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ロバートが王太子ですって?

「馬車に乗ればいい」と言うロバートや将校たちの勧めを断り、馬を借りた。馬車に乗るよりも乗馬の方が、身動きをとりやすい。


 というわけで、行軍中もロバートに道をそれていろいろ案内してもらった。


 ダルトリー王国は、鉱山を多く有している。そのかわり、土壌はあまり豊かではなく農業や牧畜には適さない。しかし、そんな適さない土地を多くの農民が耕し、牛や馬たちが草もまばらな牧草地で食んでいる。


 ロバートがわたしに気を遣ってにんじんがどうのこうのと言っていたのは、あながち的外れな内容ではなかったのかもしれない。


 彼にさまざまなところに案内してもらいながら、つくづくそう感じた。


 もうひとつ感じたのは、男性が優位で絶対的という風潮が強いということ。ロバートからはそれを感じることがなかった。だから、そのことに気がつかなかった。わたしがロバートの「偽装妻」という立場だから、将校たちからも感じられない。しかし、町や村で馬に乗っているわたしを見た男性たちからは、あからさまに嫌悪や蔑みを感じる。けっしてレディそのものを、バカにしたり蔑ろにしたりというわけではない。が、一般的にレディがしない行動や発言することに関しては、良く思わないみたい。


 地方の町や村でこんな調子なら、王都に行ったらどんな偏見が待っていることやら。


 ふと思い出したことがある


 わたしがまだひきこもる前、ダルトリー王国の外交官と衝突したことがあった。そのとき、その外交官はかなり失礼な態度だった。それは、わたしが王妃だから、つまりレディだという理由だった。


 結局、その外交官とは何度も衝突し、いずれもコテンパンにやっつけ、こちらの要求をのませた。


(彼ったら、いつも『おぼえていろっ!』とかなんとか、つまらない悪党みたいな捨て台詞を残していたわね)


 あのときのダルトリー王国の外交官の怒り狂った顔は、いまでも覚えている。



 そんな調子でいろいろみたいきいたりしていたので、あっという間に王都に到着した。



 部隊とは、王都から目と鼻の先にある駐屯地でお別れである。


 その駐屯地では、ロバートの片腕という将校が待っていた。


「レディ、ダルトリー王国にようこそ。将軍の有能すぎる使い走りにして、頭脳ともいうべきモーガン・エディントンです」


 それはもう金髪碧眼でスラッとして筋肉質な、目の覚めるようなカッコいい将校である。いままで、これほどカッコいい将校服姿の男性に出会ったことがない。


「そうそう。おれは、王国内で『金色の貴公子』などとさわがれています。レディ、どうかおれの魅力に参らないで下さいね」


 握手をしながら、彼はこっそり告げた。その言い方がおどけすぎていて、おもわず笑ってしまった。


「ワオッ! レディ、素敵な笑顔ですね。おれの方が参ってしまいそうだ」

「お上手ね。そうやってレディたちを虜にするわけ? 心配いらないわ。わたしは、カッコよすぎるのは逆に苦手だから。ユア・コーンウエルよ。よろしくね、モーガン」

「これは、一本取られましたね」


 モーガンの美貌に苦笑が浮かんだ。


「ったく、なにが『金色の貴公子』だ。ただのスケベなジゴロだろう?」


 ロバートが近づいて来た。


「『真紅の獣将』と呼ばれているからって、それはひどくないですか? それはともかく、将軍、ちゃんとやっておきましたよ。宰相は、頑強に反対しましたがね。ですが、今後さまざまな面でぶつかりあうことになりますよ」

「ああ、わかっている。おれもそろそろ覚悟を決めねばな。デイトン帝国の処理のこともある」


 きけば、突然ロバートが妻を娶るという件で宰相ら官僚たちが大騒ぎをしているらしい。そのことで、ひと足早く帰国したモーガンが説得や根回してくれたという。そして、納得まではいかずとも強行突破する準備はしてくれたらしい。


 大騒ぎになるのもムリはない。なにせ妻になるのは、占領した国の皇帝の元妻なのだ。


「だけど、一将軍にそこまで? では、もちろん王族も反対しているわよね?」

「あー、ユア。そこが問題なのだが、きみが案じているのとはちょっと違ってな。なんだ、言いそびれたが、おれが王族なのだ。一応、王太子ってやつだ」

「な、なんですって?」


 驚きすぎて声が裏返っていた。





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