Episode.77 連れ去られた者
奴が出てきた時。目を疑った。
武器はいつかの剣ではなくて、槍を構えていた。さすがにその程度のことでは驚かない。
奴は…。
『血だらけになったヒカルジとャーナリを、引きずっていた』ことに、驚いた。
ヴァンフェーニ「…クソッ、これだから嫌いなんだよ…ガキは。つーかせっかく俺様が『石』あげてやったのに…あーあ、勿体ねぇの…」
完全に二人を物扱いし、俺達の方へ投げつけた。
…幸い、息はあるらしい。だが安心できない、すぐに手当てしないと…。
ヴァンフェーニ「ん?…あん時のガキかよ。チッ。あん時手加減なんてせずさっさと潰しときゃ良かったな…」
撫子「…貴方…なんてことを…!」
夜咲「…君だったのか、チーム・PJに、あの石を渡したのは…」
ヴァンフェーニ「あん?」
理事長と旭ヶ原先生。二人を見た途端、ヴァンフェーニは…
ヴァンフェーニ「…ふ、ふはははは…あっははははは…
あっははははははははははははははははははははッ!!!!
そうだそうだ、あっははは…アンタらだったよなぁ?あの娘の『前の表面上の両親』っての」
狂ったかのように笑い出したかと思えば、何かを言いだした。
…前の、表面上の両親?
ヴァンフェーニ「そうそう…俺様がまだ目覚める頃だったな、おかげであんの小僧の記憶はぜーんぶ俺様の中にもある。んでなんだっけなあ…?」
桃千「…それ以上…喋らないでくれるかな!」
桜花「アンタに言われる筋合いはないんや!」
先輩達がヴァンフェーニに向かって攻撃を仕掛ける。
ヴァンフェーニ「ははっ。なんだよ、聞きたくないってか?」
アイツは嘲笑いながら…先輩達を、倒していった。
次々に、傷だらけになっていく。
ブラッド『や、やめて…もうやめてよ!!』
さっきの窓じゃない…。どこからか聞こえる。
ヴァンフェーニ「…テメェは黙ってろ。そっから出られないのに偉そうな口叩いてんじゃねぇよ…」
ペンダントのようなものを出すと、そう答える。
…まさか、あの中にブラッドが…。
ヴァンフェーニ「テメェは一生…そこに閉じこもってな」
パキッ、と嫌な音がした。
ブラッド『うわぁあああああああああああッ!!!』
バトラ「ブラッド様!?…それを離しなさい!!」
ヴァンフェーニ「…あ?」
バトラはナイフを構え、あのペンダントを取ろうとした。だが…
メード「…バ、トラ…?」
ヴァンフェーニ「…ザマァねえな」
あいつは、何の躊躇もなく…槍をバトラの腕に刺した。
そして、床に押し付けた。
ヴァンフェーニ「けっ、たかが使用人のくせに…しつけがなってねえなぁ?」
ブラッド『バトラは…バトラは使用人じゃない!僕の家族なんだ!』
ヴァンフェーニ「うるせぇな…。…なんか腹立つ連中だな、クソッ」
バトラ「っ…!」
頭をずっと踏みつけ、さらに傷口を槍で抉る。
こんなの…黙ってみていられるかよ…。
夕陽「…この、…!」
ラトナ「おい夕陽!?」
暁美「兄ちゃんダメーッ!!」
ヴァンフェーニ「…フン。自分からやられにきてくれて、手間が省けるもんだ」
敵わないなんてことわかってる。だけど、ここまで非道なことをしておいて…!
ブラッド『や、…やめてよぉおおおおおおーっ!!!』
『──伏せろ、夕陽の坊や!!』
ヴァンフェーニ「ッ!」
夕陽「っ!?」
誰かに『蹴飛ばされ』元の場所に戻された。
暁美「にっ…兄ちゃんお帰り!?」
ヴァンフェーニ「ッ…うわぁああああああああッ…!!!」
何故アイツが叫びだしたのか。すぐには理解できなかった。
その理由は…
鬼蓮「これ以上俺のご主人を悲しませんなこの裏野郎!!」
ただ、鬼蓮がヴァンフェーニに『抱きついている』ようにしか見えないからだ。
ヴァンフェーニ「このっ…放せ影がッ!」
鬼蓮「チッ!」
振り払われ、鬼蓮は猫のように跳躍し俺達の前に立つ。
ヴァンフェニーは…どこか、弱ったように見える。
ヴァンフェーニ「…『エナジードレイン』……か…」
エナジードレイン…。どこかで、聞いた覚えがある。
…確か、相手の生命力を吸い取って、自分のものにする、だったか…。
ヴァンフェーニ「…チッ、計算に誤差が生じた…。なら…」
指を鳴らすと、アイツは消えた。
月火も…連れ去って。
『悔しかったら…黄昏の城に来いよ。そこで決着をつけてやる』
その声が…酷く響いた。




