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第六編「稲荷森(いなりもり)」

■粗筋>

 常川稲荷に今度は谷原の伯父がのりこんできた。伯父は美晴の意志を無視して勝手に土地の開発を始める。不安になった美晴に浄雲は……。


■主要人物>

美晴:更科美晴。冷たく無気力な感じの美少女。

  ただしこのごろ情緒不安定。

浄雲:じょううん。旅の仏僧。20歳くらい?

谷原:谷原の伯父さん。泰造の兄(長兄?)。

作業員A:用心深い男。

作業員B:

作業員C:リーダー株?

猫:『神域穢』で死んだ猫。

おばあさん:浄雲に御布施する。



[1]

 

[1]

  チリリーン……

  繁華街の一角に立つ旅姿の僧。(浄雲) 右手に鈴を付けた数珠で片手合掌、

  左手には鉢。頭陀袋にはA4のコピーペーパーの束。

浄雲

「………… 舎利子(しゃーりーし)

 色不異空(しきふーいーくう) 空不異色(くうふーいーしき) 色即是空(しきそくぜーくう) 空即是色(くうそくぜーしき)

 受想行識(じゅーそーぎょーしき) 亦復如是(やくぶーにょーぜー)……」

  通り過ぎて行く人々。

  美晴、通りかかり浄雲に気がつく。

  (美晴はスーパーマーケットの袋に大根・馬鈴薯・油揚げ・ゴボウなど煮物の材料を

  詰め込んで下げてる…けれどこのコマはバストショットでも可)

  ちゃりーん

  どこかのお婆さんが鉢に小銭を。

浄雲「おありがとうございます」

  浄雲、合掌してるお婆さんにホチキス止したコピープリントのペーパーを渡す。

浄雲

「…舎利子(しゃーりーしー) 是諸法空相ぜーしょーほーくうそう

 不生不滅(ふーしょうふーめつ) 不垢不浄(ふーくーふーじょう) 不増不減(ふーぞうふーげん) 是故空中(ぜーこーくうちゅう)

 無色(むーしき) 無受想行識むーじゅーそうぎょうしき

 無眼耳鼻舌身意むーげんにーびーぜつしんいー 無色声香味触法むーしきしょうこうみーそくほうー……」

  フキダシでつなぐ。

  ちゃりーん

  横から鉢に小銭を入れる美晴。

浄雲「おありが……」


[2]

T「稲荷森」


(3)

浄雲(驚いて)「美晴さん……!?」

美晴(無気力な表情で手を出して)「その紙……くれるんじゃないの?」


□ (場面転換)公園のベンチ。

  美晴、「般若心経について」という題名の手書きレポートのコピーを読んでる。

  (前からの構図の場合は題名が見えなくても可です)

美晴の声

「『…わたくし、修行中の身ですが

 お志にわずかでも報いたく思い、

 不才ながら般若心経の解説を

 させていただきたきます。…』」

「『皆様の仏教へのご理解の一助と

 なれば幸いでございます。が、

 若輩者ゆえ解釈に間違いなど

 あったらぜひご指導をたまわり、

  なお一層の勉強を…』」

  呆れてプリントを見てる美晴。

美晴「修行のしすぎで頭がおかしくなったのかしら、あのひと?」

 「いくら托鉢したってこんなペーパー配ってたら赤字だわ」

 「あーあ 住所まで公開しちゃって……」

  コピーを透かすように眺めながら溜息。

美晴「拝み屋さんでもやれば儲かるのに…霊力(ちから)はあるんだから」


[3]

□ コピーの紙面

紙面(手書き文字、誤字脱字はママ)

 「[ 舎利子 是諸法空相 (しゃりし ぜ しょほうくうそう)]

 このくだりではお釈迦さまは、『舎利子よ、

 すべての存在は空(くう)というセイシツな

 のだよ』と言われています。先ほども申し

 ましたが、この『空』というのは大乗仏教

 でとてもたいせつです。このあと、空に

 ついての説明がありますけれど、なかなか

 読むだけで理解できるものではありません。

 般若波羅密とは『空をただしく体感し理解

 する』というイミであり、そのために

 六波羅密という修行が……」

美晴の声「だけど……ほんとヘタな文章。無駄な記述が多いし構成も目茶苦茶だし字も

 間違ってるし」「こんなんじゃきっと誰も解らないわ…一生懸命ってことは伝わるけど」

書文字「『性質』くらい漢字で書いてよ」

美晴「くそまじめで不器用な性格なのね……」

  クスッ

  ハッ

  気がついて赤面。

  美晴、仏頂面でコピーをしまいながら

美晴「違うわ 単に自己顕示欲が旺盛なのよ」「……下劣ね」

  ゴソゴソ


[4]

  スーパーの袋をさげ足早に立ち去って行く美晴。

美晴「ふぅ……時間を浪費しちゃった」


□ 薮から見ている猫。


□ (場面転換)美晴の家。

  コトコト…

  お鍋が煮えている。

  美晴、無表情のまま大根を手に

美晴「えっと…こっちはお供え用…と」

  美晴、籠の中の野菜を見ながら

美晴「そっか……今月から月並祭(*)は私一人でやるんだ……」


  (欄外注:神社で毎月行われる小さな儀式)


[5]

  稲荷祠の前。祠をじっと見てる美晴。

  美晴は無表情。

  キィー… バタッ

  との物音に、美晴、ふと気がつく。

  谷原、鳥居の方からやってくる。

谷原「やあ美晴ちゃん」

美晴の声「谷原の伯父さん…」


□(場面転換)居間。

  お茶から湯気が出てる。

美晴の声「ええ、中里の伯父さんは一度ここに来たんですけれど、その後のことは

 知りません」

谷原の声「そうか…どうしちゃったんだろうな…家族ごと行方不明なんて」


[6]

美晴「警察には……」

谷原の声「届けたさ」

谷原「だけど行方不明ってだけじゃ捜査してくれないんだ。家出や蒸発までいちいち

 捜してたらきりがないからな」

美晴「そうですね」

  クス…

美晴「警察は事件だと判明わかってからでないと動きませんから……」

谷原「だけど美晴ちゃん、これからどうするんだい。神社を守るのはいいけれど相続税が

 大変だぞ」

美晴「泰造伯父さんは……生前、私にアパートを一軒残してくれると」「家賃と管理費から

 なんとか税金を払って神社の管理をするようにって…」


[7]

谷原(あわてて)「アパート……あれは駄目だ、学生の美晴ちゃんに管理しきれないよ」

美晴「…………」

谷原「とはいえ、神社だけじゃ土地の税金は払えない」「どうだね ここは私に任せないか?

 悪いようにはしないよ」

美晴「でも伯父さんの遺言では…」

谷原「遺言書は私が預かってる」

美晴「……え?」

谷原「中里の伯父さんがね、泰造伯父さんが死ぬ直前に会った時に遺書をもらったんだ。

 それを私が預かってる」


[8]

美晴

「死ぬ直前て…意識はもうなかったはずですよ?」

谷原「死ぬ直前に意識が戻るなんてことはよくあるんだよ!」「そのときに遺言の変更が

 あったんだ」

谷原(ニヤリ)「伯父さんたちみんな君の面倒を見てくれ、アパートや神社の管理も

 やってくれ ……ってね」

美晴「そんな…ばかな? 私が預かった遺書と話がちがいます……」

谷原(コピーを渡しつつ「それは古い遺書だから無効だ。新しいのには書いてあるよ。

 ほらこのコピーを見な」

  遺言書のコピーを見てる美晴。

美晴「件のアパートは谷原の伯父さんのものに……?」「……この文書は中里の伯父さんの

 字ですね?」

谷原の声「代筆だ。泰造は意識は戻ったが字は書けなかったんだそうだ」

谷原「ちゃんと公証人の署名もあるだろう。裁判所でも通用するんだよこの遺言書は」

美晴「…………」


[9]

□ 夕方の学校。

□ 屋上。

  そよ風が、金網に寄りかかってる美晴の髪を梳く。手には浄雲からもらったペーパーが。

美晴(心の声)

「『[ 無無明亦 無無明尽 (む むみょう やく む むみょうじん)]

  迷いの実体など存在せず

  また迷いがなくなるという

  こともない、ということです。

  つまり迷いがあると思っている

  から迷いがあるわけです……』」


  キィ…

  扉を開き屋上に現れた華村。

華村「あら更科さん、こんなところに」

  美晴、とっさにペーパーを隠す。

華村「あなたこんど転校するんですって? 伯父さんが来て手続きしてたわ」「淋しくなる

 わね」

  と言いつつ少し嬉しそう。

美晴「!!」「ばかな!」

  タッ

  屋上を駆け離れて行く美晴。

  華村、口元がニヤリ。


[11]

□ 常川稲荷。

  ウィィィィン…ガガガガ

  すでに稲荷の森の伐採が始まっていた。作業員たちが木を切っている。

  立ち尽くす美晴の後ろ姿。

  ガガガガガッ……

看板「ハイツ蒙木台 建設予定地」「あぶないからはいってはいけません」

  ウィィィン……

美晴(青くなって呆然)「な……なんてことを」


[12]

□ 夜の土手と河原。

  折り畳みの机を起き、そこを簡単な祭壇にして持仏に読経している浄雲。

  手には数珠。

浄雲

「…… 純一圓滿清淨潔白しゅんにちえんまんせいせいけっぱく

 説一切法清淨句門せーいっせいせいせいせくーもん

 所謂そーいー

 妙適清淨句是菩薩位びょうてきせいせいくーしーほーさーあい

 欲箭清淨句是菩薩位よくせんせいせいくーしーほーさーあい

 觸清淨句是菩薩位そくせいせいくーしーほーさーあい

 愛縛清淨句是菩薩位あいばくせーせーくーしーほーさーあい

 一切自在主清淨句いっせいしーさいしゅーせいせいくー

 是菩薩位しーほーさーあい…………」

  土手に立って、悲しげな顔で見ている

  美晴。

浄雲

「…………

 右手抽擲本初大金剛ゆうしゅーちゅうてきほんそーたいきんこう

 作勇進勢説大樂金剛さくゆうしんせいせつたいらーきんこう

 不空三摩~耶~心~《ふうこうさんまいやーしんー》

 …………」

  浄雲、美晴に気がつく。


[13]

浄雲(数珠を持ったまま振り向いて)「美晴さん?」


□ (時間経過)

  河原のビニールシートに相対して正坐してる美晴と浄雲。

  小型のガスコンロがあり、キャンピング用のコフェルでお湯が沸かされている。

  ペットボトルのミネラル水を使用。二人と道具はちょうど茶室のような配置。

  (客-主-火の直角三角形)

  浄雲、缶から抹茶を匙で一つまみ分、

  サッ

  コフェルのお湯にとかし、スプーンでかき回す。

  浄雲、体を横のまま顔だけ向けて湯気の立つコフェルを差し出す。

浄雲「旅空の身ゆえ、こんなものしかありませんが」


[14]

  美晴、コフェルの茶湯を一口。

  美晴、コフェルを両手で持ち。湯気の香りを嗅ぎながら、

美晴「……あったかい」

浄雲「冷たいものの方がよかったでしょうか。銭湯の帰りに買ってくるんだった…」

美晴「ううん いいよ。浄雲がいつも飲んでるもので」

美晴(冷ややかに)「ところで浄雲……さっき詠んでたお経はペーパーのと違うのね」

浄雲(少し嬉しい)「! わかりますか?」「般若理趣経です」

美晴「へえ そっちもペーパーちょうだい?」


[15]

  浄雲、急に厳しい顔に。

浄雲「……ダメです、理趣経の解説は作りません」

□ 

美晴(コフェルを持ったまま少し驚いて)「どうして?」

浄雲「般若心経は、人間に対して仏の世界の真理を説いた経典ですが」「般若理趣経は、

 仏陀の視点から人の世界の真理を説いた内容です」「仏を知らない人には、百害あって

 一利なし。美晴さんにはだめです」

美晴(飲みながら)「けちね」

浄雲(困った顔で)「日本史の教科書に出てるような高僧でも、このお経は借りられなかった

 事例もあるくらい、大きな問題があるのですよ」

浄雲(視線を落としながら)「たとえば…

 『欲箭清淨句是菩薩位よくせん・せいせいく・し・ほさあい 觸清淨句是菩薩位そく・せいせいく・し・ほさあい

 飛んできた矢のように突然に起こる欲望は清浄であり菩薩の境地だ

 触れあうことは清浄であり菩薩の境地だ」

「こう聞いたら美晴さんはどう思いますか?」

□ 

美晴(呆然+赤)「どう……って」

 (回想)

浄雲「私だって異性への煩悩が完全に無くなってるわけではありません」


[16]

浄雲(さらに厳しい顔)「わかりにくいでしょうか。じゃあこれは?

 『愛縛清淨句是菩薩位あいはく・せいせいく・し・ほーさあい 適悦清淨句是菩薩位びょうてき・せいせいく・し・ほーさあい

 縛るように強く抱きしめ合うことは清浄であり菩薩の境地だ

 愛液や精液の迸る悦びは清浄であり菩薩の境地だ…………」

美晴(汗)「ちょっと…ちょっとっ!」

美晴(赤面をコフェルで隠しつつ目を逸らす)「女性に向かってなんてこと言うのよ…」

浄雲(厳しい顔)「これは 言葉では説明できない『大樂金剛(たいらきんこう)』という

 悟りの境地をムリヤリ表現しようとした文章です」「しかし観想修行を経てから学ばないと

 たいてい誤解する…そう 美晴さんの想像した内容のように、ほとんどの人が」

浄雲「理趣経はあまりにも繊細ナイーヴすぎます。だから本当に必要としてる人にしか

 説いてはいけない。わかってください」「心経ならお話しします。理論的で難しいけれど、

 その分、誤解は少なくて人生に必ず役立つ内容で……」

美晴(空のコフェルを差し出し)「別にいいわ。お経を習いに来たわけじゃないもの」

浄雲(コフェルにお茶を作りながら微笑)「…でも何か迷いがあるのですよね?」「私で

 よければ話を聞きますよ」


[17]

□ (時間経過)

 (回想)

言葉「裁判に持っていっても通用するんだよ」


 (現実)

美晴(お茶を飲みながら)「弁護士費用を払えない私が国費の弁護士で裁判をしても

 負けるだけ…」

美晴(下を向いて)「谷原の伯父さんに常川稲荷を維持する気はたぶんないわ。もちろん

 霊力もない…」「結界が完全に無くなってお狐様もいなくなったら荒御霊を鎮める方法も

 私にはもうない……」

浄雲(困り顔)「キツいですね」

美晴(もうコフェルは持ってない)「でも、だからって荒御霊を消してはだめなのよ!」

「悪いのは私たち人間なんだから。原罪を負ってるのは私たちなんだから…」

浄雲「原罪……?」「美晴さんは神徒(シントイスト)じゃありませんでしたか?」


[18]

  言葉に詰まってる美晴。

浄雲(コフェルにお茶を作りつつ)

「『諸々《もろもろ》の曲事まがことつみけがれを、祓い給え清め給え』

 …罪穢れを、(みそぎ)して祓って清める。それが神道でしょう?」

美晴(視線を逸らし)「そうね。でも……」「人間て、清められないほど穢なすぎるわ。

 清めるためにはもう死ぬしか……」

浄雲(お茶をすすりつつ)

「『不生不滅(ふーしょうふーめつ) 不垢不浄(ふーくーふーじょう)

  不増不減(ふーぞうふーげん) 是故空中(ぜーこくうちゅう)

 ……心経の一節ですが」

  美晴、驚愕し思い切り目を見開く。

  (このカット、ものすごい超大おどろき(伏線))

浄雲(コフェルを手にニコリ)「最初から生まれてるものはなく最初から滅びてるものもない。

 最初から汚れてるものもないし最初からきれいなものもない…………」「人間だって

 御霊だって同じじゃないでしょうか。」


[19]

  美晴、浄雲を凝視。

浄雲(コフェルでまた茶を飲みつつ)「もう少しだけがんばってみませんか」「私と美晴さん

 ではやり方が違うけれど」「人間や御霊をこれ以上に苦しめたくないという気持ちは

 いっしょです。その気持ちはきっと天に通じる」

美晴「浄雲……」「そ…そうね…私も自分にできることをしてみればいいのかな」

浄雲(ニコッ)「ふっきれたようですね。良い顔になりました」

  美晴、立ち上る。

  浄雲、コフェルにお湯を入れながら

浄雲「そろそろ帰られますか」

美晴(立ち上りながら)「うん……あ、浄雲それとね…あのね。私、ひとつだけ言いたいことが

 あるんだけど」

美晴(ふりむき赤面しつつ仏頂面)「…………さりげなく関節キスしてんじゃないわよ」

 「下劣ね。」

書文字(小)「前ページ3コマめ」

  ぶっ!

  浄雲、焦ってお茶を吹き出す。



[20]

  ごまかすように慌てて去る美晴

美晴「おやすみなさい」

  周囲をびしゃびしゃにしてしまった浄雲。布巾で慌てて拭き取りながら

浄雲「お、おやすみなさい…」

  四つんばいで「反省」状態の浄雲。

浄雲(心の声)「……言われるまで気がつかなかった(汗)」「でも客と主が同じ器で抹茶を

 喫するのは、古式の作法ですよぅ~…(涙)」


  チャプ……

  川の水の中から見ている目玉。


[21]

  翌日、森の消えた常川稲荷。大岩があり、ロープがかけられ動かす準備がされてる。

  ウィーン ガガガガガ

  ドリルやショベルカーの音。

美晴(冷ややかに見つめながら)「せめて、月並祭が終るまで祠は動かさないで下さい」

谷川「わがままを言うんじゃない、工事はもう始まってるんだ」

美晴「わがままじゃありません。毎月14日に月並祭をしないとお狐様は…」

谷川「うるさい!」

谷川「祠はマンションの屋上に移してやるそれで満足しろ」「お前はもうここの土地には

 あれこれ言う権利はないんだよ!」

美晴「?」「……どういうことですか?」

谷川「お前は地主だが、マンションを経営するのは俺だ! オマエは名前だけなんだよ!」

 「そしていまの法律では合法的にやってる限り貸主より借りた者の方が権利が強いんだ!

 よく憶えとけ!」

  驚く美晴。背景は落雷。(心理描写)

作業員Aの声「おおーい! 岩をどけたら変なものが出て来たぞ!」


[22]

  祠の後ろ。

作業員B「なんだ?」

作業員A「犬かなんかの骨だ」

作業員Cパワーショベルから「関係ねえ、捨てちまえ」

  横たわってる狐の骨。岩の下が巣穴の跡だった様子。

  入口近辺にはなんとなく儀式の跡のような。

作業員の声「だけど……あの岩、もしかして墓石だったんじゃないのか?」「隅に壷とか

 香炉とか埋まってるし、かなり古そうな……」

谷川「やかましい! 下手に遺跡なんか出てきたら工事が遅れるだろう!」「とっとと壊して

 捨てろ! 祠も早く動かせ!」

  谷川をひややかに見てる美晴。

  ハッ!

  突然気がつく美晴。

(回想)

猫「神社の裏に森があるだろ。狐の巣穴の跡があるんだそこに狐の霊が……」


[23]

美晴「伯父さん!」「だめ…!!」

  ガッ……

  狐の骨のところにパワーショベルが打ち込まれる。

  カッ!

  ショベルが打ち込まれたところから閃光が。


[24]

  ケェーーー……ン

  狐のような形の白い光が何匹も常川稲荷から天に昇って行く。

  稲荷祠の真後ろに蒙木台高校が見えてる。

  驚いて空を見ている美晴。


[25]

  パワーショベルの運転席。

作業員A「なんだ?」

作業員B「どうしたんです?」

作業員C「一瞬、寒気がしたんだけど……風邪かなあ?」

谷山「ほら 美晴! オマエはとっとと引越しのしたくでもはじめろ!」「あのボロ家も

 今週中に取り壊すからな」「俺んちでオマエを引き取ってやるんだぞありがたく思え!」

  無表情で空を見てる美晴。

  ゴロゴロゴロ…

  にわかに曇り出す空。遠くに雷の音。

  ポツ…ポツ…

  雨が降り出す。


[26]

  ザアッ

作業員A「うわ!」

  いきなり豪雨となる。

  ビシャッ! ゴロゴロゴロゴロ……

作業員たち「夕立か!?」「明日じゃなかったのか、雷雨は!?」「いそいで片づけろ」

  右往左往する作業員たち。

  ザァァァッ

  ビショ濡れになりながら空を見て続けてる美晴。

  ビカッ

  空に雷がうずまく。


[27]

  ガシャァァァン! パワーショベルに落雷。

谷山「うわあああっ!?」

作業員C「ぎゃあああっ!」

  感電する作業員Cと谷山。

  ゴロゴロゴロ……

作業員達の声「雷が落ちたぞ!」「救急車! 救急車だ!」

  ビショ濡れの美晴。

美晴(つぶやき)「お狐様の……荒御霊!?」

美晴(呆然)「贄……」「…霊のいない祠って、つまり、拝殿よね!?」「じゃあお狐様って

 ……!」


[28]

  ピカッ!!

  さらに落雷。

  ドザァァァァ…ァァァ…

  土砂降りの中、強く拳を握り締め空に向かって叫ぶ美晴。

美晴「風は天空(あめ)息吹(いぶ))き! 雨は大地(つち)(みそ)ぎ!

 稲妻は天地(あめつち)交合(まぐわい)!」

 「この罪穢れたる領域(くに)を罪穢れ下劣なる(われ)等の身を! 祓いたまえ!

 清めたまえ! 祓戸の大神たちよ!」

 ピシャアッ!!

  ガラガラガラガラ……

  ケェーーー……ン

  白い光が雷雲の中を飛んで行く。


 <つづく!>

 お坊さんが般若心経の解説コピーを配ることにリアリティがないという批評がありましたが、これは新宿駅西口で見た実話で、ペーパーには住所も書かれていました。


 次回で最終話です。


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