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高校生、うっかりマズローを論破してしまう  作者: シンリーベクトル


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大阪城夏の陣一夜目 引きこもりを科学する


「大阪城夏の陣1日目 引きこもりを科学する」


放課後の部室。

ホワイトボードには大きく「引きこもり=防衛戦」と書かれている。


西村がチョークを走らせる。

「引きこもりの原因は色々あるけど──やっぱり一番は“対人”。」


俺は机に肘をついて相槌を打つ。

「……人と会うだけで“地位エネルギー”がガンガン奪われるんだよ。要するに、人にどう見られてるかを気にするだけでスタミナが削られてくんだ」


西村が補足する。

「人と話すとき、無意識に“印象管理”をしてるでしょ?

そのエネルギー消費が地味にデカいの。しかも相手が強そうだったり否定的だったりすると、一気にHPがゴリっと減る」


高橋が鼻で笑う。

「つまり、学校や職場は“地位エネルギー吸い取り装置”。

そりゃ引きこもりは“布団の城”に籠って防衛戦するわけだ」


俺は続けた。

「奪われるって事は盾が弱いって事だ。

引きこもりの社会的地位は、冒険を始めて最初に手に入れる木の盾より弱い。いや、むしろ“呪いの盾”だな」


西村がホワイトボードに矢印を書き足す。

• 対人摩擦 → 地位エネルギー消耗

• 布団・ネット → 摩擦ゼロ+回復

• 社会の期待圧力 → 呪いの盾


佐伯は少し考えてから言った。

「……じゃあ社会復帰って、“人と会っても地位エネルギーが奪われない状態”にできるかどうかなんだね」


俺はうなずいた。

「そう。次は“奪われない仕組み”を考える番だな」


ホワイトボードを見つめていた朝比奈が、にやっと笑った。

「ふふ……これはイケるわね」


佐伯が首を傾げる。

「え、何が?」


朝比奈が腕を組み、得意げに言い放つ。

「これは社会復帰の新市場よ!“引きこもり対策×科学”なんて、まだ誰も体系化してない。つまり……私はこの分野のイノベーターになる!」


佐伯が目を丸くする。

「い、イノベーター?」


西村がすかさず解説モード。

「新しい仕組みを周囲が理解できないうちに試す人間のこと。リスクは高いけど、成功すれば社会を大きく動かす原動力になる」


高橋が吹き出した。

「イノベーターって言えば聞こえはいいけど、要は“最初に金の匂いを嗅ぎつけて突っ走る変人”だろ?」


朝比奈は鼻で笑った。

「暴走?いいじゃない。歴史を変えたのはいつだって変人よ。ドラッカーも言ってるでしょ──『未来を予測する最良の方法は、それを創ること』って!」


西村が小声で突っ込む。

「……それ、ちょっと引用ズレてるけどね」


俺は肩をすくめた。

「まぁ、人を動かすには“摩擦係数を超える力”が必要だ。金の匂いでも、カリスマでも、呪いの盾を捨てさせる一撃でもな」

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