大阪城夏の陣3夜目
放課後の部室。
ホワイトボードには前日の議論が残っている。
「引きこもり=対人摩擦による地位エネルギー消耗戦」
俺はマーカーを持って、さらに線を引き足した。
「……でもさ、人選の問題がある。誰が引きこもりに会いに行くかで、エネルギーの削られ方が変わるんだ」
高橋がニヤつきながら言う。
「そりゃ、佐伯が行ったら相手の地位エネルギーは秒速でゼロになるな。可愛すぎて、存在だけでエナジードレイン装置だ」
佐伯は顔を真っ赤にして机をバンバン叩いた。
「ちょっ、私が会うだけでダメージとかひどくない!?」
西村は淡々と補足する。
「事実だよ。容姿が突出してると、同性には劣等感、異性には過剰な緊張。
結果、“会った瞬間から地位エネルギー消耗”が起こる」
佐伯はふてくされてうつむく。
「……なんか褒められてる気がしない」
すると、朝比奈がドヤ顔で腕を組んだ。
「なら、私の出番ね。私は“それなり”の容姿だから、余計なプレッシャーは与えない。親しみやすさで距離を詰められるのよ」
高橋が吹き出す。
「お前、自分で“それなり”って言うなよ!せめて“ちょうどいい”くらいに言っとけ!」
朝比奈は胸を張って言い切る。
「ブランディングは正直さから始まるの。
私は適度なリアリティで社会的摩擦を減らす──まさに実用的戦力よ」
西村がくすっと笑って、メガネを外した。
「……じゃあ、私? メガネ外すと意外と“可愛い部類”に入るって言われるんだけど」
一瞬、部室が静まり返る。
高橋が目を丸くして叫んだ。
「おいおい、理系女子のくせに恋愛イベント仕掛けてくるのかよ! RPGで言えば“普段無口な魔法使いが急に姫スキンになる”パターンじゃねーか!」
朝比奈がテーブルを叩いて立ち上がった。
「待ちなさい!ここは“それなりの容姿”で親しみやすさ全振りの私が適任よ!」
俺は腕を組んで、みんなを見回した。
「でもさ、考えてみろ。俺は普通だし、リア充でも非リアでもない。だから一番、引きこもりに向いてるんじゃね?」
──一瞬の沈黙。
次の瞬間、部室が総ツッコミの嵐に包まれた。
西村(メガネをクイッと直して)
「は? 自分で“普通”とか言っちゃう時点で全然普通じゃないから!」
佐伯(机を叩いて)
「むしろ“普通アピールする奴”って一番怪しいから!」
高橋(ギターをポロンと鳴らして)
「普通とか言いながら、妙にセリフ決め顔なんだよお前!」
朝比奈(腕組みしてニヤリ)
「安心感どころか、逆に“無難ぶってる営業マン感”出てて地位エネルギー奪いまくるタイプね」
俺は必死に反論する。
「え、ちょっと待て!マジで普通だって!俺、そんなに目立たないし──」
西村が冷静に追い打ちする。
「目立たない? 毎回分析してドヤ顔でまとめてるの、完全に“イケてる自称モデレーター”枠だよ」
高橋が爆笑しながら結論を出す。
「はい決定〜。“俺は普通”って言う奴が一番普通じゃない説〜!」
俺は頭を抱えた。
「……これ、地位エネルギー消耗してんの俺の方じゃね?」




