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第21話武闘大会【信玄】

「……」

そのまま沈黙が流れる。

「知花、お前の力は本当にすごいな」

「ありがとうございます?」

何故か疑問形で返ってくる。

「そういえばさ、俺の病を癒やしてくれたじゃないか。一昨日」

「そうですね」

「その後鍛錬とかしてみて分かったんだが、俺の体27歳になってるんだよな」

「え?」

その様子に、やはり分かっていなかったのかと思う。最初は分からなかったが、体を動かしてみて病が感知した程度ではないと気付いた。

「ああ、すみません。それ私の力ですね。戻しますか?」

「んー大丈夫。こっちのほうが体動きやすいし。それにお前がせっかくやってくれたからな」

「なら良かったです」

知花は笑顔を浮かべる。

「……ところで、聞きたいことがあるんだが」

「?何でもどうぞ」

「お前、本当に何で俺の申し出を断ったんだ?」

「へ?」

予想外だと、知花の顔に書かれている。

「何でと言われましても……。一昨日言った通りですけど」

あれは、男だから通じた。女になると、話は少し変わる。

「だが、大名の正室だぞ?本当に男だったならともかく女ならどうして?」

「いや、前言った通りそれは私が今すべきことでは無いからですけど」

その言葉に俺は黙りこくる。

……今すべきことでは無いから、大名の求婚を断る。ありえないだろ、大名の正室ならば、高い権力と多くの金が手に入る。なのに、断るって……。

体が少し震え始め、声を上げて笑いたくなる。



知花は呑気に「何しよっかな」と言って外へ出ようとする。俺は、面白そうだと思い、知花に声を掛ける。

「知花、今日武田領で祭りをやるのだが、お前も一緒にどうだ?」

「え!」

思ったより食いつきが良い。

「良いのですか?ぜひ連れて行ってください」

まさか笑顔で了承されるとは思わず俺は少し驚くが、「分かった。では門の前で待ち合わせだ」と言って話をまとめた。

俺は一旦知花と別れ私室に戻る。そして、本来の用途とは違うが忍びに着替えを手伝わせる。着替えと言っても、男のだから女と比べるとかかる時間が少なく済む。



女の子と待ち合わせをする時は、早めに行く。

そんな俺の信念に従い、待ち合わせ時刻の10分前に門の前に着く。それから5分後、「信玄様!」という声が聞こえ俺は声の方向に顔を向ける。

「すみません待たせてしまって。遅れてしまいましたか?」

知花は、薄ピンク色のセンスの良い着物を着ていた。

「いや、俺も来たばかりだ」

俺はそうフォローを入れる。

「じゃあ、行こうか」

彼女は頷く。

門が開くと、ワイワイとした明るい空気の城下町が広がる。知花は、俺の後ろを首をキョロキョロとさせ、目を輝かせながら付いてくる。医者としてこの城下町に居たはずだが、初めて見たような眼だ。

少し歩くと、彼女は俺に尋ねる。

「あの人混みはなんですか?」

そう言い指し示すのは、大きな人だかりだ。

「今日は武闘大会だからそのやつだな」

『武闘会』という言葉に、知花は目を光らせる。参加しそうだな、そう思う。

「信玄様!私、参加してもよろしいですか?」

彼女は予想通り、そう言ってくる。

彼女の実力ならば、きっと猛者たちにも勝てるだろう。しかし、男よりも強い美女か。俺だったら欲するが、他の奴らはどうなのだろうな。

「その代わり、後で俺に付き合ってくれるか?」

そう言うと、「ありがとうございます!」とお礼を言われる。



「すみませーん」

「はい。何でしょうか?」

下働きらしき人が返事を返す。

「私も参加できますか?」

「え?貴女が?」

「はい。腕には自信があります。どうでしょうか?」

「別によろしいですが、怪我代などは出しませんよ」

「それでもいいです。では決定ですね」

「……ではこちらに来てください」

彼は、信じて居なさそうだった。

知花が優勝したら、彼はどんな反応をしめすのだろうか。

予想がつく。



俺は、民達と混ざり席につく。周りからは視線が突き刺さるが、声をかけられない限りはプライベートでは話さないと決めている。

暫く待つと、司会者がコートの真ん中に来、声を張り上げる。

「第一回戦は、大会常連加藤さんと……あれ?名前書いてないですね。大会初の女性です!うーん、どうですかね。わたし的には加藤さんですかね。」

知花と、男はコートに出てくる。

「美人さん、お名前は?」

司会者に声をかけられ、知花は答える。

「ええと、知花と申します」

「そうですか。いい名前ですねー。ところで、その服と剣で大丈夫ですか?」

「はい。大丈夫です。」

着物と、動きにくい服装だ。

「えー、とりあえず始めます。開始!」

そう司会者が言うと、男が剣を持ち高速でかける。知花は木刀を地面から垂直へ立て、目を閉じ、男の気配を感じたのか、男が近くに来ると刀を振る。

「我が剣よ、自由を纏い舞え。行雲流水!」

知花は男の刀を吹き飛ばす。刀を吹き飛ばされた男は、ただ呆然としていた。しかし、知花の実力を知らなかったのだから仕方がないだろう。見た目鍛えていなさそうな女が鍛えている男より強いとは誰も思いはしないだろう。

「終了!」

だが、これくらいは余興だろう。足の不自由な勘助でも出来ることだ。

知花が勝ち進むほど、試合が面白くなるのだろう。

そう思っていると、女性たちの歓声が聞こえ、何だとコートを見る。



多少顔が良い、髪を掻き上げて気取っている男性がコートに立っていた。

「相手は、今回初参戦藤宮晴」

見た目は弱そうだが、雰囲気的に案外強いのだろう。自信なさげだが。

「開始!」

戦いの火蓋が切られると、気取った男は地面を軽く蹴り、晴へ近づき刀を振り上げる。晴はその刀を避け、後ろへ飛ぶ。


カキィーン


刀がぶつかり合い大きな音を立てる。

観客が彼らから目を離すことが出来ないでいると、晴が男の隙をつき、腰を蹴る。男は途中で気付いたが、反撃するまもなく横へと飛ばされる。

体が地面に転がるのと同時に、男の手から刀が離れる。

「勝者、藤宮晴!」

司会者がそう言い、盛り上がるかと思ったが全く違う反応が返ってくる。

「ええ……。嘘よ。結城様が新参者に負けるなんて」

「なにか卑怯な手でも使ったんじゃないか」

そういうことか。

俺は納得する。

晴が自信なさげなのは、こうやって、勝っても腕を疑われるからだ。晴は、慣れた眼をしている。

こういった奴は、減らさないとな。



そのまま5試合くらい進むと、知花の名前が呼ばれる。

「先程凄かった知花さんのお相手は、全大会好成績、佐藤大輝!」

黒髪の男は、ドカドカとぶっきらぼうに出てくる。

「……よろしく」

「よろしくお願いします」

そう2人が言い合うと、開始の合図が出される。

その瞬間、男の覇気が会場を包む。並の者なら、この覇気に飲み込まれるかもしれない。しかし、想像はついたが知花には効いていないようだった。



すると、彼が大きく呼吸をし風を切るような速さで知花の目の前に現れる。

「!?」

知花は反射的に高く飛ぶ。急にレベルが上がり、驚いたようだった。

視線を移すと、さっきまで彼女の腰があった位置に、刀が振られていた。

知花は空中で身を踊らせ、体をかがめる。

彼女が地面へ降り立つと、男は知花に見切れないほど速く刀を振っていく。その太刀筋は恐ろしいくらいに速いが、とても綺麗だ。一本当たるだけで、致命傷になるだろう。どこかの大名家の家臣と言われても納得するほどの強さだ。

知花は、のらりくらり避けていたが、刀を受ける。壊れるかと思えたが、ぎりぎりで壊れない。

彼女は、手に力を入れる。



「皆よ我に明るき未来を授けたまえ。雲外蒼天……!」

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