Episode.40 妖術
リュー「…君はいつから、気付いてたのかな?『僕』が術にかかってたの」
スゥ…とリューの髪が少し黒くなる。目も金色に染まる。
…俺、最近月火の影響でも受けてきたか…。良いんだか悪いんだが…。
夕陽「…医務室から出て、お前と話した後。妙な違和感があってな」
リュー「へー。結構早いね」
白猫「(あ、やっぱり違ったんだ)」
このリューはどうも、飄々としているというよりも…馬鹿にしているというか、嘲ているというか…
リュー「…まぁ。ある程度この子に聞いてるから問題ないよ」
この子。というのはフィルのことか。
リュー「僕としては、あの術はギリギリセーフ。レンゲちゃんはアウト。
違いは一つ、僕が『影』の魔力を所有していたからだよ。でも説明は苦手だから彼に聞いてよ」
ニコニコとそう言う。
…いったいリューは何者なんだ?
桃千「うーん。リューの様子を見る限り…あれかな。『忘鳥』、別名『鶏の術』」
忘鳥。そのままの意味、鶏の術。
桃千「効力は三日間。掛けられたものは記憶がなくなる。要は催眠術だよ。必要な道具は鏡とそれ専用の札。
でもこの術は色々と厄介でね…術をかけた本人でも解くのは困難。掛けられた本人は記憶がないことを決して認めない。思い出すこともない。
利点と言えば利点だけど…掛けた人は対象者の『忘れている』記憶を知ることが出来る。あ、知ることが出来るだけで改変は出来ないよ?
ま、放っておいても勝手に解けるから…あまり問題じゃないと思うよ」
夕陽「…あの、ならリューは…」
桃千「リューは例外だよ。だって見た目より精神年齢が誰よりも上だし、無駄に肝が据わってる」
リュー「無駄とは余計だよ」
桃千「うん。まあこれは妖術に関して素人でも簡単に対処できる方法だよ」
夕陽「…そう、ですか」
桃千「そういうこと。でも良かったよ、あまり大事に至らなくて」
夕陽「…」
俺はリューとフィルを連れ、ルームFに戻った。
色々と皆に話し(リューの話は省いた)、一旦医務室に行ってみた。