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FLARE GUARDIANS  作者: 睦月火蓮
PART.4
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Special episode.Ⅵ

*蓮花が倒れた日の夜*


(撫子side)


「手伝ってくれてありがとねー、暗い所よく見えなくてさー。それじゃあ、行ってくるよー」


「はーい」


女子寮に向かった茜と旭ちゃんを見送ると、私は蓮花のいるベッドに向かった。椅子に座って、蓮花の顔を見た。

そっと頭を撫でてみる。…いつの間にか、こんなに大きくなって…。


「あれ、理事長?」


後ろを振り返ると、旭ヶ原先生。……ああ、今は「夜咲君」か。


夜咲「……あ、今は理事長じゃなくて『撫子』だったね」


夜咲君は私と同じく椅子に座って、蓮花のことを見る。


夜咲「……ぐっすりと、眠ってるね」


撫子「この子の寝顔を見たのは、いつ以来かしら…」


目を閉じると、今でも思い出す…。
















































「──遊んでないで、早く勉強なさい」


「くだらないこと言っていないで、勉強しなさい」


本当に、情けない親だった。

あの『事故』が起きて、全部この子のせいにした。見ていなかった私達にも責任があるのに。

あの『事故』以来。あの子を可愛がる一方で、この子を蔑ろにした。


いつの間にか…この子は笑わない。必要最低限喋らない。顔を見せない。酷い時は家に帰らない。

時折、部屋の中で暴れているような、叫んでいるような…音が聞こえた。その度に怒鳴り付けた。

酷い親としか、言い様がなかった。


間違っていることに気付いた時には…遅かった。

この子は…親友が自殺を図って、それを止めようとして飛び出した。…信号が青から赤に切り替わったことに気付かずに。

あの子がその直後、私達に言ったのは…


「何で…何で麻奈美だけこんな目に遭うんだよ…?…おかしいだろ…?麻奈美は悪くないのに…何でだよ…?」


「ずっと苦しんでたんだよ…?ずっと…一人だったんだよ!?居場所がなくて…寂しかったんだよ!?どうして慰めても…助けてもくれなかったんだよ!!それでも親なのかよ!!」


「もう…来ないでよ…。二人の顔なんか見たくない!!」


完全な拒絶。

あの子は足が治ってから、一切連絡もくれなかった。

最後に会った、麻奈美の葬式の時も…


「何で来たんだよ…」


「今更…今更両親顔すんなよ!!」


「お前らなんか大っ嫌いだ…!!」


…その翌日。

私達は、信号無視をした一台の車による玉突き事故で…この世から、去った。

最後の贈り物を…届けた後に…。






わたしのかぞく 一年五組三番 山風麻奈美


 わたしのかぞくは、母と父と兄。わたしをふくめて四人かぞくです。

お母さんはとってもきれいで、とてもやさしくて、りょうりがとくいです。お母さんは元小学校の先生で、べんきょうをおしえてくれるのが上手です。

お父さんは考古学者さんで、とってもかっこよくてやさしいです。一度おしごとをしてるお父さんをお兄ちゃんといっしょに見に行きましたが、とてもしんけんで、ほかの人にしじを出したりとかっこいいです。しょうらいわたしがだれかとけっこんするなら、お父さんみたいな人がいいです。

お兄ちゃんは、わたしの三つ年上です。今は色々あってびょういんにいますが、むかし、サッカー選手になるんだって言ってました。お兄ちゃんはやさしいけれど、ときどきイジワルです。ときどきケンカするけど、楽しいです。

 わたしは、わたしのかぞくが大好きです。コワイゆめをみたときには、いっしょにいてくれるし、テストで百点ときはあたまをなでてくれます。大切なかぞくです。いつもありがとう、お父さん、お母さん、お兄ちゃん。大好きだよ。






×月×日


今日は学校の参観日。授業は作文の発表。題名は「わたしのかぞく」。

理由はそれが一番教師受けが良いから。あと特に書くこともないし。良い子を演じるならそれが一番でしょ?

皆には「二人ともお仕事があるから」って言ったけど、本当は嘘。だって手紙みせてないもん。作文だって、ウソがあるんだもん。勉強ならいつも一人でやってるし、お仕事なんて本当に幼いころにいったから覚えてるわけないから、お兄ちゃんに聞いて書いただけ。

皆が理想とする家族像を真似て書いただけだから、所詮あの作文は偽物なんだよ。本当ならもう少し漢字で書きたかったけど、先生が五月蠅いから年相応の感じにしただけだし。偽物。作り物。全部、嘘。私は嘘吐きだよ。所詮は言いなりになってる操り人形だよ。それを信じてる連中って馬鹿みたい。

皆私のことを「良い子」とか「偉い」とか「凄いね」とか言うけどさ、本当にそう思ってるの?じゃあなんで先生がいないところで殴るわけ?なんで蹴るわけ?なんで仲間外れにするわけ?馬鹿じゃねえの。俺がお前らみたいなゴミクズなんかに褒められても嬉しくねぇよバーカ。死ね。さっさとくたばれ。将来ハゲろ。

大体人を見下してんじゃねえよ。まあそれが現代社会の本性なんだろうけどさ。あははー。

あーあ、なんで生まれてきたんだろー。こんな世の中に生まれたくなかったわ。ま、死んだら色々面倒だしなー。つーか遺書書くの面倒、内容もどーせ「良い子の小学1年生」の設定で書くんだろ?。あの連中はどうせ死んだら葬儀に金がかかるとか言ってるんだろ?うっわー、面倒だらけでヤダー。



×月×日


…あーあ。終わった。

ついに怒りが爆発して近くにあったカッターとホッチキスで暴れちゃったわ。

あーあ、これで優等生も終わりだわー、ヤだわー。

で?ああそう、なんかもう開き直っちゃったから思いっきり暴れたらさ、病院送りでハゲオヤジが言ったわけ「お譲ちゃんの中には、悪い悪魔がいるんだよ」って。

思わず笑いそうになったつーか、いやもう通り越して呆れてポカーンとしてたわ。どんだけ俺をガキ扱いしてんだよ。普通に「精神が病んでる」とか「解離性同一性障害」とか「二重人格」とか普通に言えよボケ。つーかこっちが本性だっての。バッカじゃねえの。

つーわけで精神安定剤貰って、今現在飲んで寝る。以上。



×月×日


今日屋上で鋏構えてたら女の子に止められて、なんか色々あって髪が切れた。

別に軽くなったからいいけど。



×月×日


今日。あの女の子に会った、名前は星池双葉。あの事件以来教師すら寄り付かないって言うのに何でか親しくしてくる。なんか、妙にいやじゃない。

むしろ…楽しい、そんな気がする。


×月×日


今日、双葉は学校を休んだ。

つまらない。さっきから何か嫌な予感がしてしょうがない。

なんでだろ。なんか、いてもたってもいられないっていうか、じっとしてら






最後に、この子の書いた日記を見て驚いた。

この子は…ここまで、病んでいたんだって…。


…何故か、あの子にこの日記を送ろうと…送らなきゃいけない気がして、あの子は不在だったけれど、代わりにお友達がでてくれて、受け取ってくれた。

これで、良いんだって…思った。


「…私達。間違ってた、わね…」


「…そうだね。…謝っても、もう遅いよね…」


「…ねぇ。帰る前に…麻奈美のお墓に、寄りま──」













































夜咲「──撫子」


声をかけられて意識が戻る。


夜咲「……今度こそ、ちゃんと、幸せにしよう」


撫子「……ええ」


それが、私達にできる…。

唯一の、償いなら…──

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