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ああこんな工房に入るんじゃなかった。
私はこんな偽ポーションを作るために工房に入ったんじゃない。
我が家は代々錬金術師の家系らしく、ブレイス家はその錬金術の力を買われて一時期は子爵を有する貴族だったらしいのですが、代を重ねるごとに落ちぶれていき、今では爵位も領地も何もない貧しい家になっていました。
お父さんも王都で行っていた商売の傍ら錬金術をいつも研究していました。
私はそんなお父さんが好きでいつも錬金術の事を聞いてはお父さんを困らせていました。
お父さんは錬金術の研究をしている最中に亡くなってしまい、お母さんも後を追うように病気で亡くなってしまいました。
そして私もお父さんのように子供の頃から錬金術に慣れ親しんだいたので、いつしか私も錬金術師になりたいと強く思うようになっていました。
お父さんもお母さんも悔いがないように自由に生きなさいといつも言ってくれていました。
だから私が錬金術師になり錬成工房で働きたいと考えるのも自然だったのかもしれません。
錬金術師というのは基本的に魔導士を経験してからなるもので、初めから錬金術師になろうというのは少数派でした。
錬成工房というのは基本的に魔導士を引退された方がやるものであり、錬成工房に入る場合も一旦魔導士になるのが通例でした。
錬金術士は魔導師を引退された方や現役魔導士の方が副業としてやってる場合がほとんどで、錬金術師を目指す場合でもまず魔導士にならなければなりませんでした。
アイテム錬成をしている錬成工房で働こうとまず冒険者ギルドや騎士団などでの魔導士の実務経験が必須になってくるんです。
でも私はそういうまどろっこしいのが嫌で錬成工房に入りたいとそのころは考えておりました。
だから錬成工房に入らないかというあのマルゲスの悪魔の誘いを疑いもせずに信じてしまいました。
そして今私はこの工房に閉じ込められて、作りたくもない偽ポーションを作らされているというわけです。
「ああ、こんな事したくない。」
だがここで暮らしていく以上アイツを怒らせてはいけないのも分かってはいました。
私は頭では拒否していましたが、渋々ながら偽ポーションのビン詰め作業を始めようとしました。
するとどこからともなく声が響いてきました。
「なってる??」
工房の出入口の販売所の所に誰か来ているみたいですね。
私はその近くまで行って様子を伺うことにしました。
私はこの工房の建物の外に出る事ができませんので、できるだけ販売所の声が聞こえるように廊下に出て近くまでいきドアの隙間から販売所の様子を伺いました。
すると販売所の中では冒険者らしき姿の男性がマルゲスと言い争いをしていました。
鎧を着た冒険者の姿は凛々しい若い男性でした。たぶん私と同じくらいの年だろうと思います。
金髪のロングヘアーでスタイルの良い青い瞳の男子でした。
「それでどういう事なんだ!!この青く濁った水というアイテムは??ここで買ったポーションが全然効かないんだぞ?」
「すいませんが、ポーションは当工房で直接製造しているわけではありません。仕入れ先からのポーションの中に不良品が混ざっていたのでしょう?」
「不良品が混ざってたで済むと思っているのか?ここでポーションを買ってダンジョンに向かったパティーがいくつも全滅してるんだぞ?私自身もポーションが使えずにかなりピンチに陥った。」
「きっと仕入れ先の工房での不手際があったのでしょう。仕入れ先にクレームを入れておきますので、今日はこの辺でお引き取りを。」
「なぜ自分の売った商品が不良品であったのに、そんなに落ち着いていられるのだ?」
「いいですか!!こちらは突然あなたに押しかけられて大変迷惑しているのです。すぐにお引き取りください。」
するとあきれた様子の冒険者の男子がマルゲスに言いました。
「分かった、今日は引き上げよう。ただし不良品が出た事はギルド長に報告しておくからな。」
するとマルゲスが慌てた様子で冒険者の男子に言いました。
「待ってください!!そんな事を報告されたら我が工房は悪い噂を立てられて潰れてしまいます。」
冒険者の男子は毅然とマルゲスに言いました。
「不良品をポーションを売りつけられて、それが原因で死者がでているんだ。報告を上げるに決まっているだろう。」
すると慌てた様子のマルゲスがこう提案しました。
「そうだ??ならば工房の中を見ていきませんか?」
「うん??」
「この工房の中を自由に見学していただいて結構です。」
「いいのか?公開できない秘密のレシピなどもあるだろう?」
「当工房に対して不信感を抱いているようなので、見学して頂くことでそれを払しょくしたいのです。」
「分かった、なら見学させてもらおう。」
「それでは工房の中をご案内します。」
まずいマルゲスがこっちに来ると分かった私は慌てて物陰に隠れました。
すると販売所の扉が開いてマルゲスと冒険者姿の男子が現れました。
するとマルゲスが突然冒険者の男子の頭を殴りつけたのでした。
突然の事で冒険者の彼は対応できずに、床に倒れてしまいました。
「まったく手間をかけさせやがって。」
マルゲスはそう言うと冒険者の彼を引きずってとある場所に向かいました。
「あっちは行った事ないな。何があるんだろう?」
私は見つからないように静かにマルゲスを追っていきました。
するとマルゲスは倉庫の端にある壁を触って、隠し階段を通って地下へと降りていきました。
私は驚きながらこの様子を見ていました。
この工房に地下があるなんて全然知りませんでした。
隠し階段から地下の様子を伺うと、どうやら工房の地下は牢屋になっているようでした。
マルゲスが乱暴に冒険者の男子を地下牢の中に放り込んですぐに鍵をかけました。




