#21
「...ふーん」
「そうだよ」
突然、胸を締め付けられる感覚がする。
相変わらず、白渡は微笑んでいる。分かる訳がないのに、何故か、彼女の内心が気になってしまう。
「......」
「......」
昼にも経験した様な沈黙。黒瀬はいないが、僕の意識は不思議と双方に向く。
白渡と黒瀬。どちらも僕と関わりを持つ人間。しかし、中学時代に同じ部活だったこと以外、僕は2人の接点を知らない。どのような関係であったかも、今どうであるかも分からない。
だから、白渡と"遊んでくれない"状態になる程、険悪になる出来事があったのかもしれない。そんな事情は無くて、黒瀬の性格や経験から判断したのかもしれない。実は照れ隠しという可能性もあるかもしれない。
というか、そういう理由であってほしい。
「...黒瀬と...何かあったのか?」
「え?」
「だって、さっきの答えだと仲悪そうに聞こえるし、昼も空気変になったときあったし...いや、やっぱ何でもないから忘れろ」
白渡の驚いた顔を見て、我に帰る。彼女達の事を尋ねてしまった。聞いたところで意味が無いのは分かっているのに。
「......へぇ」
「...な、何だよ」
「伊折君、他人事に興味がある人じゃなかったからね、やっぱり楓ちゃんは例外なんだなあって」
「......」
少しだけ、白渡の目が細まる。逃げるように、僕は目を逸らす。
「というか、伊折君、本当は分かってるよね?」
「......何を?」
「昼に重い空気になった理由も、楓ちゃんが冷たい態度を取るって私が予想した理由も、君なら気付いている筈だよね?」
落ち着いた声色に反して、白渡の言葉は重くのしかかる。
「......知らんわ、他人の事なんて」
どうにか言葉を絞り出すが、息苦しさは消えるどころか、むしろ増していく。
ただの雑談なのに、どうして深く悩まされているのか。分かってはいるが、未だに目を逸らしてしまう。