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9話 わかれ道

都からの兵士からは特に害を及ぼす影響はなく、ただ

紋章力が無いだけと判断され、村へ帰された。

しかし、村での生活はその影響力が生活維持の範囲で

影響力を及ばしていた。


解紋の儀以来からの噂は広まる。


サスウェイ家の次男はアンデットであると。


生命活動が紋章力から来ていると一般的に浸透している中、

紋章力が無いコーリィは死んでいるのに動いている。

つまりはアンデット。


魔物の中で人骨のモンスターの名称でもある。

つまりはその魔物と一緒ということだ。


「近づいたら紋章力を吸い取られるぞ、絶対に近づくな」


「なんで放置されているの?魔物なんだから討伐してよ」


心ない会話が飛び交う。


アキメはきっと味方してくれる


「コーリィごめんね!うちでの手伝いはもういいから、

 あと出来ればあまり商店にもよらないようにしてくれないかな?

 ウチラの商売は世間体ってのが重要なのよ。ごめんね!」


世間体なら仕方ないよね。ならコンフィル、マミル、ライルは

味方してくれる。


「コーちゃんってどうやって生きてるのかな?もしかして私の紋章とか使うと

 逆に死んじゃうのかな?」


「コー、すまない、お前と関わらないようにと言われているんだ。

 今後は遠慮してくれ。」


「あっち行ってくんないかなコーちゃん」


まだ10歳の子供だから仕方ない。

言葉選べなかったり両親には逆らえないんだよ。

それならセシリアとガリアならきっと・・・


「コーちゃん」


心配そうに近寄ってくるセシリア


「セシリア!近寄るな!」


ガリアの怒声が響く。


「嫌!!!」


それを無視し、首を横に振りそれでも俺に近づこうとするセシリア


バシッと強烈な音を立て、セシリアの頬をガリアが叩いた。

手加減はして入るもののそれでも、かなり強めに叩いていた。


その場で泣き喚くセシリア。

それを見ながらガリアが口を開く


「すまん、コー坊!!味方してやりてえんだが俺も家族を養わないといけねぇ。

 ここでお前の味方ができねぇんだ」


ガリアは商人だ、商人は常に世間体を味方にしなくてはならない

それは俺も知っている。

だからこそだろう、自ら気持ちを押し殺し、

あえてそう言ってるのであろう。

仕方ない。俺は消えたほうが良さそうだ。ごめん、セシリア。


となると最後はやはり信頼できるのは家族だけ。

結局前世と同じような結末になるのか。


ガシャンッと音を立て床に散った食器と丹精込めて作ったチーズケーキ。


「あんたなんか生むんじゃなかった!

 なんで私がこんな仕打ち受けなくちゃいけないの

 あんたさえ居なくなれば・・・・そうだ、あんたが居なくなればいいんだ!!!」


包丁を持った母に追いかけられた。

そこで父に助けを求めた。


「コーリィ、君がいなくなればこの状況は改善できるんじゃないのかい?」


結局は母と同じだった。


・・・・


今までの努力は何?


・・・


友達って何?


・・


信頼関係って何?



家族の絆って何?


-


俺って何?



崩れてく。形なくも築き上げてきたものが全て崩れていく。

耳に聞こえる瓦解の幻聴


「幸せの期限は終了致しました。」


すべての希望は失われた。



コーリィは草原丘で佇んでいる。

風は病むことはなく飄々と野草の束とコーリィの髪を揺らす。

既に3日ここにいる。服は破れ、肌は泥にまみれていた。

しかし、そこから動こうとしない。

瞳に生気はなくただただ時間が過ぎていくのを感じているだけだった。


影ができた。誰かが後ろに立っている。


「おまたせしましたね」


女の声だ。そうか、警戒していたはずだったタブレットの奴か。

男だと思っていたが予想が外れたみたいだ。


「そういや忘れてたわ。煮るなり焼くなりどうとでもしろよ

 俺はもう疲れた、いっそ殺してくれると助かるんだが」


この世界から一刻も早く退場したかった。

彼女は言った。


「それがお望みならそうしてあげる」


・・・


コーリィ・サスウェイ失踪殺害事件


サスウェイ家次男のコーリィ・サスウェイが失踪。

そして10日後に村外れの森の中で

遺体となって発見された。

目撃者は付近を通りがかった冒険者。

遺体の損傷は激しく、原因の追求は現状不可。


失踪当日コーリィ氏は草原丘にいたことが証言により判明。

その時人影は2人あったとのこと。

殺害の可能性があると見て引き続き調査を実施。


また、コーリィ氏は特殊な人物であった為、

村民とのトラブルに巻き込まれた可能性も視野に入れ

引き続き調査を進める。


・・・


6年の歳月が経った。


私ももう16歳になり、都の学校へ通うことになった。


セシリアは寮内で紺色のブレザーとチェックのスカートの制服を

目の前に出し、新しい生活の準備を整えていた。

せめて、最低限の教養は身につけてくるようにと言われ通い始めた学校だ。

多少の不安があるものの、色々なことを学ぶであろう好奇心のほうが優っていた。


そして異性との出会いというのも年頃の女であることから期待はしていた。


昔、私が慕っていた男の子が失踪したとの話を聞いた時がある。

慕っていたと言うことは名前、顔を覚えているはずだが、私は一切の記憶を持ち合わせていない。

父からは、無理に思い出さなくていいと言われている。そこまで重要なことでも無さそうだ。


さて、寮生活と言えど最低限の備品は自ら調達しなければならない。

私は生活必需品を揃えるため、市街へとくりだした。


「すいません、もしもしー」


生活雑貨コーナで物色していると後ろから声をかけられた。

結構軽い感じで声をかけられたのでナンパなのかと思っていた。


「もしかして、セシリア・カーネストさんではないですか?」


名乗らずに私のフルネームを知っているのは知り合い以外ありえない。

振り向くと、淡黄色の髪と垂れ耳、前髪のアシンメトリーが特徴的だった。

私より一回り大きいくらいの身長でまだ童顔が残っている。


「ライル君?」


「正解!」


どうやら私の眼の前に現れたのは昔、そこまでの付き合いはなかったものの

父の手伝いで連れて行かれた村の住人だ。

よく父の店でお菓子を買っていたのを見た覚えがある。

ライル・ガンゴルド。


「いやぁ~、もしやと思って声かけてよかった!」


「お久しぶりですね。確か解紋後、徴兵されてぱったりでしたね」


「そうだねー、慌ただしいかったよ。僕は気軽に旅をしたかっただけなのにね。」


「確かもう兵役の期限も切れているのでは?」


「そうそう、ようやく開放されたーとおもいきや、他の連中が残らざる得ない状況で

 僕一人抜けるのも何なんで結局居座ることになったんだよ」


「そうなんですか、もしかして学校に?」


「そうそう、マミルが通うらしくてその護衛にコンちゃんと一緒に抜擢されてね。」


マミル・コフィガー。唯一だった回復紋章の2番目の授かり手。厳重視されてもおかしくはない。


「おい、ライル」


乱暴にライルを呼んだ人物がいた。


「あっ、キタキタ!コンちゃん、コンちゃん!!運命の再会だよ!」


ライルを追ってきた人物はコンフィル・ヴィルヘルト

見上げるほどの細身の高身長になっていた。

青色の髪型は昔と変わらずすぐに解った。人混みの中でもよく目立つ。


「何が運命の再会だ、今日お前のその言葉は4度目だ・・・ん?」


コンフィルは私に気がつくと一瞬眉をあげた


「あぁ、これはカーネスト嬢、お久しぶりですね」


「セシリアで良いですよ。コンフィルさん」


「そうですか、ではセシリア、お元気そうで何よりです」


「えぇ、そちらも元気そうでなによりです」


セシリアはっふと気になったことを口に出す。


「お二人がいるということはマミルさんもご一緒にいらっしゃっているのですか?」


コンフィルが頭を掻きながら


「その通りなのですが、お恥ずかしながら一瞬目を離した隙にはぐれてしまって」


「マミちゃん隠れるのは上手なんだよねー」


迷子のヒーラー様ってやつですか。


「まぁ、そういうわけで彼女の捜索をしている訳です」


護衛も大変なんだなと他人事のように

セシリアは考えただけだった。


「まぁ、ここらには居ないようですし、他をあたってみます」


「えぇ、ではまた」


「またねー」


コンフィルとライルは足速に去って行ってしまった。


確かに何度か顔を合わせてはいたものの

あの3人とはそこまで仲が良かったというわけではない。

あくまで知人以上友達未満といった所だ。


ようやく自分の買い物ができるとおもい。

生活用品の物色を再開した。


・・・


黄昏時、夕映えの空が辺りを淡いオレンジ色と濃い黒の二色に染め、

都の大通りを賑わすかのようだ。


私は買い物袋を両手に持ち、寮への帰路へとついていた。

必要以上に買いすぎて、多少よろけながらも

慎重に一歩一歩前に進んでいた。


ふと目に入ったのは、きらめく金色の髪、雪のような真っ白くきめ細かい肌。

それに女の私が見ても羨ましいと思うスタイル。

たとえ華やかな服を着ていなかろうとすれ違う男の目線を引いた

あんな女性になってみたいと思ってしまう、しかし連れは油ギッシュな肌にべたついた黒い髪、

無精髭をたくわえ、醜く太った生理的に受け付けない男だ。


なんというミスマッチ


なんで彼女はこんな醜い男と一緒にいるのだろうかと考えてしまう。

たぶん、すれ違う人たちも同じようなことを考えているのかもしれない。

もしかしたら絡まれるかもしれない。


「おい、ちょっとあんた」


ほらきた。


「先に言わせて頂きます。私は自ら意思でこの方と行動を共にしております。

 では、ご用件をどうぞ」


聴きやすく耳にスッと入ってくる声が聞こえた。

あの女性が絡んできた人物へ向けての放った言葉だ。


声をかけた人物は自らが言いたい事を先に言われ、

たじろいだが、アレヤコレヤとイチャモンをつけはじめた。

もはやただのチンピラと変わらない。


しかしそのたじろいでいる人物は数時間前に見た覚えがある。


「ライルさん」


「っあ!セシリー!」


いつの間にか私に愛称がついていた。

男の方も私の存在に気づき少し眉をあげた

なんか一瞬、鑑定されたみたいで嫌気が差す。

こっちを見ないでほしい。


「とりあえず、ライルさんが難癖つけて

 2人に絡んでるような場面に遭遇した認識でいいですか?」


「難癖ってなんでさ!ただあまりにもミスマッチで犯罪の芳ばしい香りが

 漂っていたから事情聴取してるんだよ」


っあ、そういえばこの人一応護衛騎士でしたか


「犯罪だなんて、失礼にも程がありますよ」


醜男と一緒にいる女性が口を開く。

よく見たら私と同い年位ではないか?


「いい加減、開放して頂けないでしょうか。

 こちらも急ぐので」


「せめて、こちらの男性との間柄をお答えいただけ無いですか」


「雇い主と飼い主です」


彼女は即答した。


微妙な間が一帯を支配した。

色々と語弊のある言葉だったような気がする。


「彼は失語症ですので話せません。

 私は彼の代わりに言葉を伝える者です」


彼女は同時にその証明書と思わしき書類を差し出した。

ライルはそれを確認し、正式な書類であると認めた。


なるほど、それで雇い主と飼い主ですか。

もっと適切な言葉を選んでほしいな。


流石にそこまで言われたらライルも

引き下がらざる得ない。


「お、お急ぎの所失礼いたしました」


女性は少し不機嫌な表情をし、連れの男性と一緒に

2人は人混みの中に消えていった。


ライルは深いため息をつく


「本部に苦情入ったらまた説教タイムだなぁ」


「まぁ、自業自得ですよね」


私はライルがうなだれている隙を突いて

寮へと歩き出した。



「あらあら、セシリアさんではないですか」


今日はよく知り合いに会う日だ。


目の前には純白の修道服に身を包んだ

銀髪を束ねた女性がいた。

そのとなりにはコンフィル

この状況からの算出される人物像はただひとつ。


「マミル・・・さん?」


「はい、マミルです」


彼女はニッと笑って返答をくれた。


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