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ゲームをお楽しみください  作者: Lightver


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3/8

死局の隙間

第四ラウンドで人が死んだ。続く第五ラウンドでも死んだ。

第四ラウンドで前に押し出されたのは、あの火傷の痕がある女だった。彼女は「玖(九)」の箱の前まで歩み寄り、泣きもせず、もがきもせず、ためらいすら見せなかった。パネルを押すその動作は、不気味なほど穏やかだった。

箱が開いた瞬間、底面から親指ほどの太さがある金属のスパイクが十数本、視認できないほどの速度で弾き出され、彼女の胴体を串刺しにした。胸腔、腹腔、肋間の隙間から金属の杭を突き出させたまま、彼女は立ち尽くしていた。その表情は最後まで虚ろだった。やがて口の端から血を溢れさせると、ゆっくりと膝をつき、枯れ木のように横に倒れ伏した。

システム通知には『処刑トラップ:ニードル・アレイ(串刺し)』と無機質に表示された。

第五ラウンドは、また「チップ」だった。指が三本欠損した中年の男が「捌(八)」を開け、生き残った。チップを拾い上げる彼の手は震えてすらいなかった。無表情のまま群衆の隅に戻り、しゃがみ込み、一言も発さなかった。

第六ラウンドを迎える頃には、場内の空気は完全に変質していた。

もともと三十人ほどいた肉人は、今や二十六、七人に減っている。二つの死体——正確には、一つの灰色のヘドロの塊と、床に縫い付けられた肉の残骸——はホールの中央に転がったままで、誰も片付けようとしないし、システムも「処理」しなかった。天井からの深紅の光が、それらの残骸をことさら鮮明に照らし出し、死の細部を全員の目に焼き付けている。

それはシステムの悪意だった。生き残っている者に死の結末を見せつけ、恐怖の濃度を限界まで維持させるために。

十個の箱のうち、五つが開いた。三つがチップ、二つがトラップ。残るは五つ。

チップを三枚集めて、ようやく処刑トラップを一度だけ無効化できる——。

『第六ラウンド、カウントダウン開始』

【04:59】

数字が時を刻んだ瞬間、心臓がぎゅっと鷲掴みにされた。

恐怖は当然ある。すべての神経の末端にまで充満している。だが、心臓を締め上げた真の理由はそれではない。柴田の視線が、再び私に落ちたからだ。

第四、第五ラウンドの間、彼は私を見ていなかった。部下に群衆から生贄を選ばせ、自分は壁に寄りかかって日本刀の柄すべりを弄りながら、時折顔を上げて結果を確認するだけだった。何かを検証しているかのように。

だが第六ラウンドに入った途端、彼は壁から背を離し、私の方へと歩み寄ってきた。

アミールがいち早くそれを察知した。彼の指が再び私の肩に食い込み、鎖骨の上の筋肉を強く圧迫する。

「また来たぞ」アミールの声に緊迫感が走る。「あいつ、お前を狙っている」

「なんで俺なんだ?」私は唇をほとんど動かさず、歯の隙間から声を絞り出した。「他にいくらでも代わりはいるだろう……」

「お前の『反応』が一番大きかったからだ」アミールは早口で言った。「あいつはサディストだ。ただ肉人に箱を開けさせるだけじゃない。人間が恐怖でぶっ壊れていく過程を見て楽しんでるんだよ。第三ラウンドの後、お前が床に崩れ落ちて泣きじゃくっていたのを、あいつは全部見ていた」

言い終わるか終わらないかのうちに、柴田はすでに私の目の前に立っていた。

彼はすぐには口を開かなかった。見下ろすように私の顔を眺め、値踏みするような視線がゆっくりと額から頬骨へ、顎へ、そして最後に、私がチップを握りしめている右手へと落ちた。彼の胸元で血まみれのキーが揺れ、スーツの生地と擦れて微かな音を立てる。

「まだ生きてたのか」柴田が言った。気だるげで、どうでもいい好奇心が混じった口調だった。道端で踏み潰した虫がまだ蠢いているのを見つけた時のような。

私は答えなかった。アミールの警告は忘れていない。頭を下げろ、口を閉じろ。

「第三ラウンドは運が良かったな」柴田がしゃがみ込み、私と目線を合わせた。深紅の光に照らされた彼の瞳孔は深い褐色で、不自然なほど澄み切っている。この汚悪なゲーム盤にはまったく似つかわしくない瞳だ。「だが知ってるか? 運ってのは、二度も続くもんじゃない」

刀が抜かれた。

今度の動作は、前回よりもさらに速かった。抜刀による金属の鋭い擦過音が短く響き、刀の切っ先が空中に銀色の残像を描いたかと思うと、正確に私の左の首筋にピタリと当てられた。

前回と違うのは、彼が刃に「圧力」をかけたことだ。

刃が皮膚を切り裂く感覚は、最初は「痛み」ではなかった。まず異様な冷たさがあり、次に生温かい湿り気、そして一拍遅れて、切り口の両側に焼け焦げるような激痛が走った。温かい液体が傷口から滲み出し、首の曲線に沿って流れ落ち、鎖骨を伝ってボロ布の襟元を赤黒く染めていく。

視界の端に、突如として深紅のシステム文字がポップアップした。

【ライフ:95%(-5%)】

ライフ(生命力)。俺にもそんな数値が設定されているのか。

その認識は、半秒も持たずに痛みの濁流に呑み込まれた。傷は浅い。だが、冷たい鋼が生きた肉を切り裂くというあまりにも鮮烈な感覚が、私の思考システムを一瞬にして完全にショートさせた。徐々にではない。文字通り「一瞬で粉砕」されたのだ。

頭の中が、真っ白になった。

比喩ではない。視界のすべての色彩——深紅の天井、暗銀色の箱、黒光りする床——が、圧倒的なホワイトノイズによって洗い流された。巨大歯車の轟音も聞こえない。自分の鼓動すら聞こえない。首に押し当てられているはずの刃の感触すら消え失せた。

世界が、完全にバグった真っ白な画面になった。

その状態がどれくらい続いたのかはわからない。一秒にも満たなかったかもしれないし、もっと長かったかもしれない。その「白」の中では、時間の概念すら意味を持たなかった。

やがて、ノイズだらけの白の中央に、極小の「赤い点」が現れた。

点が急速に拡大する。いや、拡散ではない——「爆発」だった。深紅のデータストリームがその一点から爆発的に放射され、視界全体を埋め尽くす。無数の記号と文字列が処理落ちしそうな速度でスクロールしていくが、私の脳はなぜか、異常な方法でそれらの情報を「同期受信」していた。

読んでいるのではない。理解しているのでもない。ただ、ハードディスクに強制的にデータを書き込まれるように、情報が流れ込んでくる。

続いて、淡いブルーのシステム文字が、深紅のデータの奔流を逆流するように、冷徹に浮かび上がった。

『緊急プロトコル起動。魂の共鳴ソウル・レゾナンス——初回覚醒』

『意識リンクを確立中……ターゲットロック:直近の物理接触対象(刀身伝導)』

『リンク確立。持続時間:約1.2秒』

一・二秒。

この一・二秒の間に、自分のものではない「誰か」の意識が脳内に流れ込んできた。

その感覚は、私の知るいかなる言語でも正確には表現できない。一番近い表現を探すなら——頭蓋骨にわずかな隙間が開き、別人の意識の欠片フラグメントが無理やりねじ込まれてきたような感覚。それらはすべて断片だった。言語よりも深く、映像よりも原始的な、潜在意識レベルの記憶の残滓。

【フラグメント1】:古びた木のテーブル。黄ばんだ図面が広げられている。金の指輪をはめた手が、図面に丸をつけている。柴田の手ではない。もっと繊細な手だ。その手の主が口を開く。深く低い、上位者特有の傲慢な声。「……箱の台座にはカウンターウェイト(重り)が仕込んである。重さが違うんだ。覚えておけ。重い箱ほど安全だ。軽い箱は、ほぼすべてがトラップだ」

【フラグメント2】:柴田の手だ。だが今よりずっと若く、白い手袋をしていない。その手が暗闇の中でガタガタと震えている。彼の手のひらには、私が持っているのと同じ暗金色のチップが握りしめられていた。彼が着ているのは仕立てのいいスーツではなく、今の私と同じボロボロの麻布だ。彼の目の前には、スーツを着た男が立っている。その胸元のバッジには「藤堂」と刻まれていた。

柴田もかつては、ただの「肉人」だったのだ。

【フラグメント3】:胸元にバッジが留められる映像。柴田の顔が視界を埋め尽くし、口角がわずかに釣り上がる。だが、その笑みの下に隠されている感情は極めて歪んでいた。歓喜ではない。長年の恐怖と屈辱に削り取られ、すり潰された果てに変質した、奇形的な「充足感」だった。

プツンッ、とリンクが切断された。

脳幹からLANケーブルを荒々しく引き抜かれたような衝撃。深紅のデータストリームが一瞬で無数の光の粒子となって砕け散り、視界が再び現実世界へと引き戻された。

天井、歯車、並んだ箱、そして目の前にある柴田の冷酷な顔。

頭が割れるように痛い。こめかみの血管が皮膚の下で狂ったように脈打ち、眼球が破裂しそうだ。鼻の奥に濃厚な鉄の匂いが充満し、右の鼻の穴からツーッと熱い液体が流れ落ちて手の甲に落ちた。鼻血だ。

「どうした?」柴田が訝しげに眉をひそめた。私の突然の硬直と鼻血に気づいたようだが、大して気にしていない。極度の恐怖で顔中から血を流す奴など、ここでは珍しくもないのだろう。彼は刀の峰で私の首筋から流れる血を乱暴に拭い、血糊を振り払って刀を鞘に収めた。「死んだふりしてんじゃねえ。立て。番号は『肆(四)』だ。行って開けてこい」

番号、四。

三つの意識の欠片が、激しい頭痛とともに脳内で渦巻いている。藤堂という男。私は知らない名前だが、柴田の潜在意識は確かに記憶していた。

箱の台座には重りが仕込まれている。重さが違う。重いほうが安全。

これは真実なのか? それとも極限状態が生み出したただの幻覚か?

わからない。だが、他に選択肢はなかった。

【03:41】

アミールが背後から私の背中を押した。一見すると、監視役の命令に従って肉人を箱へ向かわせるだけの普通の動作だ。だが、腰のあたりに触れた彼の二本の指が、意図的に「トントン」と二回叩くのをはっきりと感じた。

それが何を意味するのか。暗号か? 警告か? それとも気のせいか?

私は立ち上がった。足はまだガクガクと震えている。

箱の並ぶエリアへと歩き出す。「肆」の箱は半円の左側にあり、その隣にはすでに開封済みの「参」(チップ)と、強酸が発動した「弐」が並んでいる。

残り十二歩。十歩。八歩。

脳内はフル回転していた。もしあの記憶の欠片が本物なら——もし台座に本当に重量差があるのなら——可能な限り多くの台座に触れて、重さを比較しなければならない。だが、私が「何かを探っている」ことを柴田に悟られては絶対にいけない。彼は明確に「肆」を指定した。途中で別の箱に触れようとすれば、即座に異常を察知されるだろう。

残り六歩。

「弐」の前の強酸の跡地からは、まだ白い有毒ガスが立ち昇っている。深紅の光の下で不気味な灰白色を呈し、酸の液体は蒸発し始めているものの、縁にはまだ濡れた跡が残っていた。その傍らには、溶けきれなかった骨の破片——脛骨の一部、半分になった骨盤、そして顎から抜け落ちて黄色く変色した数本の歯——が散乱している。

それらを目にした瞬間、恐怖に支配された脳の隙間から、一つの閃きが絞り出された。

足が震え、ふらついているのは演技ではない。だが、その「ふらつくタイミングと位置」をコントロールすることならできる。

私は歩幅を微調整した。ほんのわずかな調整。左足を通常より五センチだけ長く踏み出し、その着地点を、散乱している脛骨の破片の上に合わせた。

ズルッ。

足が滑った。

「あっ——!」

私は派手に転倒した。顎が再び金属の床に打ち付けられる。今度はかなり強く打ち、口の中に濃厚な血の味が広がった。また舌を噛んだのだ。だが、その痛みは一瞬でアドレナリンに塗り潰された。

なぜなら、私が転倒した位置は、ちょうど「参」(開封済み)、「肆」(目標)、「伍」(私が前に開けた箱)という三つの箱の中心だったからだ。

転倒する瞬間、本能的に両手が前へ突き出される。人が転ぶ時に手をつくのは反射だ。誰も疑わない。

私の右手の手のひらが「肆」の台座の側面にドンッと当たり、同時に左の肘が隣の「柒(七)」の台座の角にぶつかった。

接触していた時間は、半秒にも満たない。

だが、それで十分だった。

「肆」の台座——『軽い』。手のひらが金属に触れた瞬間、手首に押し返されるような抵抗感(慣性)がなかった。中身が空っぽの空き缶を叩いたような、薄っぺらい感触。

「柒」の台座——『重い』。肘がぶつかった瞬間、腕の骨全体がビリッと痺れるほどの反作用があった。地面に根を張ったように固定されており、底面に明らかな質量の詰まりを感じた。

心臓が大きく跳ねた。

幻覚じゃなかった。重量差は、実在する。

「何這いつくばってんだ! 立て!」背後から柴田の部下が私の尻を蹴り上げた。本気で蹴り飛ばすほどの力ではなかったが、体勢を崩すには十分だった。

私はその勢いを利用して、横へ半回転転がった。蹴りを避けるためではなく、残りの箱に体を近づけるために。転がる過程で、私の背中が「拾(十)」の台座を擦った。

『重い』。「柒」と同じだ。台座が地面にどっしりと鎮座し、微動だにしない。

これで三つのデータが取れた。「肆」は軽。「柒」は重。「拾」は重。

もし記憶の欠片が真実なら——重いほうが安全なら——番号「肆」がトラップである確率は極めて高い。柴田が「肆」を指定したのは偶然か、それとも最初から知っていて私を殺そうとしたのか?

極度のパニック状態の脳内に、一本の極細の「理性の糸」が通った。その糸を伝って、生死を分ける演算が猛烈なスピードで弾き出されていく。

「ぐずぐずするな。四番を開けろ」背後から柴田の冷ややかな声が飛んだ。

【02:53】

私はゆっくりと立ち上がった。膝はまだガクガクと震えている。だが、今の震えは先ほどまでとは意味が違った。さっきまでは純粋で制御不能な恐怖だった。今は違う。震える肉体の奥底で、脳が冷徹に計算を続けている。

私は「肆」の箱に向かって歩き出した。だが、その軌道をほんのわずかに——三十センチだけ——ずらした。不自然に思われない程度のズレだが、「陸(六)」の箱の真横をかすめるには十分な距離だ。

通り過ぎる一瞬。右手の指先で、「陸」の台座の角をサッと撫でる。

『軽い』。「肆」と同じ軽さだ。

これで五つのデータが揃った。「肆」軽、「陸」軽、「柒」重、「拾」重。そして「壱」は未確認。

未開封の箱は五つ。二つが軽く、二つが重く、一つが不明。情報の通りなら、「柒」か「拾」を開けるのが生存確率が最も高い。そして柴田が指定した「肆」は、十中八九トラップだ。

私は「肆」の箱の前に立った。暗銀色のパネルに、今の自分の無惨な姿が映り込んでいる。血まみれの顔、切れた口の端、首の切り傷から絶え間なく流れる血。赤い「?」マークが、のんびりとパネル上で回転している。

【02:21】

パネルの数センチ手前で、私の手は止まっていた。

指先が小刻みに震えている。演技ではない。本当に震えているのだ。

決断しろ。今すぐだ。

もしこのまま素直に「肆」を押せば、あの軽い台座に仕込まれたトラップ——強酸か、串刺しか、あるいはもっと残酷な何か——が発動し、私は間違いなく挽肉になる。

だが、もし拒否すれば? クルリと振り返って別の箱に向かえば、柴田のあの日本刀が、どんなトラップよりも確実に私の首を刎ねるだろう。

どうする——。

私は深く息を吸い込んだ。鉄錆と焦げた薬品の悪臭が肺の底まで入り込み、胃が激しく収縮する。

「これは……」私の声はかすれ、自分にしか聞こえないほど小さかった。私はわずかに声のボリュームを上げた。背後の柴田の耳に、ギリギリ届くように。「これは……おかしい……」

柴田は答えない。だが、革靴が金属の床をわずかに擦る音が聞こえた。彼は聞いている。

私は「肆」のパネルからゆっくりと手を引っ込めると、振り向いた。アミールの警告通り、柴田の目は絶対に見ない。視線は彼の顎のあたりに固定した。

「俺は……あっちを開けたい」私は手を伸ばし、「柒」の箱を指差した。

声は震え、指は震え、全身が痙攣するように震えている。だが、「柒」を指差す私の腕だけは、一ミリもブレなかった。

【01:58】

ホールが一瞬、静寂に包まれた。巨大歯車の轟音すら、その一瞬だけは遠い背景音のように薄れた。

そして。

柴田が、笑った。

軽い笑いだった。喉の奥で転がすような、明らかな嘲笑。

「ふん」

そのたった一音で、せっかく張り巡らせた理性の糸がちぎれそうになった。

柴田がこちらに向かって歩いてくる。革靴の足音が、一歩ごとに重く、そして遅くなる。まるで私が恐怖で硬直していく様を、ワインでもテイスティングするようにゆっくりと味わっているかのようだった。

彼は私の目の前で立ち止まり、見下ろした。私の視線は、彼の胸元で揺れる血まみれのキーに釘付けになっている。一センチたりとも視線を上げる勇気が出ない。乾いた血のひび割れが、深紅の光の下で縮れた枯葉のように見えた。

「面白い」柴田は日本刀の鞘を水平に持ち上げ、鞘の先端で「柒」の箱を指し示した。そのまま空気を切るようにゆっくりと「肆」へ移動させ、最後に私の胸のど真ん中でピタリと止めた。「地雷探知用のゴミが、自分で死に場所を選ぶってか?」

彼は一拍置き、首をわずかに傾けた。

「お前、何か『知ってる』のか?」

その言葉の重圧は、物理的な斬撃に匹敵した。

「し、知りません……何も……」唇の震えがひどく、まともな発音にならない。「俺、俺はただ……第三ラウンドで『伍』を開けて助かったから……その隣の『柒』なら……たぶん、助かるんじゃないかって……」

自分でも呆れるほど支離滅裂な言い訳だ。だが、今の私に思いつく最善の防悦線だった。あの「意識のリンク」を隠し通し、箱の選択を「パニックに陥った弱者の、根拠のないオカルトや迷信」として片付ける。絶望の淵にいる人間が、意味のない数字のジンクスにすがる。それは、柴田のような男からすれば深く追求する価値のない愚行に見えるはずだ。

柴田は三秒間、私を無言で凝視した。

その三秒間は、自分の心拍数を数えられるほど長かった。ドクン、ドクンと七回。その一回一回が、内臓を叩き潰すように重かった。

やがて、彼は刀を下ろした。

「好きにしろ」彼の声は、もとの事務的な冷酷さに戻っていた。「どうせお前らは全員弾除けだ。『肆』で死のうが『柒』で死のうが、俺にとっては同じことだ」

彼は踵を返し、壁際へと歩き出した。しかし、二歩進んだところで、彼の首の角度がわずかに変わったのを私は見逃さなかった。

彼は余白の視界で、私を観察している。

【01:23】

私は「柒」の箱へと歩き出した。

ほんの数歩の距離が、今まで生きてきたどの道のりよりも長く感じた。一歩踏み出すたびに、胸ぐらを掴んで無理やり体を前へ引きずり出さなければならない。首の傷からはまだ血が流れ、シャツの襟元は重く濡れそぼっている。頭は酸欠のようにぼんやりとし、鼻の奥の鉄の匂いが自分の血なのかこの空間の臭いなのか、もはや区別がつかない。

「柒」の箱が目の前に迫る。

私はパネルに手を押し付けた。

冷たい金属の感触が指先に伝わり、胃袋が痙攣する。パネル上で回っていた赤い「?」マークが停止した。

カチャッ。

金属板が外側へ倒れ込む。

底面の窪み。そこに収まる、くすんだ金色のコイン。

『第六ラウンド終了。開封者の生存を確認。生存チップ×1を獲得』

第三ラウンドの時のように、床に泣き崩れることはなかった。

恐怖は消えていない。細胞の隅々にまで染み込んでいる。だが、脳の中枢には新たな感覚が根を下ろしていた。死の恐怖の隙間から無理やりこじ開けた「理性」が、狂気にも似た速度で演算を続け、「また死にかけた」という感情的パニックを強制的にシャットアウトしている。

私の推論は、正しかった。

台座の重量の情報は真実だ。重い箱が安全で、軽い箱がトラップ。柴田は意図的に軽い「肆」を開けさせようとし、私はそれを拒絶して重い「柒」を選び、生き延びた。

これは、ただの運じゃない。

身をかがめてチップを拾い上げた時、私の指はもう震えていなかった。恐怖を克服したわけではない。恐怖よりもさらに深くて暗い「何か」が、恐怖をねじ伏せているのだ。変異した生存本能。首の取れた鶏のように暴れ回る段階は過ぎた。今の私は、極めて冷酷で方向性を持った「計算機」になりつつある。

踵を返して群衆に戻る途中、視界の端で素早く柴田の様子を窺った。

彼は壁に寄りかかり、腕を組み、刀を右肩に立てかけている。表情に変化はない。失望も、驚きも、怒りも見えない。

だが、私を見る「目つき」が確実に変わっていた。

ただのゴミを見る目ではない。

第三ラウンドでの生存は「運」で片付けられる。だが第六ラウンドで、彼が指定した箱を自ら拒否し、別の箱を選んで再び生き残った。二度連続となれば、それはもはや運ではない。

柴田の私を見る目は、「面白いゴミ」から「監視すべきイレギュラー(変数)」へとアップグレードされていた。

それが私にとって吉と出るか凶と出るか、今はまだわからない。

アミールが暗がりから腕を伸ばし、私を壁との間の死角へと引きずり込んだ。

「さっきの……」アミールの声は極めて低かったが、今までに見せたことのない鋭利な響きがあった。「お前、なぜ『柒』が安全だとわかった?」

「わからなかった」精巧な嘘を組み立てる体力は、もう一ミリも残っていない。「ただの勘だ」

彼は信じていない。そう直感した。

だが、彼はそれ以上追及しなかった。

「鼻血が出てるぞ」とだけ、彼は言った。

手の甲で拭うと、土気色の肌に赤黒い血の跡が汚く伸びた。鼻血はもう止まりかけていたが、頭蓋骨を暴力的にこじ開けられたような鈍痛はまだ続いている。

「大丈夫だ」私は答えた。

アミールは二秒ほど沈黙した後、自分の着ているボロ布の内側から細い布切れを引きちぎり、私に渡した。匂いを嗅ぐと、かろうじて清潔だった。

「押さえておけ」彼は言った。「血の匂いで注目を集めるな。肉人の中には完全にイカれちまった奴らもいる。血の匂いを嗅ぎつけたら、狂犬みたいに襲いかかってくるぞ」

私は布切れを鼻の下に強く押し当てた。布から漂う強烈な汗の匂いが、不思議と胃のむかつきを和らげてくれた。あの強酸と焦げた肉の入り混じる絶望的な悪臭に比べれば、アミールの体臭は「人間が生きている証」であり、狂気の世界に私を繋ぎ止めるいかりのように感じられた。

『第七ラウンド、カウントダウン開始』

【04:59】

残る箱は四つ。「壱」「肆」「陸」「拾」。

私の触感データによれば、「肆」は軽、「陸」は軽、「拾」は重。そして「壱」は未確認だ。

情報が完全に正確なら、「拾」は安全で、「肆」と「陸」はトラップ。未確認の「壱」は不確定要素。

四つの箱を開けるには、あと四ラウンド必要だ。現在の死亡率から計算すれば、ここにいる二十数人の肉人のうち、さらに最低一人はトラップの犠牲になる。

こんな計算を高速で弾き出している自分の脳が、ひどく恐ろしかった。つい数十分前まで、人が殴り合うのを見ただけで吐き気を催していた温室育ちのインドア人間が、今や「あと何人死ぬか」を確率論で冷徹に見積もっているのだ。

恐怖は消えていない。だが、極限まで圧縮されている。溺れかけていた人間が、偶然流れてきた丸太にしがみついたような状態だ。まだ水の中だし、いつ荒波に呑まれてもおかしくはないが、少なくとも「掴める確証」が一つだけある。

私は右の掌の中で、二枚のチップを強く握りしめた。第三ラウンドと、第六ラウンドの報酬。硬い金属の縁が手のひらに食い込み、ズキズキと痛む。

痛い。だが、この痛みが、私がまだ「生きて思考している」ことを証明してくれていた。

柴田の視線が再び私を掠めた。一秒も留まることなく、すぐに逸れる。彼は部下に顎で指示を出し、群衆の中から第七ラウンドの犠牲者を引きずり出させているところだった。

だが、私は知っている。あいつは必ず、また私を見てくる。

死のロシアンルーレットが回るこの屠殺場で、二度連続で生き残り、あろうことか上位者の命令を拒絶した最底辺の肉人。それ自体が異常なエラーなのだから。

そして、柴田のような男は、決して盤面のエラーを見逃さない。

頭上の歯車は無情に回り続けている。天井の深紅のクリスタルが脈打つように点滅し、巨大な「神の目」が開かれた天井越しに私たちを見下ろしていた。蠢く蟻のような私たちのすべての行動が、あの底なしの暗黒の瞳孔に記録されていく。

だが、私の脳の奥底では、あの淡いブルーの文字がまだ微かに点滅を続けていた。

『魂の共鳴ソウル・レゾナンス・クールダウン中……次回使用可能まで:データ演算中』

私は掌の二枚のチップをさらに強く握り込み、あのブルーの文字とすべての疑問をまとめて、脳の最も深い暗がりへと押し込めた。

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