Episode.73 裏世界
(夕陽side)
「…君、大丈夫…?」
物凄く弱々しい声。
もしかしたら、俺よりもずっと幼いのかもしれない…ひどく幼い声。
だが、目を開けて驚いた。
夕陽「お前は…ヴァンフェーニ…!?」
ブラット「……うん。そうだよ…」
…だが、よく見ると違う。
あの時俺は意識が薄れていたが、アイツの顔は見えていた。鋭く光る赤い眼に、黒に銀が混じった髪。
だが俺の前にいるのは…弱々しい、今にも消えてしまいそうな赤い眼と、黒みのかかった銀の髪。
同じに見えるが…全くの別人に見える。
「あいったたたたたた…」
「…ん?なんだここ」
…どうやら他の皆もここにいるみたいだ。
?…ヴァンフェーニはどこに…?
ラトナ「…あっ」
夕陽「どうした、ラト…」
目線を追ってみると、ヴァンフェーニは今いる部屋の壁際に体育座りをして、顔を埋めていた。
ブラッド「…」
ラトナ「お、おい…?」
ブレイズ「…彼は、確かあの屋敷で…」
ブラッド「ごめんなさい」
ブレイズ「…?」
ブラッド「ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい…」
彼は、泣きながら謝ってきた。
…外見の年齢は俺達とあまり変わらないのに…。
もしかしたら、精神年齢は――ずっと、幼いんじゃ…?
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…流石、兄姉といったところか。
リューとアーネによって、ヴァンフェーニは一応泣きやんだ。
ブラッド「…こうなったのも、全部…僕のせいなんだ…全部…」
アーネ「…どうして、そう思うのですか?」
ブラッド「……向こうの、僕が…そう、言ったんだ…。
『黒き悪夢の本、魔道書【ナイトメア】に触れなければ良かったね』…って」
リュー「…魔道書【ナイトメア】…!?」
夕陽「何か知ってるのか、リュー」
リュー「…知ってるも何も、最悪だよ。思い出すのさえ、本当に吐き気がするぐらい。
まさか…ここにまで絡んでるなんて、…俺も相当、だな…」
今まで…こんなリューの顔は見たことがない。
本当に嫌そうな、憎そうな…嫌悪感に満ちた顔。