BLACK STORY
一人じゃ大きすぎるベッドで眠ってた筈なのに、暗闇にいた。
その中で、君と僕は会った。
「キミは…だれ?」
「…×××」
「僕は…××××」
お父さんとお母さんを病気で亡くした僕。
兄の事故の所為で両親に嫌われている君。
二人とも、泣いていた。
「お父さんもお母さんも…病気で死んだんだ」
「お母さんもお父さんも…私を見てくれない」
「×××は、辛いよね」
「××××は、悲しいよね」
最初のうちは互いの事をはなしてた。そして、目が覚めた。
…夢だったのかな。なんて、その時は思った。
その日から、僕は×××とあの空間で話した。
その日のこと。嫌なこと。楽しかったこと。沢山。
「今日ね、テストで久し振りに全部満点だったんだよ。そしたら、二人とも私を見てくれたんだよ」
「今日ね、友達ができたんだよ。__っていう女の子」
嫌なことは忘れたけど…楽しそうな×××は好きで、全部覚えてる。
だけど……
「×××!今日はどうだっ……た…………?」
「………」
この日。
×××の心が、壊れていた。
何も喋らなくなった。
何も見なくなった。
ただ、遠くを見つめていた。
「……×××、どうしたの…?」
「…」
「…聞こえてる?…ねえ、×××」
「…」
「×××ってば、ねぇ!」
「…」
「………×××…」
いつか言っていた×××の言葉。
『お母さんもお父さんも…私を見てくれない』
「…×××…」
…君も、こんな気持ちだったの?
こんなに、辛いものなの?
こんなに、悲しいものなの?
こんなにも──
「…っ…ひっく…×××…お願いだから…僕を見てよ…。
何があったの…?
僕に話してよ…。
頼むから…僕を…一人にしないで…」
──空しいものなの?
それ以来。
×××と僕は、
目を見ることも、
話すことも、
笑うことも、
会うことはなかった。
何度眠っても…何度起きても、×××とは会えなかった。
数年越しの『寂しさ』の後回しだったかのようにも思えた。
僕は現実から目を背けたくて…書庫に閉じこもるようになった。
沢山の種類の沢山の本。何度も読み返した本。一度だけ読んだ本。
本は好きだった。中には魔術が描いてある本もあって、それで色々と魔法を覚えた。
ある程度成長して…もう全部読み終わってしまって、また一通り読もうかと思っていた時。
見たことのない、真っ黒な本を見つけた。
背表紙には【Nightmare】と書かれていて、何だろうと思ってその本を手に取った。
やめておけばよかったと思う。
僕は…気付くと、黒と赤の部屋の中にいた。
目の前には…鏡が置いてあった。
触った瞬間…驚いた。
さっきまでいた筈の書庫が映っていた。
『クスクス…。やあ、お目覚めかな表の僕?』
「か、鏡の僕が…僕に話し掛けてる…」
『いやー、そっちはタイクツだったよ。ホント。
×××だっけ?あの人間の女…“餌”には丁度いいよねぇ…?』
「な、なに…エ?…エってなに…?」
『あれ?知らないんだ。…うっわー、こんなのが表の僕とだったなんて寒気がするよ…。
ま、しょうがないか。だって…
君、精神年齢が止まっちゃったんでしょ?あの人間と会えなくなってから。…うわー、我ながらどん引きだよ。第一僕達吸血鬼が愚かな人間となんかに仲良くなれるわけないだろう?たまに例外もいるみたいだけどさーぁ。
友達なんてさ、ただの上辺だけの関係だよ。虚言だよ。戯言だよ。だから嫌いだよ、大っ嫌いなんだよ。クソ甘ったるい予定調和の本ばっかり読みやがって…ちぇっ。ちぇっ。虫唾が走るんだよ…』
「?…お母さんがよく話してくれた本だよ?」
『はーぁあああ…っ!?…ざっけんなクソガキが!!』
「わっ…」
『表がこれだから“俺様”がこうなったんだろ!?表が綺麗なら裏はドス黒ってか?あっはははっ!!じゃあ感謝しねーとなぁ…なんていうと思ったか弱虫が!!』
「そ、そんなに怒っても…」
『ああっ!?俺様に口答えしてんじゃねえよ!!ああそうだよどーせ俺様は偽物だよ!だから何だよ!?偽物だから本物に一生従えってか?本物は偽物より偉いんですかー!?』
「こ、怖い…」
『……ん?…ちっ。人が来るのか。
じゃあねー、表の僕』
「まっ…待ってよ…ねえ!」
『君は僕と入れ替わったんだ。だから、今日から君がそこ。
…馬鹿な表の僕。あの黒き悪夢の本、魔道書【ナイトメア】に触れなければ良かったのにねぇ?』
「…ナイト、メア…?」
『そうそう。助けなんて求めても無意味だよ?だって…俺様にしか聞こえないんだからさ。
お前はそこで…あの人間の女が、俺様に食われる姿を指くわえて見てな』
「えっ……そ、そんな…っ!待って!×××は…!!」
『…失礼します。××××様、そろそろ…』
『…分かった。…すぐに行く』
『…?……』
「___!!僕は…その人は僕じゃないんだよ!お願いだから気付いて…!誰か…!!」
助けを求めていた。ただ泣き叫んだ。でも…気付いてくれない。
疲れて、眠って、起きて助けを求める。
だけど、そんなことは…数日ぐらいでやめた。諦めた。
…どうやら『彼』の持ってるネックレスのような物から、鏡を通じてみているらしい。
いやでも…外が見えた。
そんな日々が続いて…ついに、『彼』は見つけてしまった。
生まれ変わった×××を…××を、見つけてしまった。
今まで感じたことのない絶望感。
どうにかして××を、守りたかった。
どうすればいいんだろう…。
もう一度、×××と話したい。
話して、このことを伝えたい…。
「助けて」って、言いたい…。
×××を、助けたい。
気がつくと、僕は眠りについていた。
「…おーい」
…?
「えーっと、起きてるー?」
「…だ、れ…?」
「私?××っていうの」
「××…。…!…君、××っていうの!?」
「わおっ。…う、うん?」
「…よかったぁ…。やっと会えた」
「?」
「…あのね、××。突然で信じてもらえないかもしれないけど、よく聞いて。
君は…──」
僕は、話した。
そして…気がつくと、あの部屋の中にいた。
…どうか、伝わっていてほしい。××に…。
「僕を…助けて…『蓮花』」




