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FLARE GUARDIANS  作者: 睦月火蓮
PART.5
83/108

Episode.70 束の間の休息

―夜―


この学園って、天文台とかあるんだなー。昔桃兄達に聞いといてよかったかも。


蓮花「…『星だけが、私を癒す唯一の光』」


『…そう、なんですか?』


蓮花「『星は何度見ても飽きない。常日頃姿を変える。…そして、羨ましい存在。私には、太陽と呼べる存在が、ない。自ら光ることさえも、出来ない』」


『そんなことないですよ!…人の過去とか、見たくも知りたいとも思いません。でも、少なくとも私にとってれ――』



「…月火?」


ふと我に返る。

入口の方を見ると、夕陽が立っていた。

…あ、こうやって夕陽の素顔とか私服とか見るの初めてだ。コイツ意外とイケm((ry

いやいやいやいや何考えてるんだ私。え?いつの間に隣座ってたの?


夕陽「…『星だけが、私を癒す唯一の光』。…不思議だな、お前は」


蓮花「…そう?」


夕陽「…俺も、少なくとも、数ヶ月前まではそうだった。

 …実を云うと。俺は最初からエレメントにいたわけじゃないんだ。本当に普通の、毎日泥まみれになりながらサッカーとかしてた、活発な少年だった。

 だが…能力が発覚して、異質と言われ、妬まれ、嫌われ、次第に感情なんて消えていって…最終的に、学校の階段から突き落とされて…完全に、人間なんて、信じられなくなった。

 さらに苦痛だったのは、そんなことされても半年程度で治ったこと。普通なら一生歩けないような大怪我とかだったらしい。…本当、その時は死んだ方がマシだって思ったぐらいだ」


夕陽は、全く嘘をついていない眼をしていた。

つまり…


夕陽「…そのあと、俺は両親の勤めるエレメントに転入した。その時だ。桃千先輩やルル、皆と会ったのは。

 そうだな…今思えば、あれも勧誘か。ルルがしつこいぐらい俺についてきて、一ヶ月ぐらい続いて俺の方が折れて入ったんだ」


なんじゃそりゃ。ルル先輩ストー勧誘か。

あ、でもやりそうだな。


夕陽「あいつらもあいつらだった。まあ、ルルよりしつこくはなかったが…それでもしつこし部類には入るな。

 それで、ある日…ついに頭にきて俺は言ってはいけないことを言ってしまってんだ。『馴れ馴れしくしないでくれ、虫唾が走る』と。

 そのあと、どうなったと思う」


蓮花「どうなったって…。…駄目だ、ラトナが胸倉つかむ以外思い浮かばない」


夕陽「不正解だ。正解はな…

 リューが、『甘ったれてんじゃねえよたかだか10年程度しか生きてない餓鬼が』って、あのいつもの笑顔で言ったんだ」


蓮花「なにそれ怖っ!?あの優しさ№1のリューがそんなセリフをさらりと言えるのが予想外過ぎて怖い!!」


夕陽「まあ、そんなこと言われたら誰だってカッとなるだろう。だけど、俺は…そんな気持ちもしないし、反論もしない代わりに言ったのは『ああ。俺は餓鬼だよ』。そうだな…開き直ったのかもな。

 そのあと、とりあえず気分転換に街を歩いていたんだ。で…最悪の事態が起きた。

 スタンガンで襲われたんだよ、後ろから。確かその時…『NGC狩り』っていうのが一部で流行っていたみたいで、俺はそのことを知っていた筈なのに…警戒も忘れていた。まあ…少なくとも動揺したんだろうな。

 体中痺れて動けないのに両手両足を固定されて、助けさえ呼べず、ただ殴られて、ただ蹴られて、ぼやけた視界で微かに見えたのは…ナイフ。つまり、殺されかけたんだ。

 別にもう、そこまできたならもう死んでもいいと思えたぐらいだった。

 そこまで来て、目を閉じよとした時――」



――俺の大切な後輩に、何してくれるのかな…?



夕陽「最初、幻聴でも聞こえてるのかと思った。だけど…」



――おいおい、何諦めてんだよ仏頂面。


――もう少しの辛抱だ、夕陽君。


――やれやれ、世話が焼けるな。



夕陽「紛れもない、フレアガーディアンズのあいつらだった。

 無謀すぎる、自殺行為としか思えなかった。来るなとも叫びたかった。だけど…俺は安心したのか、それともまた気絶させられたのか、今でも分からないが…気がつくと全員医務室にいた」



──まったく、君は世話が焼けるねぇ。


──ってお前が言うか。今朝さらりとあんなこと言った人間だろうが。


──んー?なんのことかなラトナ。


──おまっ…


──…なんで、なんで、助けに来たんだよ。俺なんて…


夕陽「…皆、キョトンとしたあと、せーのとかそんなかけ声とかなく、自然に『仲間だから』って…当たり前のように言われた。

 …流石に、俺も泣いたよ。ただ嬉しかった、どんな無愛想でも、こいつらは俺を『仲間』として受け入れてくれていたんだって」


蓮花「…夕陽も、壮絶な人生歩んでんのね…」


夕陽「…なあ月火、このタイミングで聞くのも問題だが『星だけが、私を癒す唯一の光』というのは…?」


蓮花「……じゃ、説明する為に…物語でも」



──昔々、ある四人家族がおりました。父、母、兄、妹の四人です。


ある日、兄の親友と兄妹が遊んでいると、ボールが木に引っかかってしまいました。妹はボールを取りに木に登ってしまいました。そして…妹は木から落ちてしまいました。

妹は無事でしたが、兄の両足は動かなくなってしまいました。


そこから、歯車は狂い始めてしまったのです。


妹は両親に嫌われ、存在さえも何もかも否定されてしまったのです。

ですがある日、妹は一瞬でしたがまた存在を認めてもらえたのです。

その日から、「完璧」にのめり込むようになっていったのです。

ですが…「完璧」になればなるぼど、心が歪んでいきました。

次第に妹から、人が離れていったのです。悪循環で人が離れれば離れるほど「完璧過ぎる化物」になっていきました。

それでも、妹に接してくる親友がいました。

だけど…その親友はある日、とあるビルの屋上から身を投げてしまったのです。妹の目の前で。

妹の心は完全に壊れてしまいました。


妹はある日見た夢で、不思議な体験をしました。

自分とよく似た、小さい女の子です。「フヅキカレン」という女の子です。

その女の子と、とても仲良くなりました。

ですが…夢は夢、いつかは目覚めなければなりません。

夢から覚める直前に、女の子と約束しました。「いつかまた会おう」と。


それから長い年月が過ぎ、妹が20歳の誕生日…生きていた、最期の日。

あの女の子と、再会しました。

そして「また会えるといいね」と言って、妹は永い眠りにつきました。


妹が次に目覚めたのは、ある陰陽師の家系でした。

「アサヒガハラレンゲ」という名前をもらいました。



蓮花「…終わり」


夕陽「……」


唖然としているのか、夕陽の顔を見ると完全に固まっている。


蓮花「…別にさ、過去とか気にしてないんだよね。今更変えられないし。

 それに、そんなことがあったから今の自分があるわけでしょ?」


夕陽「………。お前は、強いな」


蓮花「強くならなきゃ、前に進めないでしょ?」


そのあと、私と夕陽はお互いの知っている知識や話、色々なことを話した。

気がつけば時間は相当遅くなっていた。


天文台を出る前に、夕陽にあるものを渡された。

半分に割れた赤い石。それに紐を通したもの。


夕陽「魔道具だ。魔法石を二つに割って、通信機の役割をする魔道具。

 はっきり言って、お前は危なっかしい。もう半分は俺が持ってる」


蓮花「夕陽はヒドいなぁ…。ま、ありがと」


夕陽「…ああ」

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