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6話 ダイエット大作戦

サスウェイ一家は、元気印がいなくなった

少し静かになった食卓を囲んでいた。

コーリィ自身、元が大人しい人間だっただけに

何か喋ろうとする話題が頭を振り絞っても出てこない

事が多々ある。


コーリィは平然な顔をしながら頭の中では何の話題を

切り出せばよいか必死に考えている最中であった。


そんな中コミットが口を開いた


「コーリィ、最近学校はどうだ?楽しいか? 」


父親の代表的な台詞だ。

どうも世界共通の用語らしい


「うん、歴史の授業も面白いし最近は少し友達も出来たよ」


愛想良く返す、小さい事だが家族円満の

秘訣はこれの繰り返しだ。



母の眼が光る


「そのお友達は女の子?男の子?」


良くわからない質問をする母に

「1人が女の子で、2人は男の子だよ」


「3人もお友達できたの。コーリィは

 すごいわねぇー」


笑顔で褒めてくれた。

その言葉の裏に何か圧力を感じたが

気のせいであることにした。


・・・


「忘れ物はない? 」


「うん、大丈夫」


「そう、じゃぁ、気を付けて行ってらっしゃい。」


「行ってきます。母さん」


そう言ってコーリィは玄関を出た。


いつもある日常に感謝を込めて。


出たら外にはいつもの風景が見えてきた。

と同時に


「コーリィ、おっはよー」


草木が枯れ気温も低くなり、時雨の日が数日と続くこの寒々とした

時期に元気のいい挨拶がサスウェイ家の前に響いた。


「さ・寒いぃぃぃ」


「お前はもう少し忍耐力をつけろよ」


1人の女の子と2人の男の子がコーリィの到着を待ちわびていた。


その中で一番ガタイがよく、身長が高い群青色の短髪の

少年がコーリィに声をかける。


「よぉ、コー。今日はいつもより早く来てやったぜ」


自分の両腕を擦っているコーリィより少し小さな垂れ耳な男の子も

それに合わせ声をかけてくる


「コーちゃん遅いよ!この寒さの中でどれだけ待ったと思っているの?

 もっと僕らのことを考えて行動してよ」


続けて、銀色の髪をした女の子が口を開く


「コーちゃんは朝が弱いよねー。」


そう言いながらコーリィの頭を撫でてくる女の子がいる。


「やはり、朝は苦手だ。」


撫でている手をどけコーリィは答えた。


俺は9歳になった。

5歳の頃、兄が都へ行った

俺はいつも相手をしてくれる人物がいなくなり

家の中にいることが多くなっていた。

これでは前世と全く同じ運命を辿る。

そんな気がしたので

気分転換に村外れの草原丘で本を読んでいた。

するとこの内の3人が声をかけてきたという所から

何らかの縁でここまでの付き合いになった。


群青色のベリーショートスタイルが特徴な

コンフィル・ヴィルヘルト

同い年だが頼れる兄貴柄な奴だ。

獣族なのだが、服を着ていると人族によく間違えられるが

脱ぐとすごい。


いつもは挙動不審を演じているこの

淡黄色の髪と前髪のアシンメトリーが特徴なデキる男

ライル・ガンゴルド。

彼は半獣・半長耳族の血を持っている。


そして、銀色きらめく髪をアップスタイルに整えた少女

マミル・コフィガー

仲良し4人組の紅一点。

男三人をまとめあげる司令塔的な存在だ。


「だよねー、コーリィって寒いの苦手そうだもの」


どうやら朝が弱いコーリィは

恰好の通学ネタになったらしい。

そこから話が弾む。


「沢山塩をとったら早起きできるかもよ」


ライルも散々待たされたストレスを発散するべく

話題の中に入ってくる。


「それは危ない考え方だな、参考にしないようにするよ」


基本的に人が生活する中で塩は男10g未満女8g未満が理想とされていることを

忘れてはならない。

美味いものを長く間食べ続けたいなら守るべきルールなのだ。

例えて言うなら自動車で言う制限速度というものだ。

唯一違うのは今すぐくるか後から来るかの違いだけだ。


「コー、お前はもう少し運動をするべきだな。寝起きがとても良くなる。

 体つきも良くなるぞ。その中肉中背だとカーネスト嬢にいつか愛想を尽かされるぞ。」


全く別の方向から攻めてきたコンフィル

カーネスト嬢とはセシリアのことである。

やはり憶測通り、美人に育ってきてはいるが、

一癖二癖と本性を現し始めているのが実情である。


「たまに運動はしているさ。最近だって腕立て伏せ5回を2セットできるようになったんだ」


自慢げに答えてやった。

するとみんな驚いた顔をしていた。

それはそうだ、ここまで来るのにどれだけ努力を……


「少なっ!なにしてやったりの顔をしてるのこーちゃん!! 」


「え? 」


一瞬心が抜けた顔をした。


「コー、それは運動したに入らん。」


即座にコンフィルからの追撃が襲ってきた。

それに便乗してライルがとどめを刺す。


「こりゃー将来のコーちゃんはブーになっちゃうねぇ」


ライルはそう言いながらコーリィの脇腹を摘んだ。


「あっ」


ライルはすぐ脇腹から手を離し、すごい気まずそうに


「ごっ、ごめん、ここまで摘めるなんて思ってもなかったから……」


その気まずさが伝染し、みんなが何か申し訳なさそうにコーリィを見ていた。


「そういえば最初にあった頃から考えれば出っ張ってきたなその腹」


「うん、顔もそんなほっこりじゃなくてもっとシャープなキリッとした感じだったんだけど」


コーリィは自分の頭に血が上るのを感じた。

先程までの寝起きの倦怠感が消えていった。


「お、お前ら、お前らあああぁぁぁぁ!! 」


キャッキャと4人が散る。

こうして今日の通学路も楽しくワイワイと過ごせたのであった。


・・・


人通りが多くなった時刻の広場で荷馬車から

道具を取り出している人物が見えた。


「ガリアさん」


「ん?おぅコー坊じゃねぇか」


「えぇ、少しご相談がございまして」


ガリアがッハっとした顔をした、

すぐさま、眼光が鋭く光った。


「コー坊、確かにおめぇとセシリアは3歳の頃からの付き合いだ

 しかしだっ!!まだ早い、俺は認めんぞぉぉ!」


「なんの話ですか」


唖然としたガリア


「何って、おめぇの相談事はセシリアとの婚約っつーことじゃないのか?」


「9歳児になんてこと考えているんですか!」


この人と会話すると必ずセシリアの話が絡んでくるから

非常にやりづらい気を取り直して話を再開させる


「いえ、実は体型の事で悩んでいまして」


コーリィは今も昔も言われたことは根に持つタイプなのだ。

事情をガリアに説明する。


すると、ガリアは大声で笑っていた。


「なるほど!鍛えるってことで俺に相談するってのはコー坊も

 なかなかの目利きだな。」


なぜか上着を脱ぎ上半身ハダカで上腕二頭筋を強調したポージングをしながら答えていた。

そこからヘソ手前で手を組み片足を少し曲げた形のポーズに変えながら


「まぁ、男だったらそれなりの筋肉を持ってないとなぁ!俺も自慢するほどじゃあねぇけどよ」


笑顔で歯が光っていた。


「それじゃぁ、僕に鍛え方を教えて・・・」


くださいと言い切る前にガリアの言葉が遮った。


「駄目だ」


「っえ」


これは行けるのではと思った矢先の

拒絶に戸惑いを隠せない。


その表情にガリアは先ほどの言葉に

不足を感じたらしく少し付け加えた。


「駄目だっていうのはそもそも教える必要がないってことだ」


「な・なぜ」


「おめぇみてぇな歳だったら適当にそこら辺走っていたら

 いくらでも消化できんだよ。ったくほら」


ガリアは木箱を幾つか重ねコーリィに渡した。


渡されたコーリィは両腕が大きく震えながら

少し強めに地面へ木箱をおいた。

少し持っただけなのに呼吸が荒くなった。


「おいおい、中の商品壊れたらどうすんだよ」


ガリアは呆れ顔でそういった。


「いきなりあんな重いものを渡さないでくださいよ、軽く持ち上げるから

 何も入っていないものと思ったじゃないですか。」


間髪入れず返答が帰ってきた。


「おめぇがひ弱なだけだ、こんなの石ころよか軽いわ」


「ぐぬぬ……」


「せっかくだ。商売手伝え、そうすりゃ少しは運動になる」


言われるがままに先ほどよりは軽い道具をいくつか渡された。

この品出しが結構な重労働だ。


全ての品を出し終えている頃には汗だくになっていた。

その場に座り込み、汗が引くのを待つことにした。


ガリアは木製のカップに水を入れやってきた。


「おつかれ、ほら」


コーリィは差し出された木製カップを受け取り中身を一気に飲み干した。


「ほんっと疲れましたよ。」


「それなりに運動できただろう?」


「それはそうですけど」


「なら俺も助けられ、お前も鍛えられWinWinじゃないのか」


確かにその通りだ。

しかしそれを認めるには何かと納得がいかないが反論はできないし

黙っているしかできなかった。


「っま、今回はありがとな。次も頼むぜ」


「っえ」


「何いってんだよ、手伝えば運動できる俺も楽ができる何ら問題ないだろ

 そもそも1人でできるならそこらじゅう走ればいいが、そんな根性と忍耐が

 お前にあるのか?」


痛いところをついてくる

しかしこのつねればつねった分の脂肪がつかめるこの腹をどうにかしなければ・・・

決意は決まった。


「わ、わかった。手伝うよ」


そう答えるとガリアは笑ってコーリィの頭を撫でた。


「ほっほーぅ」


後ろから聞こえてきた声に反応したコーリィはその声に聞き覚えがあった。


「アキメ姉さん」


アキメは昔から変わらない赤毛のポニーテールを揺らしコーリィに近づいてきた。

アキメはジェスチャーで挨拶しは話を切り出した。


「コーリィ、ホーリィさんから聞いたよ。君の食欲が良すぎて材料が良くなくなるって。

 ってことはだよ、さっきの話を勝手に聞かせてもらったけど10日に3回の手伝いだけで

 君のその立派なお腹を克服するなんて出来っこないよ」


嫌な予感がした


「っと言うわけで10日のうち5日はうちの手伝いってことでどうだい?

 もちろん、それなりのお礼は出すよ。」


「流石に5回はきついなぁ」


「まぁ、無理矢理には誘えないけどさ、それでも私は君を買っているんだぞ

 君は理解が早い。いい商人になると思うよ。

 その勉強も踏まえてって事でどうかな。」


アキメはどうやら俺を商人にしたいらしい。

しかし、仕事一つしたことがない俺がそんな事できるわけがない。


…まてよ、何もしたことがない今の子供の状態だからこそ何かを

学んでおくべきなのでは無いのだろうか。今まで生きていた記憶が邪魔をして

そういう思考に陥り易かったみたいだ。

最終的に商人にならずともその知識はどこかで役に立つだろう。

覚えておいて損はない。


「わかった、やるよ。その代わり色々と教えてよ、学校で教えてくれないこと」


学校っていってもこの国の歴史と四則演算と読み書きだけだ。

しかもたった2限で終わるのだ。後は遊んでこーいとほっぽり出される。


もっと色々と学べる事があると考え、今まで家に帰っては

2階の書庫に引きこもり歴史書や図鑑などを読んで少しでも知識をつけていた。

が、そろそろ経験も必要なのだろう


っとあれ?


「アキメ姉さん。そんな悩むことですか」


その言葉のあともう少し悩んだあとにアキメは口を開いた。


「コーリィ、私も知らないことは沢山ある。分からないことを教えることはできない

 しかしだ、共に協力し合い学んでいこうじゃないか」


なるほど、たしかにその通りだ。アキメ姉さんもまだ15に差し掛かる前の

女の子だから知らないことは沢山あって当然だ。

だからこそ共に切磋琢磨していこうということか。


これからもっと成長しようとする意識は前世の記憶を持つ俺よりも立派なじゃないか。

アキメ姉さんの人柄を推測するに今のところ商に関する事で競争できる相手を

探していたのだろう。

そう考えると3歳時に金種を理解した俺を競争相手として申し分ないと考えての行動と

捉えても筋が通る。さすが姉さん、なかなかの目利き。

そんな姉さんに選ばれたんだ。その期待に答えるように努力しよう。


「はい、それでも構いません」


コーリィが返事を返すとアキメはさっそうと商店へ帰っていった。


「さて、これから忙しくなりそうだな」


とコーリィが小さくつぶやいたのを返すかのように丸太のように太い腕がコーリィの肩の上に乗った。

見上げると微笑するガリアの姿があった。


「コー坊、おめぇは才能があるな」


前世の知識が引き継がれた状態で商才があると言われても困る。

実戦経験のない知識のみの頭でっかちが今現状なのだ。

これから経験を積み、この世界の社会を知ろう。

今第一歩は踏み出したんだ。


「そうでもないよ、今は知識だけの頭でっかちなんだ。

 これから経験を重ねていくことにするさ」


「確かに男は経験を積まないとイザという時、何一つ満足させられねぇ。

 しかしだ、その努力を隠す努力もしろよ、誰もそんなのを見たくはねぇ

 俺もだ」


なるほど、過程を見せての頑張りましたねは評価の質を傾けてしまう恐れがある。

だからこそそこは隠し、平等な評価を求めるように努力するというのもひとつの努力だな。


「頑張ってみる。今はまだ未熟だけどさ、きっと満足させられる人間になってみせる」


「そんときゃ喜んでセシリアくれてやる」


2人の談笑が広場を響いた。


違った意味が通った言葉を使いすぎた故、勘違いが起こっていることは

この時点で誰も気づくことはなかった。


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