今時男子高校生の友達事情を誰か教えてくれ…
「どうして僕まで呼んだんだ?君たちが仲良く旅行の計画を立てるのはいいが、先に要件を言ってくれないか?」
相馬はしかめっ面だ。くいっと眼鏡のブリッジを押し上げるその仕草はどこか苛立っているようにも見える。
相馬との一件もひと段落つき、楽しいお友達ライフが始まる……と思ったそこのあなた!はい、不正解です。
ギャルゲーでも前のイベントでめっちゃいい雰囲気になったからといって油断していると、話しかけにいった時にはすでに普段と変わらない態度の彼女。それどころか、あれ?好感度下がってね?と思えるような、言動の端々。
つまりあれだ。なんかいい感じに終わったと思っていたんだが、相馬との距離は一向に縮まっていない。
よくよく考えると友達になってやると言われた時、俺まともな返事してないんだよな。申請はきてたけど、承認は今度でいいやと放置していたら、申請外されたみたいな?
てか、高校生にもなって友達宣言って恥ずくね?てか、普通やらないよな?え?もしかして今時の男子高校生事情は前世と違うとか?
いや、俺も今時男子高校生ではあるんだが、今世のぼっち期間長すぎて、ついていけないし。
そういや、青葉とは宣言したんだっけ?だとすると俺たちお友達!宣言してない岡倉とは友達じゃないとか?あれ?なんか、混乱してきたんだけど?何が正解なんだ?誰か、早急に答えを……。
こほん。うん。疲れてるんだ。俺。久々にテスト勉強頑張ったから。
何はともあれ、相馬との距離は縮まらず、青葉に続き相馬にも目が合うとそっぽを向かれる俺。
まあ、俺も相馬も自分から積極的に誰かに話しかけにいくタイプではないため、必然的に距離が縮まるはずがないのだ。
それでも、青葉や岡倉はあれ以来ちょくちょくと相馬に話しかけに行くようになっていた。青葉は誰とでものほほんと話せる対人スキルを持っていて、オカン属性を兼ね備えているため、相馬とも普通に仲良くしている。
ここで意外だったのは、どちらかといえばコミュ障な岡倉が、積極的に話しかけにいっていた事だ。
前述の通り岡倉は野生動物のような奴だ。警戒心が強く、慣れたと思っても、相手の懐に自分から飛び込んでいこうとはしない。
しかし野生動物と違い、岡倉が恐れているのは、危害を加えられることではなく、自分が受け入れられない事だ。
にも関わらず、岡倉は恐怖を飲み込んで自分から飛び込む勇気を持っている。
少なくとも一年以上クラスメイトをして、テスト以降岡倉と話すようになったなら、ここに呼ばれた理由を察してもいいと思うのだが。
岡倉が旅行の話でわいわい盛り上がるなかにぼっちをわざわざ呼び出して除け者にする性悪に見えたのなら、そいつの性根が腐っている。
「……相馬くんは、迷惑だった?」
ほらみろ。俺たちの中で断トツ繊細で飴細工のようなメンタルの岡倉がまた涙目になったじゃないか。男子高校生としてどうなんだと思うが、岡倉だから許される気がする。……やっぱ、美形って得だよな。前世の俺が岡倉みたいな性格してたら、張っ倒したくなるもん。
ちなみに一番神経図太いのは天野さんだと思われる。
「だから、要件を……」
相馬は尚も眉根を寄せて、苦い顔をしている。
たぶん、成り行きに任せていたらふたりは永遠に平行線のままだっただろう。ここで頼れる伝家の宝刀、青葉の世話焼きスキルが発動した。
「岡倉くんは相馬くんの事も誘ってるんだよ」
「……は?僕?なんで僕まで」
「友達!……だから。俺は相馬くんの事、友達だって思ってるから……」
言われた意味が分からず、怪訝な表情をする相馬に岡倉はいつかの日のように声を張り上げた。けれど、その声はだんだんと小さくなっていき、最後は辛うじて聞き取れるほどだった。
相馬はと言えば、一瞬ぽかんとして、岡倉の直裁簡明な言葉を時間をかけて咀嚼しやっと飲み込むと、ぶわりと顔を真っ赤に染めた。人間ここまで赤くなれるんだなというほど、見事に真っ赤っかだ。
「と、とも……っ!!?」
言葉にならず、ぱくぱくと口を開閉する相馬。それに構わず、岡倉は言葉を続ける。
「俺、二階堂くんとか青葉くんとか、と話すようになるまで、こんなに仲良くしてくれる人、いなかったけど、今は、みんなのおかげで、すごく、楽しいんだ。えっと、だから、相馬くんとも仲良くなれたら嬉しいなって思ってて」
岡倉はしどろもどろでもいつも自分の思いをまっすぐに伝える。自信はなくても、驚くような行動力で、自己を主張する。
そんな岡倉に相馬は意地を張れず、あっさり陥落したようだ。
「べ、別に参加してやらない事もない!」
「……!!ありがとう!相馬くん!」
ほっとしたように笑う岡倉とゆでだこみたいに全身を真っ赤に染めてそっぽを向く相馬。
青葉と女子組は生ぬるい視線でふたりを見守っている。
いやあ。良かった、良かった。二人も無事、友達になれたようで。
……俺も友達だよな?実は違うとか言わないよな?
何はともあれ、もうすぐ夏休みだ。




