第十五話:終焉の序曲、あるいは亡霊の咆哮
第十五話:終焉の序曲、あるいは亡霊の咆哮
大陸横断特急『オリオンの盾』号が、友好国の首都「セントラル・コア」の壮麗な中央駅に滑り込んだ時、そこには祝祭の空気ではなく、肌を刺すような緊張感が漂っていた。
「感慨に耽る時間はなさそうね、颯真」
ホームに降り立つなり、エレーナが周囲を警戒するように呟く。彼女の視線の先には、重武装した治安部隊と、険しい表情で私たちを待ち受ける情報部の高官がいた。
もたらされた情報は、休息の余韻を吹き飛ばすに十分なものだった。
隣国での強襲を逃れたエクリプスのリーダーとその副官が、この首都の深部に潜伏。組織の崩壊を、この平和な都市を巻き込んだ「巨大な復火」によって上書きしようとしているというのだ。
「奴らの狙いは、建国記念式典が行われるメインスクエア。……そして、その地下にあるエネルギー管理プラントよ」
治安部隊の要請を受け、私たちは直ちに捜査協力に入った。
エレーナは首都の通信網を密かにジャックし、エクリプスが残した微かな信号の残滓を追う。私はソウマとしての直感——破壊者の心理を読み解き、奴らが「最も美しく、最も残酷に」都市を壊せる場所を特定していった。
潜伏先:旧市街の骨董倉庫
「見つけた。……信号の出所は、旧市街の北端。廃墟となった時計塔の地下よ」
エレーナの指がタブレット上で一つの地点を指し示す。そこはかつて、ADUADSの原型となった「トイ&アート」の古い模型展示場があった場所でもあった。
テロ計画の全貌も明らかになった。
奴らは、プラントの過負荷を引き起こし、都市のインフラそのものを爆発的なエネルギーの暴走で焼き尽くそうとしていた。組織という「手足」を失ったリーダーが、自らその指先となって世界の喉元を掴もうとしている。
「自分たちの居場所を奪った世界を、道連れにするつもりか」
「……行かせないわ。そんな悲しい結末、私たちの『おもちゃ』が許さない」
出撃:鋼鉄の決意
貨物車両の奥、深い眠りについていたADUADSが、再びその赤い目を覚ました。
整備点検は完璧だ。エレーナが旅の途中で施した即席のアップデートが、装甲の隙間で青白く明滅している。
『System All Green. Mode: Final Mission.』
「エレーナ、最終チェックだ。出力制限を解除しろ。……相手はもう『駒』じゃない。死を覚悟した猛獣だ」
「解除完了。……颯真、これが最後の戦いになるわ。一緒に、この悪夢を終わらせましょう」
ハッチが閉じ、ディーゼルエンジンの力強い鼓動が、静まり返った貨物エリアに響き渡った。
ADUADSがフラットカーからゆっくりと大地へと降り立つ。
「目標、旧市街時計塔。……全速で移動を開始する!」
夜の帳が降り始めた首都の路地を、四本の脚が激しく叩く。
街の平和を守るためではない。自分たちの旅の決着をつけるために。
鋼鉄の守護神は、亡霊たちが待つ最後の戦場へと、その牙を剥き出しにして疾走を開始した。




