努力は必ず報われる?
努力は必ず報われる?
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シンリーベクトル
シンリーベクトル
2025年8月15日 20:49
努力は人を裏切らない?
放課後の部室。
佐伯が珍しく真面目な顔でノートを閉じた。
「ねぇ、西村さん。『努力は人を裏切らない』って、本当だと思う?」
白衣姿の西村は、チョークをくるくる回しながら黒板に数式らしきものを書き始めた。
「……条件付きなら、正しいわね」
「条件付き?」と佐伯。
高橋がスマホから顔を上げ、ニヤリ。
「努力ってさ、ベクトルの大きさと方向があるんだよ。方向を間違えると、全力で全然違う駅に到着する」
「それ迷子じゃん」と佐伯が即ツッコミ。
西村はうなずきつつ、黒板に矢印を描く。
「心理学では“熟達理論”って言うの。正しい方法と十分な時間があれば成果は出る。
でも方法がズレてたら、ひたすら間違いを極めるだけ」
俺は机に肘をつき、ぼそっと言った。
「努力って、他人から見せるただの飾りみたいなもんだ」
佐伯が首をかしげる。
「飾りって?」
「“頑張ってる”って言葉は、自分の中では宝物でも、他人から見れば数値がなけりゃ評価の対象じゃない。」
「それとは別に例えば腕立て50回やったとして、それ自体がゴールなら——どこを努力って呼ぶんだ?」
「筋肉?」と高橋がすかさずボケる。
西村は肩をすくめて笑う。
「だからこそ、方向修正とフィードバックが必要なのよ」
高橋がギターケースを指で叩きながら、ドヤ顔。
「まあ俺は全然努力しないけど——この通りギター上手くなったぜ」
佐伯がじと目で見る。
「才能ってやつね」
高橋は肩をすくめ、さらっと言った。
「ま、弾いた時間は人の5倍だけどな」
俺は小さく笑いながら言った。
「……それが、俺の言う“努力は他人の評価でしかない”ってやつ」
高橋は「やだねぇ」と笑い飛ばし、椅子にもたれてふんぞり返った。
――その瞬間、ドアが勢いよく開く。
「お前ら、聞いてくれ!」
国枝先生がスマホを高々と掲げ、満面のドヤ顔。
「俺のSNSフォロワー、ついに5,000人超えた!」
佐伯「……それ、努力ですか?」
西村「承認欲求の自己強化ループですね」
俺「……はいはい、先生は“裏切られない努力”の代表例っと」
先生だけが、誇らしげに笑っていた。




