Episode.79 予想外
「…あの…」
どこかか細い、今にも消えそうな声が聞こえてきた。
そう。先程からずっといたのだが…なんだかその場にいることが気まずそうで、なかなか声を発せなかった『彼』だ。
ブラッド。彼はいかにもばつが悪そうな顔で、メードとともにバトラの傍にいる。
ブラッド「…エナジードレイン。…僕、あっちの僕がエナジードレインをされてもなんともなかったよ?」
鬼蓮「お前の裏だからって、お前にまで影響があるわけじゃないのか。…ふむ、それはいい情報だ。これは僅かに、ある意味勝機がある。でも本当に僅かなものだな…、なんせ俺のエナジードレインはまず、対象物に触れないと発動しない。それに一度くらっているんだ、アイツも馬鹿じゃない。完全に警戒されるな…」
ブラッド「…ねぇ、ひとつ。聞いていい?」
鬼蓮「ん?」
ブラッド「…君は、その…。マナミの裏じ…蓮花の『影』なんだっけ」
鬼蓮「ああ。ま、そうだな」
ブラッド「…黄昏の城は、常に黄昏時のような薄暗い城なんだ。昔、お母さんがそう言ってたんだ。
確か…その昔、影一族っていう人達がいたらしくて、その人達が…えーっと、お母さんのご先祖様にその城をあげたらしいんだ。それで、…『闇に属さぬ者は、見つけることは出来ぬ』…ってお母さんから」
夕陽「…お前の、母親?」
ブラッド「うん。お母さん、レッドルーンっていった人だったんだ。確か…亡くなっちゃったのは何百歳だったかな…、うん、とにかくとっても綺麗で優しい人」
メード「……私と、バトラ……兄妹そろって、拾ってくれた人…」
バトラ「…名前をくださった。私達にとって大切な…『お母様』です」
この三人の、母親か…。いったいどんな女性だったんだろうか…。
…何百歳?ということは吸血鬼か。
ブラッド「えっと…あ、そうそう。僕が言いたいのは…全体的に、薄暗いんだ。城の中」
メード「…うん。…まるで、お城の中が『影』の中にあるみたい」
鬼蓮「まるで影の中、か…。なるほど、どうにかあいつの隙をつければ…」
『…あんまり無理しないでよ?鬼蓮』