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蔑まれの魔女奇譚  作者: 葛葉 玖辿
魔王討伐 Selbstmordwald
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おばあちゃんの行方の話

 


「ぜ、ゼェーブスモッドの森が……戦火で、焼けました!」

「はあっ!?」


 本当に何があったの!?

 まさか基人国が妖人の里にちょっかい出したの!?


「昨日、基人国が魔王討伐を宣言しゼェーブスモッドの森にて『魔王』との交戦を行いました。結果として基人国軍は多大な被害を出しながらも勝利。討伐されたのは聖鳥を模した不届な魔獣とのことですが……」


 電話とか無いこの世界で情報をいち早く伝えるのは大変な事だ。

 昨日の基人国の情報が今日の月人国に伝わるのは相当早いし実際頑張ったのだろう。


「『魔王』討伐に多大な貢献をし武勲を残した『勇者』を、今度は『魔女』として処刑すると公表したのです」

「な、なんで?」

「……恐らく勇者が邪魔になったのでしょう。強い力は利用するぶんには良いですが、刃向かわれると厄介な事この上ない。対立が深刻化する前に魔女として濡れ衣を着せて処分するつもりなのではないでしょうか」


 ガレオットさんが顎に手を当てながらわたしの疑問に答える。

 うーん、森で戦争か。おばあちゃん巻き込まれてないかな。心配だな……一度戻ろうかな。


「ねえ、『勇者』ってヴォルフって名前で合ってるかしら?」

「ええ、そうです。よくご存知ですね」

「やっぱそうよね!助けに行くわよ、グリム!」

「なんで?」

「なんでじゃないわよ、同級生の危機よ!?」


 え〜……いやだって、メリーの動き怪しかったじゃん。

 それでもその道を行ったのは彼女だよ?まあ同情する部分もあるけどさ……。


「お姉ちゃん、アリスからもお願いなの。助けてあげてほしいの」

「アリスまで?しょ〜がないな〜。でも先におばあちゃんの様子見てからでも良い?すぐ終わると思うから」

「なんでも良いから早く行くわよ!」

「お気をつけて」


 ガレオットさん達に見送られ、カーアン達に肩を押されつつ時の時計を呼び出し中をくぐる。

 時計の先には未だに燻り煙を上げる森と、倒壊したおばあちゃん家があった。


「……おばあちゃん?ジャック先輩?」


 嫌な汗が背中を伝う。おばあちゃん程の人なら戦火に巻き込まれようとも家ごと守り通せると確信していた。故にこその『すぐ終わる』発言だった。

 でも、わたしの育った家はボロボロで。わたしに気づいたらすぐに出迎えてくれるおばあちゃんは影も形もなくて。ジャック先輩の声が、聞こえなくて。


「い、嫌だなあ!ただいま!ただいま!!わたし、帰って来たんだよ?冗談なんかよしてよね」


 おばあちゃんが耕していた畑は踏みにじられていた。

 いつぞやに魔法の授業をした井戸は壊されていた。


 おばあちゃんは魔女で、世間的には排斥対象であってもこんな日は来ないと思っていた。

 思わず自らのインテークを掴む。おばあちゃんがつけてくれたお守り、おまじない。だけど。


 手について抜けた髪の毛は、藤色をしていた。


「な、なんで」


 おかしい。おかしいおかしいおかしい。

 まるで、騙されていたみたいじゃん。まるで、まるで、おばあちゃんが死んだみたいな──。


『……ちゃん……嬢ちゃん!』


 ハッとする。髪の毛は黄色だ。藤色なんかじゃない。

 そして、この声は!


「ジャック先輩!?」

『おう、ここだ!拾い上げてくれー!』


 瓦礫の山と化した家の中から皆で探してやっとジャック先輩を拾い上げる。

 良かった、無事だったんだぁ……!


『嬢ちゃん、泣いてる場合じゃないぜ!グース様を探してくれ、ちゃんと生きてるから!』

「! うん!」


 わたしは涙を拭いながら再び周囲を探し出す。

 そしてやっと見つけた。草むらの中に隠れるようにしていたのは──。


「なにこれ」

「ぐわっ」


 ……やたらとふてぶてしい顔つきをした紫色のガチョウの雛だった。

 羽毛が天パみたいにくりんくりんしてるけど、まさか、これが、おばあちゃん……?


『グース様〜!ご無事で!』

「ぐわ……」


 え、これが本当におばあちゃん?小さくなってるし言語能力まで失ってるけど?

 両手で持ち上げられたおばあちゃんはバサバサと羽をはばたかせて飛んだかと思うとわたしの頭の上に陣取った。……飛んだというか天資で浮いたと言うか。やっぱりおばあちゃんではあるみたい。


「えーっと、おばあさま?何があったのよ?」

『……魔王として討伐された。辛うじて生きてはいるが大分弱まッちまッたな』

「喋ったぁあああ!!!」


 ぐわぐわ言ってるからてっきり喋れないのかと!

 いや、念話?の時もぐわぐわは言っているのだけども。


『アタシは元々魔獣を統べる女王としての魔王ではあッたンだ。まァ、討伐に関しちャ身に覚えは無ェがな。大方政治的な何かだろ。関係無ェことに巻き込みやがッて……』


 てことはおばあちゃんは魔獣の魔女だったんだ。通りで耳が羽毛っぽいなと思った。

 言われてみれば確かに魔獣っぽい、というか人間らしくないところが多かった。常に裸足だし食事は味覚よりも喉越しを大事にしているしあってからずっと発音が変なところがあるし魔獣に対してやたらと強権だった。


『……はァ、ま、アタシは良いンだ。こンなンだが生きちャいるからな。問題は勇者だ。グリム、助けに行け』

「え〜〜〜!!?やだ!!!」


 おばあちゃんまでヴォルフを助けに行けって言うの!?そんなちんちくりんにされたのに!?

 わたし嫌だよ、おばあちゃんを傷つけたヤツなんか助けに行くの!おばあちゃんがこんなになるってことは魔女に対して有効な手段持ちでしょ?下手したら殺されてたかもしれないんだよ!?


『行けッつッてンだよ』

「あだだだだ!」

「……そこまで仰るのであれば、もしや理由があるのではありませんか」


 わたしの頭に乗っかってるのを良いことにアホ毛毟ろうとしないで!ハゲる!

 それを止めるようにディオニシアが疑問を投げかけ、おばあちゃんの攻撃が止んだ。助かった〜。


『はン、そこの馬鹿と違ッて聡いな、忠義の魔女。同情心があるのは嘘じャねェが、大きな理由はそれじャない』


 おばあちゃんはやれやれとため息を吐きながらぷわわと羽毛を膨らます。


『──このままじャ基人国が滅ぶぞ』

次は6月6日

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