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FLARE GUARDIANS  作者: 睦月火蓮
PART.6
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Episode.85 終結

──あー、もうその辺でいいよ」


声が聞こえた。

数時間前にも会話していた筈なのに…何年ぶりに聞いた声のように、酷く懐かしく感じる。


夕陽「…れ、蓮花……」


髪がほどけ、微かな違和感はあるものの…蓮花がいた。

いつもの笑顔を見せながら。


「…お、おい…」


蓮花「ん?」


声を震わせながら、ヴァンフェーニは声を発した。

どうやら…鬼蓮は、加減していたらしい。


ヴァンフェーニ「おい…なんだよ…俺様を生かしたら…また狙われるんだろ…?」


蓮花「んー。ま、人間生きてれば誰かに狙われるのって、誰でもあり得ることだし」


ヴァンフェーニ「は、はぁ…?」


…二人とも、笑っている。だが…

明らかに、違っていた。


ヴァンフェーニ「こ、怖いだろ…? なぁ?…憎いだろ…? 両親半殺しにされてんだろ…?」


蓮花「ああ。あれね、別に陰陽師ならあんなことあってもおかしくないし。

 憎いって言われたら…うん、憎いよ。だから、鬼蓮のエナジードレイン」


ヴァンフェーニ「ふざけんなよ…」


蓮花「ふざけてないよ」


次第にヴァンフェーニから笑顔が消えていく。

…そうか。焦っているんだ、ヴァンフェーニは。


ヴァンフェーニ「な…なんだよ…それじゃ…それじゃ…!」


蓮花「残念だけど、私は『君の願望を叶える』気なんて端からないよ。

 そんなエンディング、誰が望む?

 誰が笑う?

 誰が幸せになれるの?

 君だけだよ。こんなメリーバッドエンド。

 君が助けたい彼でさえ望まないかもしれない」


ヴァンフェーニ「そんな…そんなこと…そんなこと認められるかよ…!」


…凄い専門家を前にしているかのような感じがする。

蓮花は、まだ一人前でもない陰陽師らしいが…。


ヴァンフェーニ「それじゃあ…アイツが…!





































──ブラッドが、成長できないじゃねぇかよ…!!」


ブラッド「…えっ…?」


蓮花「君の存在が消えれば、ブラッドに現在の年相応の成長が得られる。

 だけど…成長したらどう?君の考えたこと、ぜーんぶ分かっちゃうんだよ?

 それってさ……『一生罪悪感に苛まれながら生きろ』ってこと?」


ヴァンフェーニ「はぁ…?んな訳ないだろ!…俺は…アイツにとって、邪魔な──」


蓮花「まだわかんないかな。この大阿呆者が、大馬鹿者が。それとも莫迦者の方がいい?」


馬鹿も莫迦もどっちも変わんないっての。表示の問題で読みは一緒だ。


蓮花「いくら自分の偽物…おっと、この場合は裏返しの偽者かな。どちらにしろ、彼の精神年齢からして、君の行動が分からずとも、真意は知らずとも…

 君の存在を消す。つまりは、殺すってことになる。それくらい分かるよね?ブラッド」


ブラッド「…うん…」


ヴァンフェーニ「…」


蓮花「それを目の前でやれ?おいおい、君がどんなに真面目に言ったとしても…私には笑えない達の悪い冗談にしか聞こえないね。

 私が思い出したから良いものの…確か、私の親友が自殺しちゃったのは四年生。しかもブラッドと私、前世もだけど山風麻奈美は同い年。

 精神年齢10歳の14歳の少年の前で殺せって?一生のトラウマを植えつけろと?」


ヴァンフェーニ「………っ」


蓮花「…さてブラッド。君はどうしたい?

 君の返答次第で私が彼を殺すし、生かすし。死よりももっと恐ろしいことをしてもいいんだよ」


レット「なっ…」


カレン「…」


紅蓮『…ある意味、残酷な陰陽師だな』


ブラッド「…」


夕陽「…ブラッド。お前がどうしたいか、言ってこい。お前がどんなことを言ったとしても、責める権利はない。

 そうだろう、蓮花」


蓮花「うんうん。…んー?」


現に蓮花の手には、ドーランのドラゴンブレスで出した刀の一本を持っている。

…もしや、あの一本に影響されて…?


ブラッド「…分かった」


そう一言答え、真っ直ぐヴァンフェーニを見る。

そして、歩み寄る。


ブラッド「…君の存在が薄れてく度に、僕の中で何かの変化があった。

 君は、僕が受け入れたくなかった『時間』を、受け入れて、ずっと持っていてくれたんだよね」


ヴァンフェーニ「…」


確かに、今思えば…最初に出会ったあの空間から、医務室、そして今では…雰囲気が違う。

…ブラッドは、両親が亡くなって、心の寄りどころだった麻奈美とも会えなくなって、無意識に成長を拒絶したのだろう。『時間が進んでほしくない』『時間が戻ってほしい』…そこまではいってないのかもしれない。

いや、そもそも…これは所詮、俺の勝手な推測か。


ブラッド「…ありがとう。もう一人の僕」


ヴァンフェーニ「…礼を言われる筋合いは、ねーよ」


ブラッド「…。…蓮花」


蓮花「何かな?」


ブラッド「僕は…、僕は。

 もう一人の僕を助けたい。ううん、存在を残したい。

 成長なんて、これからすれば良い。僕は…彼と、一緒に生きていきたい」


迷いはない。…ブラッドらしい、答えだった。


蓮花「そう言うと思ったよ。

 うん。君がそう言うまでに良い方法を考えておいたよ。これは私もやったようなことだ。まぁ一人例外はいるけど」


チラッと鬼蓮を見る。……ああ、そういうことか。

これは俺にも分かった。


蓮花「君が、君の考えた名前を、彼につければいい。

 名前っていうのは、それに縛られる。

 半人前である私が、三人もの式神を制御出来ているのは、鬼蓮はともかく名前を付けたからだ。

 これは陰陽師でなくとも、魔力のない一般人であろうとも出来る簡単なことだよ」


ブラッド「…名前…」


ヴァンフェーニ「…」


蓮花「まぁ吸血鬼なら吸血鬼らしいやり方もあるけど…君はやりそうにないからねー」


…あ、吸血か。


ブラッド「……じゃあ、そうするよ」


にっこりと、笑顔でそう言った。


ブラッド「…君の名前は──」

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