17
「ただいま戻りました……って誰もいないか」
まずはここまで連れて帰ってこられたことを褒めて欲しい。
案の定女性を与えられた。
渡されてからは一切目を見ないようにして引っ張った。
たまに前に進んでくれず困ったが、車がないのだから仕方ない。
結局最後は背中を押しながら進んでいた。
次は台車を持っていこうかなと考えていた。
玄関には捕食者と被捕食者が並んで立っていた。
被捕食者たる彼女は小さく不気味に笑っているし、捕食者たる僕は固まっている。
僕はとりあえず自室へ行こうと足を進め始めた。
その歩みに彼女も恐怖もついてきた。
彼女が、僕の背後にいた。
「あはは、はは」
力なく笑うその声はあまりに不適で気味が悪かった。
今僕が振り返れば彼女は正面を向いているはずだ。そしたら、きっと眼がある。
想像して息が詰まった。
考えるな。そう思うほど過去と想像がループしていき、空気肺から逃げていった。
自室に入ると、手の紐の張りが強くなったので、僕はもう一度強く引っ張った。
その瞬間、背後で鈍い音がした。今まで感じていた気配の位置が変わったような気がした。
「ひっ」
反射的に振り向くと、彼女はひっくり返っていて、その足元には紐が絡まっていた。笑っていた。
その眼の奥は笑ってなかった。
僕は深海の水圧に心臓を潰され、その場で思いきり尻もちをついた。
衝撃で脳が揺れ、視界がぼやける。
あれ……前が……。




