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Causal flood   作者: 山羊原 唱
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38話 かつての死は剣か損か

 マナは海底8階に降りる前に〝フォア〟の助力を得て〝フラム〟を起動させていた。


 もはや補助機能が一切ない状態での起動だ。

 どのギフトが来るか、完全にランダムとなった。



 そこで引いたギフトは――〝カタム〟。



 ニーナから撃たれる〝ブリッツ〟を、そこら中に落ちている施設の破片を巨大化させて防いでいく。

 一撃でその大岩は爆散してしまうが、機敏に動いて距離を詰め、マナはニーナの目前まで迫った。


 そこでガーバーナイフも〝カタム〟によってサイズを変更させる。

 長剣(ツヴァイハンダー)に似た形状となった。



 ニーナも〝ブリッツ〟から〝ミエ〟へすぐさま変更し、マナの振り切りを止めた。


 カアアァァァン‼と甲高い金属音が響いた。

 拮抗するマナはニーナに詰め寄った。



「キヴォトス兵はみんなやられたでしょう‼撤退して‼」


「…」


 戦うことの意義を問う発言だ。

 ニーナは黙ってマナを見下ろし、そしてマナ以上の腕力で振り払った。


 力負けは想定内だ。

 マナは身軽に受け身を取り、〝ブリッツ〟をもう片方の手に編み上げたニーナを見てまた回避に徹した。


「…そうだな。ここにいる部下はみんなやられたらしい」


 ニーナはマナに狙いを定めつつ周囲の状況を〝ラダル〟で把握していく。

 ならばこの階で温存していた戦力を開示できる、と耳裏の皮膚シールに声をかけた。


「〝ボア〟。残りの精密兵器を全部出せ」


〈…そのつもりだよ。でもこっちも色々あってね。脱出は君とユリウス、なんとか自力で頑張って。潜水艇だけ動かしておくよ。〉


 ユリウスの通信機にもそれは届いていた。

 潜水艇が一基、突然動いて水中に沈んだ。泥蛇からその潜水艇の行先を聞き、ニーナとユリウスは脱出の算段を立て始める。


 ニーナの〝ラダル〟が反応する。

 マナはここにきて〝フラム〟をフル活用するらしい。



「〝イリュジオン〟か」



 脅威がマナと全く同質の、もう一人マナが現れた。

 空間そのものの幻覚は他の者たちまで惑わすから、ニーナへの抑止力程度に使うようだ。


 〝ラダル〟をも騙す幻覚と本物の区別をする気はなく、どちらも本物だと思って〝ブリッツ〟を向ける。

 ニーナは面白そうに口の端を上げた。


「――ほう」



 砲撃が当たったマナの一人は消える。

 そしてもう一人は通り抜けた。


 〝エア〟だ。


 あっという間にまた()()()()()()()距離を詰める。

 〝エア〟が相手ならば肉弾戦だ。


 二人の顔がお互いの瞳に映る。


 手の読み合いを制したのは。




 ニーナだった。





 右手に持っていた〝ブリッツ〟を〝ミエ〟に変更した。

 肉弾戦になろうが武器が必要になろうが、対処されるだろうとマナは思ってはいた。

 その上で。

 どちらも選択しない先手を用意していたのに。



 ニーナの左手にはカーアームズK9がある。



 息もつけない戦闘の中、パン!と鳴った銃声で、()()()()()()()()()マナは脇腹を押さえて床に膝をつけた。



 〝エア〟で距離を詰めた後、引いたギフトは〝ブースト〟。


 〝正面から消えるように姿を消したマナが、背後に来る〟。

 瞬きもしない刹那の現象を、ニーナはもはや〝ラダル〟にすら頼らず、己の勘で対処していた。



「狙ってるギフトが来ない間まぁ…器用に他のギフトを使うもんだな」


 ニーナの声はやたら上から聞こえた。



 撃たれながら、マナは歯を食いしばる。

 〝ラダル〟は至近距離で〝ブースト〟に対応することが困難だ。

 脳で理解しても体が追い付かないから。

 これはヒヨリとの戦闘で経験済みだったから、詰みのタイミングで〝ブースト〟を引けられれば勝てると踏んだのに。

 

(――だめ‼相打ちになってでも私がこの人(ニーナ)を倒さないと‼)



 留まってはいけないと身体を動かそうとしたが、続けてニーナがマナの右肩口、左太ももに発砲した。


 マナは短く声を上げて太腿を押さえてうずくまる。



 ニーナが〝ブリッツ〟の銃口をマナに向けたが、すぐに撃たなかった。


「撤退しろ、か。撤退したらお前はどうする?〝笛持ち〟の連中なんぞ助けて、その後は?」


 痛みによる脂汗が身体を冷やす中、マナはグッと悔しそうに口を結んだ。

 恨み言ひとつ吐かないマナを、ニーナは哀れに思った。


「今もそうだな。どうせここであたしと死ぬつもりで戦ってるだろ?

 …せっかくあの日、〝チューニング〟の少年が命を懸けてお前を不良品にしたんだ。もっと粘ったらどうだ?

 これじゃあ、あの少年も死に損だな」



 マナの心の底がキンと冷えた。

 分かっている。無神経な物言いは意図的なもので、安い挑発だと。





 マナが撃たれ床に伏しているところを見たキースは駆け付けようとするが、それをカマに止められる。

「オーウェンだって勝てなかった相手ヨ‼アンタが勝てるワケないでショ‼」

「しかし…‼」

「アンタはソーマのとこ行って‼〝ブリッツ〟を防げるのはもうアンタとアタシだけなんだかラ‼」



 マナは助からないとカマが言っていると思ったが、彼は壁に身体を支えさせて立ち上がる。

 黒い繭となってしまったヒヨリを握り、カマは息を荒げてキースに喝を入れる。


「アタシがあのロリ娘を守るワ‼チンタラしてんじゃないわヨ‼」


 キースの返事を待たず、カマはニーナの方へ駆け出した。





 カマは思わず息を飲んだ。

 マナの行動が、カマにとっては気味が良いくらい根性のあるものだったから。




 マナは右足だけで自分の身体を蹴り飛ばし、ニーナの方へ跳んだ。

 無論、ニーナは〝ブリッツ〟の引き金を引く。



 だが。


 ゴォ‼と砲撃がマナの身体に当たった瞬間、赤と青の閃光が膨れ上がり爆発した。

 その衝撃をまともにくらい、ニーナは吹っ飛された。


 マナはオーバークォーツの花の銃弾が残っていたSIG M18をニーナの〝ブリッツ〟にわざと当てた。

 本来であればマナ自身も粉々になるところだが、彼女の身体はその身体の半分以上は黒曜石のように黒化し、〝ブリッツ〟に耐えている。

 

 〝カーボナイト〟を引けたからできた捨て身だが、拳銃の破片などが飛び散り、マナの衣服は彼女の血で広く滲んでいる。


 ゼッ、セッ、と深く短い呼吸に苦しみ、マナはふらついて片膝をつく。


 自分の影が真後ろに伸びたと思った時。

 吹っ飛ばしたニーナが床に腰をつけながらも〝ブリッツ〟で砲撃していた。



 避けるほど余力の残されていないマナの前に。


 カマが立ち塞がり、〝エスタ〟を起動させた。



「だめ…だめ‼右‼」



 マナが叫んでも遅かった。


 砲撃を跳ね返したカマの右手側から精密兵器が飛び掛かっていた。


 カマの左首付け根から腹まで水流の刃が落ちた。


 カマは一気に縮められた命を振り絞ってマナの方へ振り向く。

 そして彼女を〝エスタ〟の帯にぶつけた。



「今のアンタには、ちゃんと殺す価値があるワ」



 〝エスタ〟でマナを吹っ飛ばす直前、カマはかろうじてそう言った。

 困り切ったような笑みを浮かべて。



 マナは息を吸う間もなく潜水艇の水場へ飛ばされて落ちた。


 精密兵器がカマの首に狙いを定めると、後ろからニーナが「他へ行け」と言った。

 精密兵器はニーナの命令に従い、カマの回収を中断する。


 〝ブリッツ〟ではなくカーアームズK9を向けられて、虫の息となる彼は面倒くさそうにニーナへ顔だけ向ける。


「性癖?自分でアタシを殺したいのかしラ」

「いいや。お前の命なんざどうでもいい。憂さ晴らしだ」


 〝ラダル〟で致命傷を避けたのだろうが、彼女もまたマナのほぼ捨て身の爆発に身を焦がしていた。

 左目の上辺りの深い火傷から顎に伝うほどの血が滴る。

 鬱陶しそうにその血液ごと銀髪をかき上げた。

 無感情なニーナの表情は次第に曇り、――激しい怒りに満ちていった。



「良い所だったのに。あの子とは大事な話をしていた」



 ニーナという兵士の情報はコアたちから聞いている。

 だがその情報からは想像もできないほど、怒りの原因は私情だった。

 マナとの一騎打ちを心の底から楽しんでいたのだろうか。それを邪魔したことが彼女の逆鱗に触れたようだ。



 カマは…尽き欠けの命で思わず嗤ってしまった。


「そりゃあ悪かったわネ。でもいいじゃない。生きていりゃ〝次〟があんだかラ」



 精一杯の虚勢と嫌味だった。

 他にも色々言いたいことはある。

 けれど、ニーナがそれを決して許さなかった。



 マナとお揃いであるその武器にこそ、計り知れない私情が込められているだろう。

 「カーアームズK9(それ)で撃つあたり、人間臭いな」と。カマは最期にニーナを嘲笑った。

 

―---―― 


 エレナはコアが必死に連れてきたペトラを水場から引き揚げた。

「ペトラ…!しっかりして‼」

 ペトラの頬に触れるが、彼女から反応は一切かえってこない。


 コアが自分の上着を脱いでペトラの右肩をきつく縛り、止血を試みる。

 ペトラの意識はなく、今にもその息が止まりそうだった。


 潜水艇の中からカヴェリが出てきた。

「先にペトラをこの中に!まだ細胞シートは残ってる‼急げ‼」


 カヴェリとエレナが協力してペトラを潜水艇へ運ぶ。

 その間、コアはやけに静かなサラとルカに視線をやった。


 静か、というかなにか集中している。

 ボソボソとなにか聞こえるので耳を澄ませると、それはあの歌だ。


 コアが二人に声をかけようとすると、またカヴェリから声がかかった。


「コア‼お前も腹の傷やばいだろ!早く来い!」

「いや、サラとルカはなにを…」


 二人を差し置いて自分が先にいいのかと思ったコアだが、イングの切羽詰まった大声にかき消された。


〈まずいです‼泥蛇が…っ、急いで下さい‼――アヌビス‼あなたは()()()を――……〉



 イングがコアたちに早く潜水艇に乗れと急かした直後、


 イングの雫ボディがバヂャ!と床に落ちた。



「イング…?おい、イング!」

 コアの呼びかけに液状化したイングから反応はない。

 銀の面も水銀のように広がり、核がむき出しになっている。


(核が壊されてない!なのにボディを形成できなくなったってことは…)


 コアは赤茶色の液体に触れる。

 いつもは弾力のあるぷよぷよの身体が、ただの水みたいだった。



「コア‼精密兵器が…‼」



 エレナの悲鳴のような声が上がる。

 彼女の視線の先には潜水艇に登ってコアたちへ銀の面を向けている3騎の精密兵器がいた。



 コアはぞっと血の気が引く。

(精密兵器相手じゃ潜水艇が耐えられない‼でももうペトラを連れて逃げられる状態じゃ…‼)


 自分がここに残ってエレナやサラたちが逃げる時間を稼ぐくらいしか、今できることが思いつかない。

 苦い顔を浮かべて腹の傷を押さえながら、キヴォトスをグレイヴの形に変える。




 精密兵器が潜水艇を飛び越える、直前。



「〝骨を組んで爪を重ねろ その鱗を引き剥がす〟」



 サラとルカの歌声に銀糸が意識を持ったように踊り舞った。



 サラの〝フルート〟の銀糸全てはある人物を編んでいく。

 七色の光を影に落とし、それが次第に人間として成立させた。



 雪のように真っ白な髪。

 森林のような緑の瞳。

 美しい顔立ちに似合わない高く分厚い肉体。



 コアも、カヴェリも、…エレナも。

 その〝人物〟に言葉を失った。



 一番最初に名前を口にできたのは、涙に声を震わせたエレナだった。


「ティヤ…」



 声も人格もない人形だとしても、ティヤがそこにいた。

 彼はルカの〝フルート〟を使い、異常現象に戸惑いをみせる精密兵器へグレイヴを編み上げ、立ち向かった。



 ティヤの驚異的な身体能力と戦闘力の高さに、コアは思わず見惚れてしまう。

 その間、カヴェリがティヤを操作するため集中して動けないサラとルカを潜水艇に入れていく。


「コア‼急げ‼サラたちの〝フルート〟なら後で勝手にこいつらの手に戻ってくる‼お前も速く乗れ‼」


 強く言いながら、カヴェリはコアの腕を首に回し、少々無理やり立たせる。

 コアは正気に戻ったように「あ、ああ」と頷いた。



 その時、--――ドボオオォン‼と向かい側の潜水艇乗り場の水場に誰か吹っ飛んできた。

 とっさに警戒するコアだが、それがマナだと分かると飛ばされた方向に視線やった。




「---――カマッッ‼‼」


 コアの悲鳴が響いた。

 彼がニーナに射殺された、その瞬間だった。



 思わず駆け出そうとしたコアをカヴェリが押さえて潜水艇の入り口へ引っ張る。


「カヴェリ‼カマが‼助けないと‼」


 目じりに涙を浮かべてそう叫ぶコアにカヴェリが苦しそうに叫んだ。


「間に合わない‼いいから早く‼もう…戦える奴なんていねぇよ‼」


 カヴェリの声も泣いていた。

 彼は弱い抵抗をするコアを無理くり潜水艇に押し込んだ。


 次いでエレナに声をかけようとした時、彼女は他の潜水艇を登っていた。


「エレナ⁉なにやってんだ⁉戻れ‼」

「必ず戻るよ‼カヴェリはペトラとコアの治療を‼」

「馬鹿!他にも精密兵器がいるはずだ‼戻れよ‼」

「大丈夫!今なら‼ティヤがいる間なら‼」


 エレナの行先は――ソーマのいる場所だ。

 カヴェリはすぐに彼女がやろうとしていることに気づくも、重傷のコアたちを置いては動けない。

 エレナの無茶ぶりが叶うことを信じて、二人の治療とすぐに脱出できる準備を整え始めた。




 吹っ飛ばされたマナは受け身もろくに取れなかった。

 全身破けるような衝撃の中、懸命にもがいて水面に顔を出した。

 近くの潜水艇に手をつけ、咳き込みながら呼吸を確保する。


「マナ‼」


 女性の声が聞こえて、マナは顔を上げる。

 いない。

 その声はどこだと探していると、ズル!と不格好な音が聞こえて、潜水艇から足場に誰かが滑り落ちた。


 赤毛で自身のなさそうな表情が印象的のエレナだ。だが今は腹の座った顔つきで凛としている。


「手を‼早く!」


 彼女の手を借りることは少々引け目を感じたが、生憎自力で這い上がることは難しかった。

 マナは彼女の手を取り、足場へ身体を這い上がらせる。



 エレナはマナの怪我の具合を見る。

 左太ももが撃たれている。それだけではない。

 脇腹、右肩、全身に裂傷…

 一人で歩かせるには酷だ。


「マナ。あなたはここで待ってて。私これからソーマたちを助けに行ってくるから。キースも向こうにいる。あの二人が撤退する時にあなたも――」

「いえ」


 キースにマナを運んでもらおうと思っていたエレナの言葉をマナが遮った。

 マナは縛れる傷口を手際良く縛り、息を整えながら言った。


「この海底施設はおそらく爆発させて全員沈めるつもりだ。

 …ニーナが追ってこない。

 多分他の階に移動した潜水艇で脱出するんだと思う。

 時間がない。私がユリウスの注意を引かせるからあなたがあの二人を誘導して」


「ちょっと、…マナ!」


 マナは左足を引きずりながらも潜水艇を乗り越えようとする。


 エレナはマナを止めようと手を伸ばしたが、カンカンカン‼と激しい金属の衝突音が手元でさく裂した。

 悲鳴を上げてよろめくエレナに、マナは振り返って彼女を狙った相手にカーアームズK9を向ける。



 精密兵器が1騎、エレナに向けて液体の棘を飛来させていた。

 マナは苦い顔をする。


(拳銃じゃ対抗できない‼)


 今、キースがソーマを守るために〝フォア〟を砲撃の停止のために使っている。

 マナへ向けた起動ができないほど追い詰められているのだろう。

 〝ラダル〟以外のギフトと繋がることはできなかった。



 だが杞憂に終わる。

 精密兵器の背後から白髪の男性が現れ、槍を振るった。


 精密兵器は間一髪で回避するも、続く攻撃に手札を封じられる。

 それを見たエレナがマナに叫んだ。


「分かった‼あなたに合わせる‼行って‼」



 動けるのならマナに動いてもらった方がいい。

 酷なお願いだとしてもエレナは割り切った。


 マナはエレナのことはあの人間ではない気配のする白髪の男性が守るだろうと判断し、頷いて動き出した。





 ユリウスはあと一歩、ソーマを仕留められたところでキースに邪魔をされていた。

 〝ブリッツ〟を撃って逃げようとする彼らを足止めするが、ユリウスも正直早く離脱したかった。


(どうしよっかなぁ~。あと10分くらいでしょー?この施設の爆破って。ソーマくらい始末しておきたかったんだけど)


 引き際を計算していたユリウスは〝ブリッツ〟から大量の散弾を放った。


 キースはその散弾を全て止めるが、相手がどう出るか察していたので苦い顔を浮かべる。

(近接戦で来られる!)


 すでにソーマは一人で歩ける状態ではない。カヴェリを肉壁にすることを最初から考えていたから、彼に預けた細胞再生シートは一切使っていないのだ。傷口を押さえた布から零れるほど血が流れている。

 自分自身も泥蛇の兵士と渡り合えるほどの実力はない。

 ソーマを連れて逃げを選べば後ろから撃たれる。


 戦闘を継続することも逃げることも不可能な状況へと追い込まれていた。



 キースは苦し紛れにスコーピオンをユリウスに向け、発砲する。


 しかし散弾となって宙に停止したままの〝ブリッツ〟が邪魔をして、ユリウスの獣のようなスピードに全く弾道が追い付かない。



 瞬きをひとつする間に、--〝ミエ〟の刀剣を握るユリウスが目前に迫った。



〈ユリウス。右側。受け身〉


 ユリウスの通信機からニーナの声が聞こえた。

 ユリウスは目を動かす暇もなかった。



 ユリウスの右側から、〝エスタ〟を起動させたマナが体当たりをしてきた。



 ギリギリのタイミングでマナとキースがアイコンタクトを取れ、〝フォア〟の起動対象にマナが入った。


 マナ一人の体重ではとてもではないがユリウスをよろけさせることはできない。

 だが、〝エスタ〟であればゴムボールみたいに飛ばせる。



 ユリウスは―――ゴッッ‼と視界が真っ白になる衝撃に驚いたが、ニーナからの警告を受けたため床に激突する瞬間、受け身だけはかろうじて取れた。


 丁度そこは海底8階から出る階段に繋がる通路だ。


 ユリウスがその通路へ身を転がす前に、マナが発砲する。

 一発、ユリウスの腕に当たったが、彼はそのまま通路へ逃げ込みながら〝ブリッツ〟の散弾を複数の潜水艇に向けて適当に放った。



「――あいつ‼」


 マナは強く舌打ちをしてすぐさまキースとソーマの正面に立った。


 ドン‼ドン‼ドン‼と被弾した潜水艇が次々と爆発し、殺人的な暴風と熱が吹き狂った。



 ユリウスが逃げ込んだ通路にはすでにニーナが待機していた。

 二人はこれ以上の戦闘は自分たちの脱出に関わると判断し、そのまま静かに撤退した。



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