Episode.42 その数分後
(暁美side)
暁美「…兄ちゃんおっせーな」
ネート「何かあったのかな」
…なーんか妙な胸騒ぎがするんだよな。
よーし…
暁美「ネートちゃん、医務室言ってみよう!」
ネート「うん、そうしよっか」
二人で手をつないで医務室に向かう途中…
暁美「あれ?ママだ」
茜「あら、暁美ちゃん。それにネートちゃんも」
暁美「ママ、医務室じゃないの?」
茜「蓮花ちゃんの報告。今から戻るところだよ?」
ネート「誰かいないのですか?」
茜「ヒカル君がいるから大丈夫よ」
三人で医務室に入ると、兄ちゃんもヒカルもいない。
蓮花ネェは眠そうな目で、私達を見ていた。
ネート「蓮花お姉ちゃん。夕陽お兄ちゃんとヒカル君は?」
…って、兄ちゃんの話じゃ忘れてるんだっけ?
蓮花「……あぁ、あの二人なら、どこかに行ったわよ。トスレオフが何とかって」
暁美・ネート「「……え?」」
コンコン、と音がして窓が開いた。
そこから、エオルが入ってきた。
エオル「…全く。モテモテだねレンゲは」
蓮花「…どういう意味?エオル」
エオル「そのままの意味。ふぅ、カレンちゃんといいレンゲといい、よく似てるね貴方達は」
蓮花「…そう?」
ん?気のせいか口調が柔らかいな…
エオル「で、大変なことになった。
ヒカルとユウヒは、あの屋敷に向かったみたいだ」
あの屋敷?
「あの屋敷!?」
茜「医務室ではお静かにー、ルルちゃん」
ネート「お姉ちゃん!」
ルル「あの屋敷に向かったって本当!?」
エオル「あー…sorry…ちょっと、君が来るとレンゲが混乱するから」
ルル「え?」
蓮花「…?…?」
エオル「レンゲ。彼女はルル・ジュエル。ルビーじゃないよ」
蓮花「……世界には本当にそっくりさんがいるんだ…」
ルル「え?…えっ?」
エオル「…全く、ファイならまだしもシャドウ…。まだフィルがサポートしてるから良いけど…。
ユウヒとヒカル。彼らは本当に無謀だよ」
はぁ…。と、大袈裟に溜め息をつく。ポーズもお手上げ状態だし。
エオル「あの森は夜咲達が昔行って術かけちゃったからなー…いやー、困った困った」
暁美「術?」
エオル「迷わせるのさ。屋敷にたどり着けないように、無意識に出入り口に戻るように」
ルル「でも、私達は確かに…」
エオル「術をかけた本人」
遮るように話した。
エオル「術をかけた本人、または同じ属性につく者。…君達を屋敷の前まで案内したのは、誰かな?」
ルルネェは考えるような素振りを見せてから、言った。
ルル「……『リュー』」
エオル「ふんふん。あっはー、ならたどり着けておかしくない…というか、当然だよ。だって術かけたのは…」
そこまで言って、黙った。
エオル「…いや、やめておこう。これ以上は怒られるからね。
話を戻すけど…でも、まだ手はある。行けばいいんだから、僕達も」
蓮花「言ってること矛盾してない?…行けないんだよね」
エオル「まぁ聞いてよ。いいかい?そのリューが屋敷まで案内したなら、また案内してもらえばいい」
蓮花「…難しいと思うよ」
エオル「何故?」
蓮花「…この子、旭に聞いたよ。私といたらしいんでしょ?その時、急に立てたくなった私を背負った時、術が…」
茜「んー?君は術にかかってること理解できるの?」
蓮花「…よく分かりません。何となく…そんな気がするだけです」
茜「ふぅん。君は強いねー」
エオル「仮にかかってたとしても大丈夫。彼は強いから」
ルル「強い?」
エオル「そう。だって普通ならこの術はかけられたことを認めない、だから厄介だ。
…と、さてさて。そろそろかな」
「潜入成功…かな。君も人使いが荒いねぇ、ヒドいよ」
暁美「リュー?」
「ん?…ロートに、ガーネット、ルビー。うんうん、そっくりそっくり」
エオル「やー、ファイ。ワザワザ悪いね」
ファイ。そう呼ばれた人は、まんまリューだった。
ファイ「それで、何かな?」
エオル「あのねぇ…」
ファイ「冗談だよ。それで、仕事だね」
エオル「まぁ、僕じゃないけどね…」
ファイ「オッケーオッケー。君に頼まれたら断れないからねー」
くるりとエオルから私達に視点を変えた。
ファイ「やぁ、はじめまして。俺はファイ・リュミエール。
エオルの頼みで案内人役をつとめる者だよ」
…うっわー。外見も中身もそっくりさんたー。
もはや同一人物じゃん。
ファイ「行くなら早い方が良い。…ま、問答無用でリューやお子様達は止められそうだけど」
お子様達…って、私らのことか?
えーまた留守番!?
ルル「…分かった。皆と話してくるから校門で待ってて!」
と、言うなり物凄いスピードで出て行った。
茜「廊下は走らなーい。…遅いか」
エオル「…あとは任せたよファイ」
ファイ「…了解」