固まっている。

 僕はとりあえず自室へ行こうと足を進め始めた。

 その歩みに彼女も恐怖もついてきた。

 彼女が、僕の背後にいた。

「あはは、はは」

 力なく笑うその声はあまりに不適で気味が悪かった。

 今僕が振り返れば彼女は正面を向いているはずだ。そしたら、きっと眼がある。

 想像して息が詰まった。

 考えるな。そう思うほど過去と想像がループしていき、空気肺から逃げていった。

 自室に入ると、手の紐の張りが強くなったので、僕はもう一度強く引っ張った。

 その瞬間、背後で鈍い音がした。今まで感じていた気配の位置が変わったような気がした。

「ひっ」

 反射的に振り向くと、彼女はひっくり返っていて、その足元には紐が絡まっていた。笑っていた。

 その眼の奥は笑ってなかった。

 僕は深海の水圧に心臓を潰され、その場で思いきり尻もちをついた。

 衝撃で脳が揺れ、視界がぼやける。

 あれ……前が……。

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