01
ここはとある錬成工房、錬金術師である私はため息をついていました。
マジックアイテムを生成するための錬成釜はまったく使われずにほこりをかぶっておりました。
「いつになったらこの子を使える日が来るのかな。この子といろいろと錬成したかったのに。」
私は錬成釜を見ながらそう呟きました。
私は隣に置かれている大きな鍋の方に目をやりました。
錬成釜の隣に置かれている大きな鍋はマジックアイテムなどの錬成はできないただの大きな鍋でした。
大きな鍋には大量の水が入っています。
私は青色の塗料のビンに手を伸ばしましたがすぐに手を止めてしまいました。
そしてこう言いました。
「はあ、もう嫌だこんな生活!!」
私の名はモニカ・ブレイス18歳、錬金術師をしています。
王都マーレルにある錬成工房であるマルゲス工房で働いています。
私は若干15歳で魔導士と錬金術士の認定試験をダブルで合格しました。
みんなは私が魔導士になると思っていたみたいですが、私は錬成工房の門を叩きたいと思っていました。
というのも子供の頃から錬金術師に憧れていたからです。
ただ錬金術師の認定試験に合格した後ですら、錬成工房に入るのはとても難しかったです。
どこの錬成工房でも採用してもらえずにこのマルゲス工房に採用してもらったのですが、ここはとんでもないブラックな職場だったのです。
するとこのマルゲス工房の主である男が私の前に現れました。
そして私にこう怒鳴りつけます。
「こらあ!!手を休めるな!!一個でもおおく製品を作らんか!!」
私はマルゲスに言いました。
「そろそろこの錬成釜でポーションの錬成をさせてもらえませんか?」
「その錬成釜には触るなと言っているだろうが!!」
「なんでこの錬成釜には触ってはダメなんですか?」
「そんな事に答える必要はない。それに錬成などせんでいいと言っているだろうが!!」
「ポーションを作るのに必要な材料も全然揃ってないですよ?」
「材料ならあるだろうが!!ちゃんと鍋に雨水が入ってるだろうが。ここに青い塗料もある。」
「ポーションの生成に必要な薬草も蒸留水もありません。白の魔法結晶もありません。こんなんじゃ錬成ができません。それでどうやってポーションを作れっていうんですか?」
「何度も言わせるな!!錬成などせんでいいと言っておるだろうが!!」
するとマルゲスは大きな鍋の前まで移動しました。
そして実演しながら私に言いました。
「いいか!!水の中に青い塗料を入れます。」
青い塗料の入った大ビンを開けると大きな鍋の中にその青い塗料を入れました。
そしてかき混ぜはじめました。
「そしてよく混ぜます。これで完成だ。なんでこんな簡単な事ができん?」
私がマルゲスに言いました。
「それポーションじゃないじゃないですか??ただの青い水じゃないですか??」
「そこらのバカ共はこれが偽物のポーションだなんて気づきゃしないさ。ビンの中に青い水が入ってればこれをポーションだと思いこむ。」
「何の効果もない青い水をポーションとだまして売る。こんなの詐欺じゃないですか??」
「いいか、真面目にポーションなんか錬成して作ったって利益など微々たるものだ。大きな利益を生み出す画期的なビジネスを私が完成させたのだぞ。」
「何が画期的ですか?善良な冒険者の人達にただの青い水をポーションだとだまして売りつけてるだけでしょう、あなたの心は痛まないんですか??」
「心が痛むわけないだろうが!!爆益で大喜びしておるわ。そこらへんのバカな冒険者共が勝手に野垂れ死ぬだけだ、もっとはやくこうするべきだっと思っておるわ。いいか幸せの青い水を売ってるだけだ。冒険者共がそれをありがたがって買っていく。ただそれだけじゃないか。」
「あなただって錬金術師でしょう?こんな事をして恥ずかしくないんですか?」
「いいかモニカ!!我が工房では幸せの青い水を作って、冒険者共がそれをポーションだと勝手に勘違いして買っていく。それだけじゃないか。気にする必要なんて全くない。」
「もうこんな偽ポーションなんて作りたくないです。」
「おいモニカ!!俺がここの工房長だっていうのを忘れるんじゃないぞ!!お前はこの工房からは出られないんだ!お前はここで俺の指示通りに働くしかないんだよ!!分かったらさっさと作れ!!」
そういうと工房長はでていきました。
私は歯ぎしりしながら言いました。
「こんな事しちゃいけないのは分かってる。」