255──エピローグ①
本日3本投稿です。
「う、ううぅ~ん······」
なんだか、いやにぼやけた世界だな······。
ここは······。
「························ああ、俺の······部屋?」
いや······。
見覚えのない······部屋だ。
こんな天井は見た事がない。
「············」
起き上がってみる。これまた、具合の良いベッドの上のようだ。
ボーっとする頭で、辺りを見回してみる。
綺麗な部屋だ。
少し片付き過ぎてるけど、明るくて、穏やかな日の光が差し込む、暖かい部屋だ。
こんな良い部屋に、住んでたっけ?
「············」
ベッドから下りてみる。足下がおぼつかない。腰に力が入らない。
「おっとと······」
思わずベッドに手をついて、そのまま座ってしまった。
「ふう······なんだか、力が入らないな」
それにしても、ここ、どこだ?
もしかして······またタイムリープした。とか?
「······あれじゃあな······」
幸い、記憶はある。
俺は最後にシリウスと共に消滅したはずだ。
目の前で塵になって消えていく奴の最期を見た。
あんな中で俺だけ無事だったとは思えんしなあ。
となると、また死んだんじゃなかろうか。
そんでもって、タイムリープした。
今度はどの時期の誰となってリープしたのか。
そんな勝手な憶測を頭の中で構築しながら、何気なく辺りを見ると、鏡があった。
中には山田太郎こと、俺、レグルスが居た。
「············へ? 俺?」
俺だ。
すっかり馴染んだレグルス。
「あれ? 俺、もしかして······助かった──」
──ガチャッ──
「レグルスー。今日も良い天気よ~。あんたもさあ、何時までも寝てないで、そろそろ······」
「あ」
「──へ?」
ドアを開けて入ってきたその人物。
それはキエラだった。
俺の頼もしき相棒だ。
あのアンノーンの大群との激戦をちゃんと切り抜けてくれたのか。
信じてはいたが、やはりホッとした。
「おお、キエラ。お前、無事だったんだな。よかった、よかった」
「························レ、レ······」
「レ?」
呆然と立ち尽くし、驚愕の顔を浮かべるキエラ。
しかし、その表情が震えだし、潤んだ瞳がぶわっと涙を溜めた。
「レグルスうううーー!!」
──ガバッ──
「うおおっ?!」
いきなり叫んで、突然抱きついてくるキエラ。
「あんた起きたなら、起きたって言いなさいよおー! ほんとに、そういうところがアンポンタンなんだからあぁー!!」
「キ、キエラ?」
泣きじゃくりながら、何の抵抗もなく熱い抱擁をさらに強くしてくるキエラ。
いろいろと幸せすぎる温もりに、逆に戸惑った。
「ど、どうしたんだよ、なんでそんなに泣いてるんだよ?」
「ぐすっ、ひっく······あんたってほんとマイペースね!」
「いてっ?」
軽く額を小突かれた。
「でも、仕方ないかもね······あんた10日間も眠ってたんだもん」
「······えっ?」
キエラが落ち着いてきたところで、色々な話を少しずつ聞く事が出来た。
「あの時、いきなりあの変なでっかい木が崩れていってさ」
それは最終決戦の時の事。
どうやらシリウスが消えた後、アンノーンやあの大樹。さらには隕石の破片なども全て塵になったらしい。
それはユートピアタウンだけではなく、他の町全てから霧のように綺麗に消え去ったらしい。
「あの大樹が? なら、倒壊とかでまた町に被害が出たりしたんじゃ······」
「ううん。ほんと、こう、ファサァ~って、砂みたいになって崩れただけだから。だから、建物が壊れたりはしてないわ。まあ、町の真ん中が砂だらけになっちゃったから、それをかき出す作業で大変みたい」
俺がシリウスと戦っていた時。下ではあの特殊アンノーンも出現し、キエラ達も相当苦戦していたそうだ。
「ほんっと、流石に死ぬかと思ったわよ。でも、あそこまでいったのに『ここで死んでたまるかー!』って、みんなすんごい気合い入っちゃってさ。なんとか全部倒したのよ」
「すごいな。よく、あれを······四天王やカーリー達は無事だよな?」
「もちろん! 流石にみんなボロボロで、ヤバかったけどね。でも、誰一人欠けなかったわよ」
それが一番の朗報だ。
「そうだっ! こうしちゃいられないわ!」
キエラが俺の手をとってぐいぐいと引っ張る。
「早くみんなに知らせてあげなきゃ! あんたずっと昏睡状態で10日間も起きなかったんだから、みんな待ちわびてるわよ!」
「お、おいおい」
「早く、早く~!」
子供のようにはしゃぐキエラに引かれ、部屋の外へ出る。
外に出て分かったが、やはりここは俺の部屋ではなかった。
「俺の部屋じゃないんだな」
「何言ってんのよ。ここはあんたの部屋よ。急いで作ったから趣味は分かんなかったけどね」
ウキウキと先を歩く相棒の後に続く。
「イルスの部屋に寝かせておく訳にはいかないしね」
「ああ······。ん? イルスの部屋?」
なんだ?
何か違和感が······。
「あ、そうそう。後でリゲル達にも教えてあげないとね。特に、リゲルは毎日お見舞いに来てるんだから」
「リゲルがここに来てるのか?」
「うん。問題ないでしょ? 確かに、昔は秘密のアジトだったけど、今はみんな仲間なんだし」
「そう、だな」
リゲル。
彼女が終わらせたんだな。
信じて、託して良かった。
「しかし、よく俺も助かったよな。信じられないよ」
「ほんとよねえ。あんなにひどくやられて、ローナが無理して回復させてくれたのよ」
「そうか。後でお礼言っておかないとな。じゃあ、リゲルが俺を連れて脱出してくれたんだな」
「ええ。あんたらを連れてね。流石にびっくりしたけど」
「あんたら?」
何の事か訊ねようとしたところで、食堂の扉の前についた。
「さあ、着いたわよ。レグルス、みんなも待ちかねて──」
──バタン──
「おっ、キエラ。今ちょうど昼飯が出来たところ、だ、か······ら?」
入ろうとしたら、内側から開けられた扉。
そこからひょっこりと顔を覗かせたのは、ロリヴァンパイアことカミラ。
「············」
「よ、カミラ。おはよう」
「······························──!! レ、レグルス~!」
──ガシッ──
「うおぉ!?」
カミラにすんげえ力で引きずりこまれ、食堂へと。
ヘッドロックみたいな格好で、カミラからのギリギリと熱い歓迎を受けた。
「起きたなら言ってよ~! 私っ、すっごく心配したんだから~!!」
「カ、ガミッ、ラッ! し、死ぬっ、ち、窒息······」
「あ、ごめん!」
口調が砕けて、乙女になっていたカミラが慌てて解放してくれた。
「コ、コホン。うむ! 流石は我が眷属だ。ちゃんと目覚めると信じていたぞ。褒美として、我から永遠の従属の証を──」
「レグルス~! 起きたっスかー!!」
「ホーッホッホッホ! 寝坊じゃの~!」
「レグルスっ!」
「オヤブンッ!」
「メザメタッ!」
「ヒャーー~!」
──ドドドドドドッ──
「う、うわあああ!?」
中へ入った途端、ペール、シュユ、ローナ。そしてダスト達が雪崩のように集まり、その洪水の中で揉みくちゃにされた。
「ぐ、ぐおおおっ······! う、埋もれるっ······潰れ、る~~!」
「良かった、ほんと良かったっス~! 今日はレグルスの回復祝いとして、プリンの備蓄放出をするっス~!」
『ヒョヒャーー!!』
「よーしっ!! 我のブドウジュースも無限放出だ~! 貴様ら、思う存分飲め~!」
『ヒャッヒョー!』
「ホホホホッ、お揚げも大放出無礼講じゃ! 今日は好きなだけ食らうがよいぞ!」
『ヒョヒョヒャーー!』
「え、えっと。私は、私は、えっとー············。どうしよう、キエラ。何を放出すれば······」
「いーのよっ、ローナ! そんな無理に合わせなくて! あんたはニコニコ笑って、祝ってくれればいいの!」
お祭り騒ぎになってどんちゃん騒ぎを始める我がファミリー達。
四天王の面々が、好物などを持ってグイグイと押し掛けてくる。
「さあ、レグルス~。ウチの真心込めた手作りっス。カラメルもマシマシプリンっスよ~」
「お、おう。ありがとな。そういや、腹めっちゃ減ってたわ」
「それなら、ほれ。妾直々のお手製お稲荷じゃ。腹にガツンと溜まるぞ」
「おお、うまそ~」
「眷属っ! ブドウジュース注いでやる! ほら、グラスを持った、持った」
「おっとと、悪いねえ」
「えっと、あの、レグルス。私からは何もないのだけれど、これ、裏の畑で採れたイチゴ。よかったら······」
「おお、こんなのも出来あがってたのか。すごいなあ。貰うぞ」
「ふふっ! レグルス~」
「ん?」
「はい、あ~ん!」
「むぐっ?」
キエラがチョコを口に突っ込んできた。
「あたしのとっておき。ど?」
「もぐもぐ······美味い。めちゃくちゃ甘いけど」
「ふふ! それ、手作りなのよ」
「マジで?! すげえ! 美味いぞ!」
「むう。レグルス~、ウチのプリンも早く食べるっス~!」
「まずは腹にくる物からじゃろ」
「ブドウジュースだー!」
──ズイズイズイッ──
「もがあっ?! ふぉんふぁひひっへんひはいふふぁ!!」
(もがあっ?! そんなにいっぺんに入るかあ!!)
それぞれのお見舞い品がドシドシと口の中へと詰められていく。
「えっと······レグルス、イチゴ、いる?」
「いるっ······」
なんやかんやあって、ようやく皆のテンションが落ち着いてきて、話をゆっくり出来るようになった。
「お前らも無事で良かった。こうして皆でまた馬鹿騒ぎしてここで飯を食えるとはな」
「大袈裟っスよー」
「ペールの言う通りだ。あんなクズの出した傀儡など、我らの敵ではないわ!」
「貧血で真っ先にダウンしたくせに良く言うわ」
「メル達が居てくれてなんとかなった」
四天王から武勇伝のような激戦の様子を詳細に聞きながら、飯を食う。
食べ始めると、猛烈な食欲が身体の奥底から沸いてきて、食い物を掴む手と口が止まらない。
「もぐもぐ······ぷはぁっ! 生き返ったー!」
「ふふ、どんどん食べなさいよね。今日はまたユートピアタウンから食糧を分けて貰う予定だし」
「そう言えば、ユートピアタウンは大樹の後片付けで忙しいんだったな?」
「そうっス。でも、もうアンノーンは消えたから、焦る必要もなく、のびのびと復興を始めてるっス」
「そうか」
だが、あのバカでかい大樹が砂になったのだ。相当な量となってるだろう。
俺も手伝った方が良いだろう。
「午後は復興のために俺も町に行くか」
「え、病み上がりなんだし、今日は休んでた方が良くない?」
「そうも思ったんだけどな。なんか、飯食ったら元気出てきちまってさ。いても立ってもいられなくなってさ」
「そうねぇ」
何か考えるように首を傾げたキエラがコクっと頷いた。
「そうね。そろそろ、あのバカも帰ってくる頃だろうし」
「あのバカ?」
「今朝も三角山に出掛けおったぞ。お前さんが起きたらマツキノコ食わせてやるとか言ってな」
「?」
回りを見る。
キエラ、ペール、カミラ、シュユ、ローナ。
主要メンバーはみんな揃ってる。
ならば、リゲル達の事言ってんのか?
いや、話の流れからして違う気が──
『ヒョヒョヒョーッ!』
頭を捻ってると、食堂の外から突然ダスト達の歓声が響いてきた。
「うん? 何の騒ぎだ?」
「あ、ちょうど帰ってきたわね」
──バタンッ──
キエラがそう言うと、それに合わせるように食堂の扉が勢いよく開け放たれた。
「おっしゃ~! マツキノコ、クッソ大量だぜ~! これでレグルスの兄貴がいつ目覚めても······」
「············は?」
「············え?」
でかいカゴを抱えてその場に立ち尽くす少年。
それは、この世界で初めて見た姿。
イルスだった。
お疲れ様です。次話に続きます。




